Flag121:日程を通知をしましょう
更新が停止してしまい申し訳ありませんでした。
順調なときほど逆風が吹くようですね。
風は風でもインフルエンザと言う名の風邪もどきでしたが。皆様もお気を付けを。
プレゼン用の資料の用意と事前のリハーサルを終えたのは結局午前3時過ぎでした。ある程度は形になったと思いますが不確定な情報が多すぎてこれ以上の準備は現状では不可能です。はっきり言って私の知らない情報で内容が全てひっくり返る可能性もありますからね。完璧を求める必要はないでしょう。
妥協したおかげで3時間ほど仮眠をとることもできました。体調は万全とまでは言いませんが悪くはありません。頭に残る少しの眠気を追い出すためにも熱いシャワーを浴びて目を覚まさせます。寝起きの熱いシャワーは体に悪いと健康診断で言われたような気もしますが、まあ大丈夫でしょう。
7時少し手前にはいつも通り身支度を整え終えることが出来ました。しかしノシュフォードさんは未だに目を覚ます様子はありません。身じろぎはしていますし、顔色もいくぶん良くなったように見えますので問題はないとは思いますが、とりあえず朝食の準備が終わってから起こすことにしましょうかね。
朝食は最近の定番となりつつあるホットケーキです。とは言え今日は子供たちもいませんので砂糖を入れずに作った甘くないホットケーキにべーコンと半熟の目玉焼きそしてサラダにしてみました。
私の知り合いにこういったプレゼンの朝食には必ずカツを食べてゲンを担ぐという人もいましたが私は普段通りの生活から変えたことはありません。プレゼンも平常心が大事だと思っていますからね。
うーん、しかし改めて考えると私の普段通りの食事と言うのもある意味ではゲンを担いでいると言えるのかもしれませんね。
そんな考えが浮かび少し笑みを浮かべながら2人分の食事をノシュフォードさんの寝ているソファーの手前の机の上へと並べていきます。そしてすべての準備が終わり、さて起こしましょうかねと思ったその時、ノシュフォードさんの体がまるでばね人形のように跳ね、飛び起きました。
あと数秒遅ければ確実に私とぶつかっていましたね。助かりました。
ノシュフォードさんがキョロキョロと状況を確かめるように視線を振り、目の前の朝食へとしばし釘付けとなり、そして私と視線が合います。彼は少し驚いた顔をしていました。そんな彼に笑いかけます。
「おはようございます。朝食の用意は出来ていますよ。しかしその前にシャワーですかね?血が固まってしまっていますし」
「……逃げなかったのか?」
「なぜ逃げる必要が?」
そう聞き返すとノシュフォードさんは口ごもってしまいました。妙なところで悲観的というか半ば自暴自棄のような言葉が目につきます。色々な事を考えてしまい精神的に不安定になっているのかもしれません。
考えているのに計画的ではなく、責任感はあるのにどこかやけになっているようにも見える。うーん、こんな状態になる前にしっかりとフォローをしていただきたかったところです。まあ今更の話ではありますがね。
ノシュフォードさんの体には乾いた血がこびりついています。昨夜、寝る前にシャワーを浴びてはどうかとも提案しましたがそれは断られました。そもそもシャワーに行く体力や気力がなかったのかもしれません。あれだけ血を流したのですから当たり前です。
まあそれは仕方がありません。しかし今は体力、気力ともにある程度は回復しているように見えますし、遠慮する必要はないでしょう。これ以上船を汚されても困りますし。
血の汚れの着いたソファーや床を見ながらそんなことを考えます。そして視線をノシュフォードさんへと戻して笑みを深めました。なぜか若干ノシュフォードさんが引いたような顔をしていますがきっと気のせいでしょう。
「さあ、シャワーを浴びてもらいますよ。服も洗濯しますからね」
「いや、おいっ」
「問答無用です」
ノシュフォードさんの手を半ば強引につかみ私の部屋のシャワー室へと連れていきます。そして少々文句を言われながらもなんとかノシュフォードさんを身ぎれいにすることに成功するのでした。
「それで、どうするつもりだ」
朝食を食べ終えたノシュフォードさんが柔らかくなっていた視線を鋭く戻し私を見てきました。食事中はその話はしないと言う私の言葉を守って黙って食事を食べるあたり律儀な性格が垣間見えますね。まあその分食べるペースは早かったのですが。
口につけていたコーヒーを置き、そして視線を返します。
「洗い物をします……と言うのは冗談ですよ。そんなに睨まないでください」
