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Flag17:商人ギルドに登録をしましょう

 商人ギルドに入ってすぐのスペースは大きなホールになっており、正面にはしきりに区切られたカウンターが並んでおり、それぞれの場所に受付のお嬢さん方が並んで座っています。そこでは数人の商人と思われる男性が話していますが商売の話をしているのか歓談しているのか漏れ聞こえてきた内容からは判断に迷いますね。

 そのカウンターの両脇には奥へと続く廊下があり、いくつかの部屋があることがわかります。個別の商談スペースなどでしょうか?職員に連れられて男性が部屋へと入っていくのが見えます。

 入り口付近の日当たりの良いスペースには机と椅子が設置されており、2人の男性が軽い商談をしているようです。笑顔で話しているように見えて、火花が飛んでいますからね。まあこの程度の応酬なら挨拶のようなものですか。

 全体的に言えば木造の落ち着いた雰囲気の空間ですね。天井も高く明るいので採光も考えられているのでしょう。商談する上で環境と言うのは非常に大事ですからさすが商人のギルドと言ったところでしょうか。


 きょろきょろと物珍し気にギルド内を見ている私の様子に1人の受付のお嬢さんが立ち上がりました。少し様子見しすぎましたか。

 手間をかけさせるのも申し訳ないのでそのお嬢さんの窓口へと向かいます。

 細いネクタイを締め、商人ギルドの制服をきっかりと着こなしたウサギ耳をしたお嬢さんが私に向かって微笑みます。たれ目が特徴的なかわいらしい方ですね。


「商人ギルドへようこそ。依頼でしょうか、商談でしょうか?」

「ギルドへの登録をお願いしたいのですがこちらの窓口でよろしいですか?」

「登録ですね。こちらで大丈夫ですよ。少々お待ちください」


 一瞬、おやっと言う顔をされましたがすぐに気を取り直したらしく登録のための用紙が机の上に置かれました。ざっと目を通してみると書く項目は入港審査で仮身分証を発行してもらった時の項目とほぼ変わりません。仮身分証を取り出し、参考にしながら各項目へと記入をしていきます。項目を書き終え、用紙と共に仮身分証を手渡します。


「これでよろしいですか?」

「はい、確認いたします。……大丈夫ですね。ワタル様ですね。初回登録料として100スオン、年会費として100スオン。合計200スオンいただきますがよろしいですか?」

「はい、問題ありません」


 財布から銀貨を2枚取り出しカウンターへと置きます。ウサギ耳のお嬢さん、胸のネームプレートからするとミミさんですか、の視線が銀貨ではなくそれを取り出した財布へと注がれているのを感じますが気づかないふりをしてしまってしまいます。

 私の財布は5年ほど前から使用している鮫皮のものです。丈夫で水に強いですし、使い込んでいくごとに独特のツヤが出てくるので愛用しているのですが、さすが商人ギルドと言うべきでしょうか。ここではあまりうかつなことはしない方が良さそうです。


「それではギルドカードを作成させていただきます。その間に商人ギルドについての説明をさせていただいてよろしいですか?」

「もちろんです。お願いいたします」


 ミミさんが奥に座っていた職員に私の記入した用紙と仮身分証を渡して戻ってきました。彼女の提案を断る理由もありませんのでありがたく聞きます。

 内容としては商人ギルドの基礎知識と言ったところですね。

 商人ギルドは、商人が不当に扱われることが無いようにするために設立された組織であり、それぞれの国で同じような組織があったのを合併し今の商人ギルドになったそうです。


 商人として生計を立てようとする者は加入することが推奨されており、まあこの辺りは言葉を濁していましたが、加入していない者にはそれなりの対応がされるとのこと。

 私に関連しそうな加入する特典としては、商人ギルドのギルドカードを持つ者は国家間の移動に関して比較的自由にすることが出来る、ギルドに銀行のようにお金を預ければ、一定の制限はあるものの別の場所のギルドで引き出すことも可能、商品を売る場合はギルドを通して適切な商会を勧めてくれるなどでしょうか。

