表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
退職記念のメガヨットは異世界の海を今日もたゆたう  作者: ジルコ
第五章:新たな出会いと開発と
144/161

Flag140:報告を聞き、予定を決めましょう

 翌日から機雷の設計そして契約書についてマリサさんに教える日々が始まりました。同じことをずっとしていては集中力も落ちて効率が悪いですし丁度良かったのかもしれません。

 勉強する子供たちの横で古文書を解読しているかのような難しい顔をしながら契約書とにらめっこしていらっしゃいますが。まあしっかりと自由時間も確保していますので気分転換は出来ているようですし大丈夫でしょう。


 本当は契約に関してそれ専門の人材を雇うなりしてしまえばマリサさんが契約を直接結ぶという機会はほぼないかもしれません。しかしこの勉強は決して無駄にはなりません。職人であっても契約書は読めた方が良いと個人的には思っていますしね。


 日本であっても一見公正な取引のように見えながら深く探ってみると一方的な契約で特殊な事態が起こった時に困ることになったという話はごろごろしています。それが本人がその内容についてしっかり承知していて結んだ契約であれば自業自得だと思いますが契約に関して無知であったため言われるままに契約してしまったということが往々にしてありますし。

 無知であっても契約したのだから仕方がないとはわかっていますが個人的に気分は良くないですね。実際に知り合いにそういった相談を持ち掛けられたことのある身としては特に。


 まあそれは置いておいて兵器開発やマリサさんに関しては順調に進んではいるのですがユミリア国との交渉については停滞気味のようです。セドナ国の時の様に会談を引き延ばしていると言う訳ではないのですが単純に色よい返事がもらえていないようですね。


 基本的に今回の同盟はランドル皇国に対するためのものです。接していないユミリア国としては同盟を結ぶメリットを感じられないのかもしれません。同盟と言うからにはもし接する3国が攻め込まれた場合に援助する必要が出てくるわけですしそもそも持ち込まれた情報が正しいという判断が出来ているのかもわかりませんからね。


 夕食後、ミウさんとお茶を楽しみながら報告を自室で聞き、そんなことを考えます。まあ進展はなかなか難しいと思っていたのでそこまで驚くことはありません。


「予想通りと言う訳ですか」

「はい。会談の日程としては3日後と5日後が現状決まっていますが今までの進展のなさを考えると妥結は難しいかと」

「まあ普通そうですよね。国と言う大きな単位で決断するのですから下手をすれば1年、いえそれ以上の時間が必要でしょう。情報収集する時間もいりますし、内部を纏める時間もありますからね」

「前の2か国が異常に決断が早かったせいで忘れそうになってしまいますけど」


 ミウさんと見つめ合ってお互いに苦笑いを浮かべます。今回の外遊について当初は同盟を結ぶところまでは想定していませんでした。もし出来れば望ましいことではありましたが現実問題として無理と私もミウさんも判断していたのです。

 今回の外遊については情報の共有と顔繋ぎを主とする予定でした。そして我々が別の国へ向かっている間にそれぞれの国が情報の調査と精査を行い、自国内での意見をとりまとめ、我々が2周目、3周目と何度か各国を回っていくことで徐々に同盟を結んで行くことが出来たらと考えていたのです。

 1周にかかる期間は2か月から3か月を想定し、休憩を間に挟みながら1年以内にすべての国と同盟を結ぶことが目標、そんな計画だったのです。なまじうまくいきすぎていたために欲が出てしまいますが計画通りと考えれば問題ないとも言えるのですがね。


「まあ同盟については今は置いておきましょう。それで町の様子はどうでしたか?」

「そうですね。案内していただいた限り栄えてはいますね。治安も悪くはなさそうです。変わった点と言えばこの大陸外の国と交易があるようで商店には見慣れない品が並んでいましたし、布を巻いたような見慣れない帽子を被った方々が普通に町を歩いていました」

