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Flag29:帆船を調べてみましょう

第二章開始になります。


 ローレライへの襲撃事件が起こってから1ヶ月ほど経ちました。その間に私が何をやっていたかと言うと主に座礁した4隻の船の捜索とローレライの方々への料理教室になります。


 まず4隻の船についてですが、帆船のしかも木造船に乗るなんていう機会は今までほとんどありませんでしたので非常に楽しむことができました。

 基本的な船の作りはこの世界でも変わらないようで、キール(竜骨)に肋骨などの船の骨格を組みプランクと呼ばれる横板を貼り付け船底の曲面を出しています。重要部品である竜骨や航海中に舵を取るために異常な力のかかる最後尾のスターンポストなどに最も良い木材が使われていることも同じです。全く違う世界であるはずなのにこういった共通点が見つかるのは面白いですね。


 やはり商船であるためか大砲については後方側面に1門ずつあるだけでした。少々武装が弱いのではないかと思ったのですが、よく考えてみればこの世界には魔法なんていうとんでもない攻撃方法があるのです。火薬を使い、しかも撃った玉が戻ってくることのない大砲を使う機会など早々ないのでしょう。ローレライの方は撃たれたそうなので確証はないのですけれどね。


 船の最後尾にある唯一光の入る船長室や下甲板にある士官室や食堂、そして雑魚寝部屋の様相を呈している一般の船員の部屋などを見ながらその生活に思いを馳せ、しかしもう使う人などいないため残っていた物品に関してはありがたく頂戴していきます。私は使いませんがローレライの方々が陸上で過ごすために便利ですからね。まあほとんどの家具がロープで船体に繋がれているのでいちいち切らなければいけないのが少し大変でしたが。


 最下部の船倉には大量の水樽や食料が入った樽、そして船の補修用の品やロープなどさまざまな物が入っていました。中には酒の入ったものまでありましたね。有用ですので全て持ち出したいところでしたが流石に私一人で運ぶのは無理がありますので食料などの期限があるものを優先的に運び、その他は必要になったら持ち出すことにしました。一応リスト化はしておきましたがあまり使うことはないでしょう。

 船倉といえばバークの船倉の一室で一人だけ死んでいらっしゃる方がいました。おそらく船が座礁した衝撃で扉がつっかえてしまい内側から開かなくなった結果ローレライの歌でも海へ飛び込むことが出来なかったんでしょうが、彼を見たときには流石に心が痛みました。ローレライを襲いに来た一味だとはわかっているのですがね。しかし彼を死なせた責任は私にあります。私自身がそう選択したのですから後悔も逃げもしません。そう思っていてもやはり人死を見るのは辛いものです。彼の遺体は布でくるんでガイストさんに頼み、遠くの海へと沈めてもらいました。海に抱かれて安らかに眠っていただけると良いのですがね。


 火薬や大砲の弾なども箱に入れられて保存されていましたが、そんなものをフォーレッドオーシャン号に持ち込むなんて危険を犯すつもりはありませんので放置です。一応剣や弓などの戦闘に使えそうな物は良さそうな物を見繕ってある程度は確保させてもらいました。私が使っても怪我をする未来しか想像できないのですが将来的にこの船に乗る人員にとっては必要かもしれませんしね。その武器の中に拳銃の姿がみえなかったことに多少安心感は覚えましたが火薬と大砲が既にあるのです。どこかで開発されていたとしても不思議ではありませんから注意は必要でしょう。


 4隻の船で探索して発見したもののうち重要だったものとしては魔法を防ぐ魔道具と音を消す魔道具、そして各船にあった航海日誌になります。

 2つの魔道具についてはすぐに見つかりました。操舵輪の隣に通常の航海に使うとは思えない文様の刻まれた球体があり、それが4隻ともについていた段階で魔法や音を防ぐ魔道具なのだろうとわかりました。

