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職業相談所 2


「はじめに、ここは相談所ですので、必ず正解が導き出されるとは限らないことを伝えておきますね」


「はい」


「ある程度の統計から、これなのではないかという候補を上げることしか出来ません。もしかしたら、こちらが把握していない職業の可能性もありますので、その点はご了承ください」


「わかりました」


可能性でも手がかりが掴めるかもしれないのはありがたい。


「では、まず何がしてみたいか聞かせください。どんな些細なことでもいいですよ」


してみたいこと、と、いうと1つしか浮かばない。


「物を作りたいです。それが何かは分からないですが」


彼女はメモを取りながら、


「そうなのですね。そちらの職業へ絞っていきましょう」


職業チャートのような物を机に広げる。

チラッと見ただけで、かなりの職種、職業が書かれていた。


「かなりあるんですね」


「ええ。例えば、鍛冶ひとつとっても、武器が得意な人、武器の中でも剣が得意な人、斧が得意な人、鈍器が得意な人など別れていくんです。なるべく細分化して書かれているのでより多く見えるのだと思います」


「なるほど。得意分野で名称が変わるのか」


「今までの経験を聞かせてください。気づいた事など何でも結構です」


昔を思い出しながら、言葉を選ぶ。


「初めて見習いになったのは鍛冶工房でした」


彼女はメモをサラサラと取りながら、こちらを見て話を聞いている。


「一通りのことを学びましたが、これじゃないな、と次第に感じるようになりました。物を作るということに関してはどこかしっくりきている気はするんですが。親方に言われました。器用だから、まるでスキルを持っているように錯覚する、と」


「器用。後は直感も鋭そうですね」


「・・・そうですね。言われてみれば」


直感か。言われたことはないが、叩くタイミングや場所、いい物を見つけるのが多いのも直感によるものなのか?

分かりづらいなぁ。運がいいのかと思ってたぞ。


「次は、薬師に弟子入りしました。一通りのことをここでも学びましたが、鍛冶工房と同じでした。作ることは楽しいですが、これじゃないなと。師匠にも、親方と同じようなことを言われました。あぁ、何故か毒薬の方が得意なことには疑問を持たれてました。私に理由はわかりませんが。毒薬だと、アイディアがそこそこ浮かぶのですが、良薬だと全く浮かばなくて」


「毒薬に適正あり」


彼女は、表情も変えずにサラサラとメモを取り続けている。

メモが追いつくのを待ってから、続ける。


「今は料理屋にいるけど、やっぱり同じ感覚がしてます。ここでは、休日にフィールドワークもしました。視力がよかったみたいで、山菜や薬草もよく見つけられました。初めて弓を使ってみましたが、得意だったようでそれなりの腕前まで上がりました。あとは、山歩きもそれなりに出来ましたね。思ったよりも体が動きました」


「やはり、直感が高いようですね。視力がいい。身体能力もそれなりにいい。弓が得意。短刀も得意ですか?それとも徒手空拳?」


「ナイフは、下ごしらえに使いましたがしっくりきている気はします。でも、それで戦ったことは無いです。徒手空拳、というと殴る蹴るですよね?したことないのでわからないです」


「そうですか」


軽く頷きながらメモを埋めていく。


「罠を作ってみたことはありますか?」


「罠、ですか?生け捕りにする為に何度か作って使いましたが」


「どうでしたか?」


「うーん。作ることは楽しいけれど、罠だからと何かを感じたことは無いです」


「どんな罠を作ったのですか?」


「主に落とし穴ですね。大型獣用に」


「なるほど」


罠は、あまり作ったことなかったなぁ。鍛冶工房で持ち込まれたものは何度か見たことあるけど。バラしたことはあっても、組み立てたことも作ったこともない。


「どうも、職業的には狩人方面のようです」


やっぱり、とも思うが落胆が隠せない。


「器用で直感に優れ、弓やナイフが得意。恐らく、体術もそれなりに出来ると思います。そして、毒が得意。これだけだと弓術師や暗殺師のように思えますが、物を作りたいとのことなので戦闘系の職業ではないでしょう。となると、狩人系の罠師、トラップマスターではないかと推測します」


「トラップマスター。初めて聞きました」


「えぇ、罠師自体あまりいらっしゃいませんので。貴方の場合は、罠を作る方に特化しているのではないでしょうか。無効化する方が得意な方の方が圧倒的に数が多いです。なので、トレジャーハンターになって斥候をつとめられる方が多いですね」


「トレジャーハンターですか」


思い描いていた未来図にはなかったなぁ。

トレジャーハンターか。

ダンジョンにいる自分を想像してみる。

・・・ないな。すぐ死にそう。


「他だと、該当しそうなのが薬師系統の毒薬特化、暗殺師系統の毒物生成、爆発物」


「いえ、もういいです!きっと罠師ですよ、そうに違いない!」


慌てて遮る。

絶対そんな方面じゃない!

俺の直感がそう言っている。

今まで直感がなんか言ってきたことなんてないけど!

何故そんな物騒な方へ嬉嬉としてシフトしていくんだ!


「そうですか?」


お願いだから残念そうにしないで!

小首傾げても可愛くないからね!


「何か?」


「いえ、なにも」


速攻で否定しておく。


「そうですか。罠師の方への紹介状は必要ですか?」


「私と同じ、罠を作る方が得意な方へですか?」


「いえ、無効化する方が得意な方ですね」


実地でしか学べないこともある、か?

でも、鍛冶工房でもバラしはしてたし機構が分かるものも多い。

トレジャーハンターの集会所へ行けば、罠の情報も書物としてあるかもしれない。

いや、やってきた人の話は為になるはずだ。


「一応、いただいてもいいですか?」


「わかりました」


紹介状を受け取り、懐へ入れる。


「これがあなたの職業であることを祈っています」


「ありがとうございました」


こうして、俺の職業は暫定罠師になった。



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