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Flag111:船上パーティを開きましょう

 エリザさんとアイリーン殿下の話し合いの結果、フォーレッドオーシャン号へアイリーン殿下たちをお迎えする日時は4日後と言うことに決まりました。

 すぐにでも行きたいと言うアイリーン殿下の説得はエリザさんにしていただきました。さすがに準備も無くお客様をお迎えすることは出来ませんからね。


 3日は準備期間があったわけですが料理からそれを提供する食器、その他おもてなしするための細かな調整やサプライズの準備などやるべきことは多岐に及んでおり今までの暇さ加減が嘘のようにあわただしく3日が過ぎていきました。


 そしていよいよアイリーン殿下をフォーレッドオーシャン号へとお招きする日がやってきました。一応名目としては外交の疲れをいやす親睦会です。あれから4日経った今も会談の目途は全くついていませんがね。


「お招きいただきありがとうございます、エリザ様」

「リーン様、こちらこそおいでいただきありがとうございます。本日は疲れを癒すのが目的なのですから堅苦しい挨拶は必要ありませんよ」

「そうですね、エリザ様。私、楽しみで昨日はよく眠れなかったんです!」


 エリザさんと連れ立って去っていくアイリーン殿下を見送ります。そしてその場に残っていたマイアリーナ号の船長のエドモンドさんや文官の方々へと視線を向け微笑みます。


「ようこそ、フォーレッドオーシャン号へ。契約書に記載しておいた通りこの船では身分に関係なく平等にお客様として扱わせていただきますのでよろしくお願いいたします」

「ああ、よろしく頼む」


 エドモンドさんが差し出してきた手を握り返してから2階のパーティ会場へと案内します。

 今回の会場は2階の後部テラスとリビングスペースの間にある扉を開放して通れるようにしていますのでかなりの広さになっています。2階と3階でどちらにするか迷ったのですがね。


 3階ならば後部テラスの屋外スペースが2階よりも広々としているため屋外をメインにするのであれば3階でしたが、今回に関しては港に停泊したままですし海の匂いや音を感じると言うこともありませんので2階にしたわけです。まあ2階の方が通路の関係上見られてしまう部分が少ないですしね。


 パーティ会場の机には既に軽くつまめるような物が並んでいます。私とミウさん、そしてマイアリーナ号に乗っていたシェフの方で用意しました。一口大のクラッカーの上にチーズやトマト、果物などを盛り付けたいわゆるカナッペというものです。シェフの方に好みはお聞きして全員が食べられるようにしましたので問題はないでしょう。


 用意しておいたウェルカムドリンクのシャンパンをグラスに注いで配り終えると、めいめいの場所へと散って行きます。今回は決まった席は設けず自由に移動していただく予定です。だからこそこの船の中では一律でお客様という扱いにしましたからね。

 もちろん完全に立場を無視するなど無理ですがこちらからの要求でそう扱うようになっていると言う免罪符さえあれば王族と皇族の出席するパーティでも少しは楽しむことが出来るでしょう。


 フォーレッドオーシャン号の広さや設備の豪華さに目を奪われている姿を見ると誇らしい気持ちになります。親友のヒロが私のためを思って用意してくれたものですし、私と共にこの世界にやって来てくれたある意味で家族のようなものでもあるのですから。

 感慨深くそんなことを思っていると会場を一回りしたらしいエドモンドさんがこちらへとやってきました。


「良い船だな。持ち主の愛情がよくわかる」

「ありがとうございます。私も最高の船だと思っています」


 エドモンドさんがにかっと笑いました。エドモンドさんの感想は私にとっては最高の言葉です。

 船と言うのはその乗り手をよく表します。たとえ新品の船であったとしてもその乗り手がいい加減な扱いをしていればどこか薄汚れて見えますし、10年以上使用し続けた船であっても愛着を持って大切に乗っていれば傷や汚れがあったとしてもそれは勲章のように映るのです。まあ船乗りにしかわからないものかもしれませんがね。


「あぁ、そうだ。エドモンドさんには今度操舵室もお見せしますよ。ご興味がおありでしょう?」

「いいのか!?」


 私の肩を掴みそうになって、それに気付いて宙に両手を止めたままエドモンドさんが真剣な表情でこちらを見ています。表情に比べて、わきわきと中で動いている手がどこかコミカルで笑いを誘います。

