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Flag114:スパ・プールを楽しみましょう

 フォーレッドオーシャン号で行われたパーティから3日経過し、トリニアーゼさんの独り言の通り会談が今日から始まるという連絡を昨日受けました。おそらく問題なく終わるのでしょう。

 と言う訳でセドナ国での残りの滞在期間は限られているわけですが、町の中へと入ることは出来ませんのであまり私の生活は変わりません。とは言えあのパーティから変化はあったのですがね。


 大きな変化としてはマイアリーナ号の方やエルフの方々がたびたびこの船を訪ねてくるようになったことでしょうか。用件は様々です。ただ話に来たということもありますし、食事を一緒にとることもしばしばあります。シェフが来るときはシェフが料理していただけますので皆に好評ですね。やはり素人の私が作ったものとは味が違います。


 それに付随して、と言ってよいのかわかりませんが交易も少しだけですが行うようになりました。交易と言ってよいのかは微妙なところですがね。と言うのも取引する商品は私が初日にトリニアーゼさんにお渡しした消耗品類なのです。

 トリニアーゼさんが取りまとめてきた欲しい物をポイントで購入し手渡すだけですので何というかあまり商売をしているという気分になりません。楽ではあるのですがね。


 ポイントで全て購入可能なものですので支払いについては魔石を融通してもらうことにしました。パーティで結構なポイントを使用してしまいましたので丁度良かったです。向こうとしてもセドナ大森林には結構な魔物がいるらしく魔石は余り気味だったようですのでお互いに丁度良かったと言えるでしょう。

 ちなみに最も需要があったのは砂糖でした。確かにこの森の中ではなかなか栽培は難しいかもしれませんね。


 他は基本的に変わりませんね。たまに食材を仕入れつつ魔道具を見に行き、フォーレッドオーシャン号でのんびりと過ごす。そんな生活です。

 先のパーティのような使われ方もそして今のようなのんびりとした使われ方もフォーレッドオーシャン号での過ごし方の1つです。まあ最近はのんびりしてばかりでしたのでああいった人を招待してのパーティに使われるフォーレッドオーシャン号の姿はまた違った美しさであることを再認識しました。これからも機会があれば開きましょうかね。


「おーい、おっちゃん。オレンジジュース頼む」

「はいはい」


 アル君の呼ぶ声に思考を現実へと引き戻されました。バーラウンジの小型の冷蔵庫に入れておいたオレンジジュースをコップへと注ぎアル君の元へと持っていきます。


「どうぞ。ハイ君とホアちゃんはいりませんか?」

「「だいじょぶー」」

「そうですか。また何かあったら呼んでくださいね」

「「はーい!」」


 2人が楽しそうに水を跳ねさせながら遊ぶ横でアル君が体を半分だけ水から出してチューチューとストローでオレンジジュースを飲んでいます。完全にリラックスモードですね。そんなアル君の横に置かれたリクライニング式のソファーへ腰を掛けます。


「どうですか、スパ・プールは?」

「おう、良い感じだな。泳げないのはちょっと不満だけど」

「さすがに泳げるほどのプールは無理ですね」


 アル君の言葉に苦笑します。確かに同じメガヨットと呼ばれる船の中には人が泳げるようなプールを持つモンスター級のメガヨットもあります。まあヘリの発着場がついていたりするヨットと聞いて首を傾げたくなる大きさのものですがね。


 子供たち3人は4階のスカイデッキにあるスパ・プールで遊んでいます。湖はありますが流石にそこで泳いでもらう訳にもいかず、滞在が長くなるにしたがってアル君がそのことにストレスを感じ始めていたようでしたのでついでに皆で遊んではどうかと提案してみたのです。もちろん全員に二つ返事で了解されました。

 初めてこの船を案内した時にアル君がこのプールに興味を持っていましたのでいつかは入ってもらおうと思っていました。ずいぶんと時が経ってしまいましたが機会に恵まれて幸いでしたね。


「アル、アル。やってやって」

「おう、いくぞ!」

「「キャー!!」」


 オレンジジュースを飲み終えたアル君にハイ君とホアちゃんが迫り、それに応えたアル君が尾びれで盛大に水しぶきを上げています。水がかかったハイ君とホアちゃんが歓声をあげ、そしてアル君による更なる水しぶきから逃げ回っています。しかしもちろん狭いので逃げ切れるわけがありません。結局全員が全身ずぶ濡れになっていますがとても楽しそうです。良い気晴らしになったようですね。