「そうですか。他の大陸と交易ですか……」


 頭の中で海図を思い浮かべます。おそらくこのバーランド大陸から北に2000キロほどの所にある別大陸の国でしょうね。その大陸はこのバーランド大陸とは比べ物にならないほどに大きく、まさに大陸と言う名がふさわしい広さを誇っています。エリザさんたちと出会った当初、ランドル皇国から逃がすとしたらこの大陸かなと密かに考えていた場所でもあります。

 国賓が来ているということである程度キレイ(・・・)にはされているでしょうし、そういった場所へは案内していないと考えても栄えているのは事実でしょう。

 ふむ、ちょうど良いかもしれません。


「うーん、交易品として何が扱われているか、そして何が望まれているか調べないといけませんね。ユミリア国内向けの需要もありますし。いっそのこと店舗を自ら出して人を派遣した方が良いでしょうか? 現地の情報を知るために地元からも採用して……一時的に出費は増えますが先を考えればその方が早いかもしれませんね」

「ユミリア国に店を出すのですか?」

「はい。戦争も起こりそうですし船の機能の充実に兵器の開発。お金も魔石もかなり必要になります。そう考えると稼ぐことのできる拠点を増やすのは急務です。その点で言えばランドル皇国から離れていて他の大陸と交易を行っているユミリア国は最適です。ランドル皇国には私はもう行けないでしょうしね」


 黙ったまま困ったように笑うミウさんを見つめ、ふっと息を吐き笑います。

 今回の外交においてこのフォーレッドオーシャン号で各地を回ったということ、そしてその船の持ち主が私だということはランドル皇国にも伝わるでしょう。密偵はどこかにいるでしょうし、そうでなくてもこれだけ目立つ船ですから商人伝いに広がっていくはずです。

 私がのこのことランドル皇国へ行けば、まず確実に捕まってフォーレッドオーシャン号を引き渡すように言われるでしょうね。どうやらこの船にご執心の方もいらっしゃるようですし。


 交流のあったツクニさんたちが心配ではありますがヒューゴさんの見立てでは調べられはするだろうが取引していただけなのでぎりぎり大丈夫だろうし、いざとなったらダークエルフに助けてもらうとのことでしたのでその判断を信じるしかありません。私などよりはるかにランドル皇国に詳しいヒューゴさんの判断に私が口を挟むことなど出来ませんしね。その判断を信じましょう。砂糖の販売や獣人奴隷の方々についてはダークエルフの方々に既にお願いしていますしね。


 ミウさんの表情を見れば何を考えているかはわかります。しかしその配慮は必要ないものです。一国に行けなくなる程度この広い世界から考えれば大したことないのですから。


「まあ細かいことは明日考えましょう。それより今は……」

「キャッ」


 ミウさんを抱きかかえそのまま立ち上がるとかわいらしい悲鳴が聞こえてきました。腕の中で顔を赤くしながら抵抗することなく私を見上げるその姿に幸せを感じながらベッドへと運んでいきます。

 2人きりと言うのは久々ですしね。まあ2人きりなのに先に仕事の話が来てしまうあたりに私とミウさんの性格が表れていますが。いえこの考えも余分ですか。今は目の前の愛しい人を愛することだけを考えましょう。


「明日は寝坊しても良いですかね。予定もありませんし」

「そうはいってもきっと2人とも起きますよ、食事の用意もありますし」

「それは残念。次回は料理の出来る方を乗せましょうかね?」

「馬鹿……」


 そう言って軽く私の胸をトンと叩いたミウさんに笑い返しながらベッドへと入ると、ゆっくりと部屋の明かりが暗くなり船の揺れと共に2人で溶け合う時間が始まるのでした。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【ボイラー】


船の推進力として蒸気が使われている船には当然のごとくボイラーがついている訳ですが、推進に蒸気を使わない大型船にも実はボイラーがついていることが多いです。

船内の暖房や風呂の温水などを作るためと言うこともあるのですが、大型船の燃料のC重油は常温ではほとんど固形なので加熱が必須だからです。とは言え最近は蒸気ボイラーよりも管理が容易な熱媒油を使用したヒーターが用いられることもあるようです。


***


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
https://ncode.syosetu.com/n0484fi/

少しでも気になった方は読んでみてください。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