職業相談所 1
朝というには少し遅いが昼には程遠い時間。
俺は街を歩いていた。
普段なら、今は仕込みをしている時間である為少し落ち着かない。
今日は、オヤジから外出許可をもらって職業相談所へ向かっている。
俺みたいに迷う人がいるので、それなりに需要のある施設だ。
昼飯時には帰れるといいんだが、空いてるかな。
キョロキョロと辺りを見ながら進んでいく。
行政施設がそれなりに固まった地域であるようで、どことなく落ち着いた色合いに角張った建物が多く並んでいるようだ。
この辺りに来るのは初めてだ。行政区画なんて用事がないしなぁ。
っと。
職業相談所の看板が掲げられている建物を見つけた。
「ここだな、職業相談所」
小さく声に出して、看板を読み上げ確認する。
扉を開けると、カランと爽やかな鈴の音が鳴り、来客を知らせた。
中に入ると、すぐ正面にカウンターがあり、女性が1人座っていた。
左右にはそれぞれ廊下があり、いくつも部屋が設けられているようで扉が何枚も見える。
どうやら、相談は個室で行われるらしい。
とりあえず、正面の受付だよな?に話を聞きに行く。
「おはようございます。本日は如何されましたか?」
「職業相談を受けたいのですが。今から受けられますか?」
「確認しますので、少々お待ちくださいね」
女性はにこりと笑って、手元にある書類を見始めた。
笑顔の可愛い人だなぁとぼんやり眺める。少し見すぎかも。視線を彼女の手元に落とす。
どうやら、職員と部屋の空きを調べているようだ。
「大丈夫なようです。9番のお部屋へどうぞ。こちらの廊下を真っ直ぐ行っていただいて、9の番号のかかっている部屋です」
わかりやすくてありがたい。
「ありがとうございます」
早速向かってみる。
廊下を進んでいくと、扉の正面にでかでかと1と数字が掲げられていた。
これは間違いようがないな。
誰かクレームいれてこんな形になったのかな。なんか気になる。
でかでかと9と掲げられた扉の前まで来た。
いよいよ、俺の職業がはっきりするのか?
期待を胸に扉をノックすると、どうぞと女性の声がした。
扉を開けると、眼鏡をかけた妙齢の女性がいらっしゃった。
「どうぞおかけください」
「あ、はい。今日はお願いします」
そうして相談は開始された。