 一応実験を行い、音を防ぐ魔道具についてはその範囲内が全て音が聞こえなくなると言うわけではなく音の通らない見えない壁を作るといえばわかりやすいでしょうか。だからこの魔道具を使っている最中でも甲板上では会話は可能だったはずです。声が聞こえなくては操船もままなりませんから当たり前なのかもしれませんがね。

 魔法を防ぐ魔道具についても同様です。魔法を通さない壁を作るようですね。しかしこの魔道具は外側と内側の区別なく魔法を防いでしまうので、この魔道具を使用している間は魔法の攻撃を防いでくれますが、こちらも魔法での攻撃が出来なくなってしまいます。なかなかうまくいかないものです。また魔法を通さない壁にも限度があるようでローレライの方々に集中的に攻撃してもらったら普通に魔法攻撃が通ってしまいました。気休め程度に思っておいたほうが良いかもしれません。

 とは言え現在の何も防御機構のないフォーレッドオーシャン号にはとてつもなく頼もしい魔道具ですので4つとも回収し、そのうち1つずつを操舵室に設置しておきました。少しインテリアのようにも見えますので違和感はあまりありません。これを使う機会がなければ良いのですがね。


 航海日誌を読んでみてわかったのは予想通り4隻が寄せ集めだったということ。そしてランドル皇国という国にあるウェストス海運商会という大規模な商会に属している商船だということでした。

 目的はやはりアル君が言ったとおりローレライの子供をさらう事だったようです。本当に貴重なもののようで、航海日誌に利益の計算までしている船長がいたことに思わず苦笑してしまいました。

 しかし大規模な商会が相手だとすると今回だけで終わりではないかもしれないというのが不安ですね。少なくとも4隻の船をすぐに集められる規模ですし、航海日誌の中にも同じ商会の船と港で会ったという記載もありますのでどう少なく見積もっても数十、下手をすれば数百の船を持った大商会の可能性さえあります。これはまたルムッテロへと行きウェストス海運商会について調べる必要がありそうです。


「ふぅ」


 読んでいた航海日誌をパタリと閉じます。決して上質とは言い難い植物紙で綴られた冊子ですが、なんと言えばいいか一冊一冊に味があります。私が書いている航海日誌は既に定形の様式があり、記載の方法なども決まっているため個性を出すとしたら一言メモ的な所感欄しかないのですが、4隻の船から持ってきた航海日誌にはその船長の人となりが現れているのです。

 天候や波の状態について事細かに書いてあるもの、大雑把に船の位置などだけが書かれ特になしの文字が続くもの、船の状態よりも日記のように自分の考えや愚痴を書いているもの、食事について延々と書いてあるものと個性が際立っています。こんな出会いでなければ一度酒でも飲みながら話してみたかったですね。まあ実際にはどんな人かわかりませんし既にこの世にはいらっしゃいませんから想像の上の話ですが。


「さて、そろそろ行きましょうかね」


 航海日誌を持ちソファーから立ち上がります。


 今回の事件が起こり私自身色々と考えました。ローレライの方々のことについてもそうですが、今後私がこの世界でこのフォーレッドオーシャン号と海を旅するためにはどうするべきかということについても。

 4隻の船は迷うことなくこの船を追ってきました。それも仲間割れをするほど一目散に。ガイストさんの言っていたことが図らずも証明されてしまったのです。聞いてはいたのですが実際に目の当たりにしたその光景は私の考えを根底から覆すほどの衝撃がありました。

 という訳でしばらくはキオック海で厄介になることにしました。ここならばローレライの方々がいますから早々に危険な目に遭うこともないでしょうしね。ガイストさんにもその旨を伝えましたが、逆にいつまでもここにいてくれて構わないとまで言われてしまいました。

 借りを返したつもりでしたがまた借りが出来てしまいますね。何かしらローレライの方々の為に出来ることがあれば良いのですがね。

第二章開始になりますが、元々構想になかったものですので更新頻度が下がる可能性があります。その時にはまたお知らせさせていただきます。

なるべく頑張ろうとは思いますが。


それではよろしくお付き合いお願いします。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
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少しでも気になった方は読んでみてください。

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