 この商人ギルドでの買取などはあまり行っていないらしくあくまで商人を仲介するのが主となっているようです。


 聞いた情報を落とし込むために頭の中で整理を行います。普通に利用する分には問題は無いでしょう。

 説明としてはひと段落したのか、ミミさんの言葉が止まったのを機にこちらから質問をしてみることにしてみました。


「私は船で交易する予定なのですが、販売に注意するべき物品、事項などはありますか?」

「一番注意していただきたいのは塩ですね。この国では塩は国の専売になっていますので、勝手に売れば罪になります。売るならば商人ギルドへお願いいたします。ただこれもこのノルディ王国の場合ですので詳しくは各国の商人ギルドで確認することをお勧めします。後、これは各国ほぼ共通していますが武器や防具などは指定の買取店でしか出来ません。それ以外で販売した場合は罪になりますのでご注意ください」

「わかりました」


 ふむ、この国はノルディ王国と言うのですね。それならば塩の専売と言うのは納得です。必需品の塩を押さえて統治するというのははるか昔からある方法ですからね。

 塩も売る候補として船に積んできたのですが今回は外した方が良さそうです。下手に目をつけられてもまずいですし、すぐにお金が必要と言う訳でもありませんしね。

 武器などを販売する予定は今のところありませんのでいくつか気になる点はありますが保留で良いでしょう。もしそんなときが来たらまた聞いてみましょう。

 その他にもいくつかの注意を受けましたが禁止薬物に関するものなど当たり前と言えるような内容でした。この分でしたら新しい町に着いたときに注意事項を聞いておけばそうそうトラブルになるようなことはなさそうです。


 しばらくして出来てきたギルドカードをミミさんから受け取ります。クレジットカードほどの大きさの金属製のカードで、表面には商人ギルドの会員であること、名前や生年月日の記載があり、一番下にあるランクの項目には「E」と書かれていました。

 裏面を見ると私の外見の特徴である、黒目、黒髪、身長175センチ、中肉中背などの情報が書き込まれています。本人以外の使用を防止するためでしょう。

 それにしてもランクですか。カードを表面へと再びひっくり返し、顔を上げればミミさんが訳知り顔でうなずいていました。


「カードを見ていただいてわかる通り、商人ギルドにはランク制度があります。登録時にはみなさんEランクですが売買の実績を重ね、信頼を得ることでランクが上がる仕組みです」

「ふむ、どうやってそれは判断されるのですか? 町の商人であれば評判は聞こえてくるかもしれませんが、私のような外から町へとやってくる商人であれば判断のしようがないのでは?」

「そうですね。ワタル様のような行商人の方の場合はギルドを通して取引相手を見つけていただければその相手の方からの評価がギルドへと知らされますのでそれで判断させていただいております」

「なるほど」

「ランクが高いほど相手からも信用されますので大きな取引をしようとするならば有利ですね。ギルドとしてもランクの高い方のみに紹介するお客様などもいらっしゃいますし」


 つまりギルドを通して取引をしないとランクは上がりませんよというわけですね。

 商売をするうえで信頼と言うのは何物に代えがたい価値あるものです。商人になろうとする者ならばそのことがわからない人などいないでしょう。

 つまり何もしなくても私のような行商人はランクを上げるためにギルドを利用し、ギルドは町の商店を紹介し、紹介された商店は宣伝する必要もなく取引相手がやってくる。その代わりに紹介手数料をギルドへと払うという図式が成り立っているということでしょう。おそらくその分だけ私の売買価格が低くなるのでしょうがこれはある程度は許容するしかなさそうですね。まずは信頼を勝ち取ることが優先です。

 年会費に関してはまあ気にする必要は無いでしょう。ランクが上がるには信頼だけではなく当然実績も必要になってくるでしょうからランクが上がる頃には払える金額になっているはずです。


「説明ありがとうございました。また来ます」

「あれっ、取引される商店のご紹介などはよろしいのですか?」

「今日は登録だけのつもりでしたので。それでは失礼いたします」


 不思議そうな顔をするミミさんに会釈を返し商人ギルドをあとにします。まあ今日は商品を持ってきていないというのは本当ですしね。もちろん理由はそれだけではありませんが。

 さあ、正式な身分証が手に入ったので、町でも見て回りましょうか。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【なぜ船は巨大化出来るのか?】


巨大な船はありますが巨大な車や巨大な飛行機には限度があります。これは二乗三乗の法則が関係しています。簡単に言うと重さの増加に地面や揚力が支えきれなくなるのです。

船の場合、水面下の体積が浮力に比例するため浮力も重量と同じ三乗で増加するので支えられるわけです。もちろんこれは理論上の話で実際には違いますがね。


***


ブクマありがとうございます。やる気ゲージの回復薬です。

更新頑張っていきます。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
https://ncode.syosetu.com/n0484fi/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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