無言で視線をさらに鋭くしたノシュフォードさんの姿に両手を挙げて降参の意思を表します。すぐにため息を吐いたところを見ると少しは心に余裕が出てきたのでしょう。良い傾向です。ではそろそろ息抜きの会話も必要ないでしょうかね。
「まず港へと向かい会談を申し出ます。会場はこのフォーレッドオーシャン号。参加者はセドナ国から代表者3名、エリザベート殿下、アイリーン殿下の両陣営を合わせて4名、合計7名と言ったところでしょうか。あまりに多すぎると危険も多いですし説明も面倒ですしね。時間はあちらの人選の時間や食事の関係も考えて昼過ぎを想定しています」
「会談に応じると思うか?」
「まあ応じるしかないでしょう。私が、というよりはこの船が今回の外遊には必ず必要ですからね。武力行使という手段もないではありませんが私が元気な様子を見せれば救助の緊急性は薄いと判断されるでしょうし。話し合いを相手から求めてきており平和的に解決できそうな道があるのにわざわざ危険を犯すほど愚かとは思いたくはありませんね」
神妙な顔でノシュフォードさんがうなずいています。
まあ実際は昨日の夜の時点でアル君に私が元気であることは伝えてもらっていますし、その伝言が出来る程度の自由があるのにもかかわらず帰ってこなかったと言うことから私が何かをしようとしているとエリザさんたちなら察してくださるでしょう。会談の申し出をすればそれを受けるように働きかけてくださるはずです。
ノシュフォードさんから異論も無かったため当初の予定通りに進めていくことにしました。ノシュフォードさんに先ほどの内容の通りの手紙を書いていただき、それを空き瓶に詰めてコルクを締めて密封します。まさかパーティで飲んだシャンパンの空き瓶をこんな風に有効活用することになるとはだれも想定していなかったでしょうね。
そして船を港へと近づけていきます。港には大勢のエルフの方がこちらを監視しており、その中にはエリザさんを始め船に乗船していた面々の姿もありました。その中にはミウさんの姿も認められ、少々頬が緩みます。
顔が認識できる程度まで近づいたところで船を止め、操舵室からノシュフォードさんと共に外へと顔を出し元気に手を振ります。色々な声が飛んできますが混じり合ってしまい内容についてはよくわかりません。代表者で話す人などを事前に決めておかなかったのでしょうかね。
まあそんなことを気にしても仕方がないのでノシュフォードさんを促し、そして手紙の入った空き瓶が港へと向かって放り投げられました。陽光を反射しながらくるくると回転して飛んで行った空き瓶は割れることなく港近くの湖面へと着水し、ぷかぷかとその半身を水面上へとさらしています。一応予備も用意したのですが必要は無さそうですね。
それを見届け、そして操舵室へと戻るために身を翻します。陸地に近いこの場所に長く留まるのは危険しかありません。個人の暴発というものの恐ろしさは十分に知っていますからね。
「ワタルさん!」
雑多な声に紛れて聞こえたその声に振り返りたい衝動が身を焦がしていくのを感じます。しかし今はその時ではありません。
自分自身の気持ちを振り切るように速足で操舵室へと入り船を発進させます。港から離れていく様子が横目に映ります。前方に何もないことを確認し、しばしその目を閉じます。舵を握る者としては失格な行動です。自分自身で重々承知しているのですがね。
大きく息を吐き、気持ちを入れ替えます。
サイは投げられました。最良の結果を導くためのプレゼンへ向けて集中していきましょう。
役に立つかわからない海の知識コーナー
【グランド・バンクス】
現カナダ領であるニューファンドランド沖の比較的浅い海域のことで北大西洋のマダラの最大の育成地です。
ニューファンドランド島を発見したジョン・キャボットはこの海域の事を「魚の群れであふれかえっている。網どころか籠に重りの石をつけて海中に下ろすだけで魚が獲れる」と書いておりいかにこの海域が豊かな海であったかがわかります。そのためこの海域を支配しようとヨーロッパ各国が乗り込んでくると言う歴史が出来上がって行きました。
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お読みいただきありがとうございました。
インフルエンザで寝込んでしまい更新が途絶えて申し訳ありません。感想返信なども遅れてしまって申し訳ありませんでした。
ランキングも落ち着きましたし養生もかねて更新は元のペースに戻します。こつこつと続けていきますのでお付き合いをよろしくお願いいたします。




