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Flag122:プレゼンを始めましょう

 用意した資料を見ながらノシュフォードさんとプレゼンの最終確認をしつつ過ごしているうちに時間はあっという間に過ぎていきました。正午少し前に簡単な食事を済ませやってくるのを待ちます。


 会場についての用意もすでに終わっています。場所はパーティを開いた2階のリビングスペースです。机や椅子の数も十分ありますし、設備も整っていますからね。

 机の上には既に各個人用の資料が配布してあります。「セドナ国代表」等の名札も作成して置いておきましたので席を迷うことも無いでしょう。一応ペットボトルの水も各個人に用意しておきましたが、うーんその飲み方から説明が必要な気がしないでもありません。まあ一度説明すればいいのですから問題はないでしょう。プレゼンは今回で終わるとは限りませんからね。


 今回のプレゼンによってこのフォーレッドオーシャン号の共通空間の能力が知られてしまうと言うリスクはあります。しかしそれを知られたとしてもやらなければいけないことですからね。

 まあパーティを開こうと思った時点で共通空間の能力を知られてしまうという想定はしていましたし、なんとかなるでしょう。





 午後1時を少し回ったころ港の方から近づいてくる一隻のギフトシップの姿を確認しました。マイアリーナ号です。望遠鏡で見たところどうやらエルフの方々も搭乗しているようですね。


「いよいよですね。大丈夫ですか」

「ああ。すまんが頼む」

「気にしないでください。私にとっても重要なことですので」


 隣にいるノシュフォードさんと視線をマイアリーナ号へとむけたまま軽く会話を交わします。

 今回のプレゼンはほとんど私が行います。資料を用意したのは私ですから一番理解がある私が行うと言うのは当たり前ではあります。


 まあ実際のプレゼンはそうではない事も多いですがね。プレゼンの資料を作るのが得意な人とプレゼンをすることが得意な人は必ずしも一致しませんから。それが可能なのはプレゼンをする人が事前にその資料について読み込み、十分な理解を得ているからこそ出来るのです。今回のように短期間で十分な予行演習なども出来ない状況でノシュフォードさんにプレゼンをしろというのは酷なことですしね。まあ人質がプレゼンをすると言うのもなんだかなぁという気がしないでもありませんが。


 いよいよマイアリーナ号が近づいてきましたので後部デッキへと2人で向かいます。減速していったマイアリーナ号が大きく弧を描きながらゆっくりと動き、そして船尾同士が1メートル程度の距離になったところで完全に静止しました。船員の方々の動きも素晴らしいものでしたしエドモンドさんの指導が行き届いているのでしょう。


 マイアリーナ号とフォーレッドオーシャン号を繋ぐように木製の板が掛けられ、その上を代表の面々が歩いてきます。

 セドナ国の代表はロイドナールさん、トリニアーゼさんと入港時やパーティで見かけた男性エルフのジゼルフォードさんのようですね。

 ノルディ王国の代表は外交を担当しているキュレーヌ伯とお付きの文官の方、そしてエリザさんとマインさんと言う面々の様です。ミウさんが来るかと思っていたのですが……いえ、来ない方が正解なのでしょうね。私にとっても彼女にとっても。


 全員がフォーレッドオーシャン号へと乗り移ったところで板が外され、マイアリーナ号が少し離れた場所へと移動していきます。こちらの要望に従ってくださるようです。とりあえず一安心と言った所でしょうか。


「皆様、ようこそいらっしゃいました。会場の用意は既にできておりますのでご案内させていただきます。場所は以前にパーティを開いた2階のリビングスペースになります。残念ながらシャンパンはありませんがご容赦ください」


 にこやかに笑いながらそう告げると反応は様々でした。私が縄などで拘束されずに自由に過ごしていることに少し驚きの表情をしている方もいました。若い方ばかりですがね。ロイドナールさんやキュレーヌ伯などは流石と言うか特に動揺した姿を見せません。まあ外交をしているのですから表情のコントロールは当たり前でしょう。


 ノシュフォードさんを先頭に私が続いて皆さんを案内します。2階のリビングスペースに用意された席へとお連れし、ペットボトルの水の使用方法をお伝えしてプレゼン中に喉が乾いたら自由に飲んでいただけるようにもなりました。


 さてプレゼンを始めましょうかね。


 全員が座っている席から2メートルほど離れた位置で立ち止まり皆さんの顔を見回します。全員が私たちに注目しています。視線をノシュフォードさんへと向けるとこくりとその首を縦に振りました。視線を再び机に座っている代表の方々へと戻し、微笑みながら話し始めます。