 気持ちは十分にわかりますので笑いませんけれどね。


 操舵室は船の重要な施設の1つです。機関室と並ぶ船の心臓部と言っても過言ではありません。特にこの世界ではフォーレッドオーシャン号のような船は他にないでしょう。それを他の船の船長に見せると言うのは危険極まりない行為です。

 それについては重々承知しているのですが、今後の事を考えるとノルディ王国とはしっかりと信頼関係を結んでおきたいのです。その1手とも言えますが


「この船の操舵室か……」


 フォーレッドオーシャン号の操舵室を見ることが出来ると言うことだけでこんなに嬉しそうな顔をするエドモンドさんと好誼を結びたいと私自身が思っていますから。


 エドモンドさん以外のマイアリーナ号に乗っていた招待客の方々と軽く会話を交わしていきます。話題としてはそう大したものではありません。大概はこのフォーレッドオーシャン号の素晴らしさに対する賞賛の言葉などです。

 本当はどうやってこの船を手に入れたのかなどを聞きたいのでしょうがさすがに直接聞いてきた方はいませんでした。迂遠な聞き方であればはぐらかすことなど造作もありませんしね。


 アイリーン殿下はエリザさんにべったりとくっついて2人でソファーに座ってくつろいでいます。エリザさんの息抜きにはなっていませんが、本来ならばこのパーティのホストはエリザさんですしどちらにせよ息抜きにはならなかったかもしれませんね。


 全員への挨拶などが終わりテラス席でほっと一息つきます。やはりホスト役の代理は気を使います。まあ皆さん楽しんでいるようで良かったですが。

 その時外へと向けていた視線の先の光景を見て持っていたグラスを飲み干して置き、1階の後部デッキへと向かって歩いていきます。

 やっと来ましたね。


 私が1階の後部デッキへと到着するのとほぼ同時にあちらも船へと最も近い桟橋に着きました。


「お招きいただき感謝すると言えば良いかのぅ?」

「いえ。こちらこそ来ていただいて感謝しております、ロイドナール局長」

「ほっほ、立場にはとらわれんという契約ではなかったかのぅ?」

「まだ船外ですので」


 私の言葉に再びロイドナールさんが笑います。セドナ国の入国管理局局長のロイドナールさんの他にも入港した時にやって来た若い男性エルフの方と、眼鏡をかけた冷たい印象の女性エルフの方、そしてトリニアーゼさんがそこにはいました。予定通り4人ですね。


「既にアイリーン殿下はいらっしゃってパーティは始まっておりますのでどうぞお入りください。足元には注意してくださいね」

「ほっほ、では行くとするか」


 危なげない足取りでロイドナールさんがフォーレッドオーシャン号へと乗り移り、続いて他のエルフの方も同様に乗り込んできます。入国管理局ということでそれなりに船には慣れているのでしょう。乗り込んだ4人を2階のパーティ会場へとお連れします。


 ミウさんとマインさんにこのパーティを開催するにあたってお願いしたのはセドナ国の人も招待して欲しいということです。

 どこまで引っ張ることが出来るのかエリザさんたちの腕次第だったのですがね。その結果局長まで引っ張り出せたと言うことはこちらの機嫌を損ねないように注意しているということを再認識させます。まあそれは今は良いでしょう。


 さてそれではみなさんに満足いただけるようにパーティを盛り上げましょうかね。

役に立つかわからない海の知識コーナー


【鐘】


少し前まで大型の船には鐘が設置されていました。船内で時間を知らせるための役割から始まり、霧などで視界が悪い時に衝突を防止するために使われるようになりました。

技術の進化により今ではその役目を終えていますが、古い船にはその名残が残っていたりしますのでもし古い船を見る機会があれば注目してみて下さい。


***


お読みいただきありがとうございます。

お陰様で日間ランキングにのることが出来ましたので連日投稿しました。感謝です。

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シンデレラが一人の女の子を幸せにするために奔走する話です。

「シンデレラになった化け物は灰かぶりの道を歩む」
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少しでも気になった方は読んでみてください。

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