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退職記念のメガヨットは異世界の海を今日もたゆたう  作者: ジルコ
第五章:新たな出会いと開発と
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Flag143:従業員を選びましょう

 ノシュフォードさんとマリサさんをドワーフ自治国に残しユミリア国のホーミリア、フルー王国のナウドロへと寄ってドワーフ自治国と同様に店舗の出店などの手続きを進めていきます。この2か国については他にも港がありますのでいずれはそちらにも出店したいと考えていますが何事もまずは一歩からですね。


 ギルドで話した感じと町の通りを見た限りでは初期投資を考えても早期に回収は可能でしょう。仕入れ先が仕入れ先ですし。とは言え私からの仕入れだけという状況は後々のことを考えれば健全とは言えませんので事が終わればある程度の利益を確保しつつ独自の営業をしていってもらうつもりです。まあそれがいつになるかはわかりませんが。


 しかしやはり獣人の方々にがちがちに警護されつつ町を歩くと敬遠されてしまいますね。気軽に店に寄ることも出来ませんし。まあ今の自分の立場を考えれば仕方がないことだと理解していますがね。


 そしておおよそ1か月弱で各国を巡り終え、再びキオック海へと戻ってきました。そしてユリウスさんとトッドさんを船へお招きし、獣人の方々の状況について確認します。


「希望者については既にリストアップが終わっています。店舗の手伝いの方はそういった経験のある方、言語の理解が早い方を上位にしています」

「こちらは一緒に訓練をしていた班ごとだ。何をするにしても連携が第一だからな」


 2人からいただいたリストをペラペラとめくります。普段獣人と接しているお2人がリストアップしたのですからそれぞれ言った通りの人材が揃っているのでしょうね。しかしリストが2つですか……


「ちなみにこのリスト間で親しい人同士がわかったりしますか?」

「むっ?」

「ああ、そういえばそうですね。相性の問題もありますし1度顔合わせがてら一緒に過ごさせてみますか?」

「出来ればお願いします。人間関係がこじれると厄介ですしね」

「わかりました」


 現状のリストではそこまで考慮されていなかったようですがトッドさんが察して提案してくださったのでお願いしておきます。見知らぬ異国の地で一から生活を築いていくのです。相当なストレスがかかることは予想に難くありません。ですからせめて身内ぐらいは安らげる相手と過ごしていただきたいですしね。


「あとこれは私からの提案なのですが私の派遣先はユミリア国にしていただきたいのです」

「ふむ、どういった理由でしょう?」

「あの国は他の大陸との交易があると聞いています。つまり最も利益を上げる可能性が高いということ。そしてフルー王国とドワーフ自治国の間に位置していますので情報のやり取りを行うのに最適ではないかと思いまして。私たちの隊からそれぞれの店に2名ずつ派遣する予定ですがあくまで彼らは兵士ですので商売に明るくありません。ですので最も重要と思われる店舗はしっかりと押さえておいた方が良い、そう結論づけました」

「そうですか」


 トッドさんの提案を吟味します。確かに言っていることは正しいでしょう。店舗を出す予定の3国の中で言えば一番収益が上がると予想されるのはユミリア国ですしね。

 トッドさんには出来れば個別の店舗に留まるのではなく定期的に各店舗を異動しながらその店のフォローをしていくエリアマネージャーのような仕事をやってもらおうかと考えていたのですが……

 うん、せっかくの提案ですしまずはトッドさんの提案通りにしてみましょう。仕入れの関係や魔石の購入などでどちらにせよ私が定期的に店に寄ることにはなりますので多少のフォローなら可能でしょうしね。問題が発生しそうならテコ入れなり、配置換えなりを考えれば良いですし。


「わかりました。ではトッドさんにはユミリア国を担当していただきます」

「ありがとうございます。頑張らせていただきます」


 トッドさんが微笑みを浮かべながらそう返してきました。あとの人員配置はトッドさんにお任せすれば良いですかね、とそんなことを考えていたのですがその横でうむうむと首を縦に振っていたユリウスさんが続けて口を開きました。


「してワタルよ。儂はどこへ行けばよいのだ?」

「「えっ!?」」

「何を驚いているのだ。せっかく殿下のために働くことが出来る機会なのだぞ。貴族教育は受けておるからそこらの者よりはるかに役に立つだろう」

「ここで獣人の方々を引き続き鍛えていただいても大丈夫ですが……」

「それは部下でも十分に出来ることだ」


 やんわりと断ろうかと思いましたがそんな私の提案はすげなく却下されました。確かに農家の3男や4男である兵士の方々に比べればユリウスさんの方がはるかに高度な教育を受けているでしょうし能力的に考えればユリウスさんの言うことももっともです。しかし能力だけで商売が成功するわけでもないのですよね……


 まずドワーフ自治国はありえません。ランドル皇国に近すぎますし、そもそもユリウスさんに悪意を持つ人もいそうですしね。直接戦闘を行っていた間柄なのですから。いくらユリウスさんの髪が伸び、日に焼け、ひげも整えられたものではなくなったといっても絶対にわからないなんてことは言えませんし。まあかなり様変わりしているのは確かですがね。ということで残るはユミリア国かフルー王国となるわけですが……

 視線をトッドさんへと向けます。一瞬トッドさんの目が見開かれ、そしてすぐに諦めたかのようにほんのわずかに肩を落とすとゆっくりと首を縦に振りユリウスさんへと向き直りました。


「ユリウス様は私と一緒にユミリア国ですね。最も重要な場所を押さえ、さらに的確な指示系統を維持するためにはユミリア国以外ありえません」

「おお、そうか。ではよろしく頼むぞ、トッド」

「はい」


 そう答えるトッドさんは平然としているように見えますが先ほどまでの様子から考えるに心中は違うのでしょうね。もしかするとユリウスさんのお守りから離れられると考えていたのかもしれません。ユリウスさんを諌めたり、とりなしたりすることはあっても自分からこうしたいという提案を受けたのは考えてみれば初めてですからね。

 そう考えると悪いことをしてしまった気もしますがユリウスさんをうまくコントロールできるのは付き合いの長いトッドさんか敬愛されているエリザさんだけですしね。たまに他の支店の視察と言う名目でユリウスさんを連れ出してあげればトッドさんの息抜きも出来るでしょう。


「ではその他の方の配置や獣人の方々の再選定と確認をよろしくお願いします」

「わかりました」

「任せておけ」


 自信満々に言い放つユリウスさんと真面目な表情の中に若干の疲れの見えるトッドさんに私は暖昧に笑い返すのでした。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【イギリス領香港】


第一次アヘン戦争後の南京条約において香港島の割譲を受けたイギリスですがこの地が選ばれたのにはいくつか理由があります。

地理的要因として珠江の河口に位置し広東に近い島であること、そして香港には広い天然の港があったことなどです。この天然の港は大型の商船には理想的な港であり、島であるため容易に攻撃をしずらいという点がメリットでした。

大砲の射程が伸び香港島が砲撃される危険が増えたことを感じたイギリスは1898年に九龍半島の大部分と香港周辺の島々を租借して守ろうとしたりとこの時代のイギリス海軍の軍港として大きな役割を香港が果たしていました。


***


お読みいただきありがとうございます。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
https://ncode.syosetu.com/n0484fi/

少しでも気になった方は読んでみてください。

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