「本日は突然の会談の申し出を受けていただきありがとうございます。私の状況について疑問に思われている方も多いと思いますのでまず初めに説明させていただきます。現状私が人質という立場は変わりありません。ただノシュフォードさんの話をお聞きし、相互の理解、現状の把握、同盟の今後について検討が必要と言う結論に至りました。十分な議論を尽くすためにも私はノシュフォードさんと同じ側から説明をさせていただきます。ご協力をお願いいたします」

「それはお主を助けなくても良いと言うことかの?」


 ロイドナールさんの細まった瞳がきらりと光りを放ちます。答え方を間違えれば私ごと制圧されてしまいそうな言い方ですね。まあ事前に言ってくるあたり本気ではないのでしょうが。


「意見はご自由にしてくださって結構です。敵になったわけではありませんので」

「ほっほ。まあ話を聞くとしようかの」


 私の答えにロイドナールさんが表情を緩めます。やはり軽いジャブのようでしたね。

 他の皆さんに視線を巡らせても特に何か言うようなことはありません。エリザさんが柔らかく私に笑いかけています。背中を押してくれているようですね。ありがたいことです。

 息を一度ゆっくりと吐き、そして息を吸います。


「ではこれからノシュフォードさんの主張について説明させていただきます。説明にあたってはお手元の資料をご参考にお聞きください」


 皆の視線が資料へと向かい、ペラペラとそれをめくっています。全てが同じ内容で均一な文字が描かれていることに驚いているようですがそこについては慣れていただくしかありません。話を始めてしまいましょう。


「まず1ページ目をご確認ください。そこにも書かれている通り、ノシュフォードさんの今回の行動は身勝手なものでは無くセドナ国を想っての行動でした。まあその方法としてはこのような方法をとったことは個人的にはどうかと思うところもありますがね」


 私の言いように隣のノシュフォードさんから苦笑が聞こえます。自分でもそう思っているのでしょう。

 皆さんの資料を追う目が落ち着いたところで再び話し始めます。


「そしてその原因となったノシュフォードさんがランドル皇国で見たものとは……今まで彼が見たことのない新型の兵器でした」


 私が説明する横でノシュフォードさんが資料をめくっていき、それに合わせて皆さんも資料を確認しています。プレゼン用のソフトがパソコンにインストールされていれば楽だったのでしょうが流石に入っていませんでしたからね。資料も別ソフトで作成しましたし。


「この兵器について私たちは鉄の玉を飛ばす砲を鉄砲、馬も無く自動で走る馬車を自動車と仮称することにしました。この用語をこれ以降用いていきますのでご了承ください」


 皆さんがうなずいたことを確認し説明を続けていきます。


「この鉄砲に関して話を聞いた限りかなりの脅威だと私自身は判断した訳ですが、セドナ国の上層部の方々は取り合わなかったと聞いています。理由をお聞きしても?」


 ロイドナールさんへと視線を向け質問を飛ばします。一般的なプレゼンとは異なっていますが不明点が多すぎるため仕方がありません。

 ロイドナールさんはうむ、と小さくうなずきながらゆったりと話し始めました。


「その鉄砲とやらは既に開発されて廃れた歴史があるからじゃ。300年以上前の話じゃから最近の若い者は知らんかもしれんがのぅ」

「と言うことは対応策が既に練られていると言うことでよろしいですか」

「そうじゃな。鉄砲があると言うことさえ知っていれば対策を取ることは出来るのう」


 ロイドナールさんの言葉は自信満々で偽りなど全く感じられませんでした。対抗策があると言うことは疑いようがありません。まあそれについては予想していました。そうでなければ鉄砲の脅威を想定しないなんていう対応を上層部がするとは思えませんでしたしね。

 とは言え対抗策があると考えて思考停止してしまうのは違うと思いますが。反応としては予想通りです。


「それでは少しこちらの映像をご覧ください」


 リビングルームに用意しておいたテレビ画面に用意しておいた映像を流し始めます。皆の視線が食い入るようにそこへと向きました。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【クルーズの違い】


日本においてこのクルーズと言う言葉はモーターボートによる船遊びから遊覧船によるランチクルーズなど船に乗って遊ぶこと全般を指しています。

一方で欧米においては移動を目的としない船内宿泊を伴ったレジャーの事を一般的にクルーズと呼ぶようです。期間は一週間以内が主流のです。

日本のイメージのまま海外でクルーズに誘われてほいほいとついて行くと思わぬ事態になってしまう可能性もあります。ご注意ください。


***


お読みいただきありがとうございます。

メンテナンスのため投稿時間がずれるかと思ったのですが早く終わったようです。今後も何かない限りこの時間に投稿しますのでよろしくお願いいたします。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
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少しでも気になった方は読んでみてください。

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