 ちなみに今の攻防の結果、スパ・プールから大量の水が外へと溢れています。まあそれ用に作ってありますので問題はありませんが、後でみんなで掃除ですかね。遊びは片付けまで出来てこそですから。


 昼になったので遊びをやめ、4人で簡単に周囲の掃除も終えます。そして2階のいつものリビングへと戻り昼食を食べると遊び疲れた3人はコテンとソファーで眠り込んでしまいました。遊び疲れて満腹になったのですから当然かもしれません。

 熟睡しているようですのでベッドに運ぼうかとも思いましたが、万が一起こしてしまっては可哀想ですので3人に薄手のブランケットをかけておくに留めました。とりあえずはこれで大丈夫でしょう。


 3人をその場に置いて私は4階のスカイデッキへと戻り後片付けの再開です。さすがに後片付けを子供たちに全てを手伝わせるつもりはありませんでしたから寝てしまったのはちょうど良かったですね。

 使ったスパ・プールとその周辺を隅々まできれいに磨いていきます。結構な体力を使いますが綺麗になっていくのが実感できる分やりがいはあります。


 本当のことを言えばこんなことをする必要はありません。ポイントさえ使えば元の状態へと戻すことが出来るのですから。しかし個人的な矜持としてあまり船のこういった清掃をおろそかにはしたくないのですよね。


 確かにそれをすれば時間や労力の節約をすることが出来ます。私も忙しい時にまで無理にすることは無いと考えています。予定が立て込んでいる時に効率よく行う方法があればその手段を選ぶのが当たり前ですから。


 しかし今はそういった予定が全くありません。来客があれば対応はしますがそれにしたって立て込んでいる訳ではありません。それなのに便利なものに頼りすぎて船のメンテナンスの手間を惜しむようになったら私のこの船に対する愛着が薄れてしまいそうな気がするのですよね。船の好きな私からしたらこの船を掃除する時間と言うのも楽しい時間ともいえますし。


 スパ・プールの掃除を終え時計を確認すると既に午後3時を過ぎていました。曲がった状態で固まっていた腰をググっと伸ばすとほぐされた気持ちよさから思わず口から声が出てしまいます。アル君にはおじさん臭いと言われてしまいますので注意はしているのですが不意に出てしまうのですよね。


 太陽の光に反射するスパ・プールはまるで新品かのように輝いています。掃除したかいがありました。心地よい達成感と満足感に思わず顔がにやけます。

 さて、そろそろ子どもたちも起きる時間でしょうし、シャワーを浴びてさっぱりしたら勉強の時間にしましょうかね。3人には好評ではありませんが、生きていくうえで読み書き計算といった知識は必須ですからね。人生を豊かにするという意味では特に。


 そして階段を降りようとしたところで下の方から何やら騒がしい物音が聞こえ、そしてそれはすぐに怒声と硬い金属同士がぶつかり合うような甲高い物音へと変わっていきました。慌てて階段を降りアル君たちの寝ているリビングへと向かいます。一段飛ばしで階段を駆け下り、どたどたと言うこの船に似つかわしくない音を聞きながら自分の限界まで走る速度を上げます。

 短い距離であるはずなのに息が上がっていき、嫌な予感に体が震えます。


「無事ですか!」


 バンッと扉を開け、私の視界へと入ったのは……


「おっちゃん……」


 不安そうに私を見つめるアル君とそののど元に剣を突きつけている全身に傷を負った若いエルフの男の姿でした。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【船の建造方法の変遷】


船の建造方法として代表的なものは一体型建造法とブロック式建造法が挙げられます。

一体型建造法は主の第二次世界大戦以前の建造方法で船体の最下部となるキールからどんどんと上に積み重ねるようにして建造していく方法です。

一方でブロック式建造法は船体をいくつかの塊に分けて船台以外の場所で作っておき、それぞれが完成してから船台に運んで繋ぎ合わせて建造していく方法です。

ブロック式の方が船台を占有する期間が短くなるため数を造るのに向いていると言うメリットがあります。最近では住宅でも同じようなことがされていますのでそちらで考えた方がわかりやすいかもしれません。


***


お読みいただきありがとうございます。

思わぬ順位にプレッシャーを感じる今日この頃ですが、読んでいただき本当にありがたく思っています。今後ともお付き合いをよろしくお願いいたします。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
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少しでも気になった方は読んでみてください。

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