第一話 僕と俺のでっかい目標!
この作品に興味を抱いて頂きまことに恐縮です。
みなさんこんにちは、あんkです。この作品が初投稿となります。
読みにくかったりする箇所が多いかと思いますがみなさんからの声を聞き、改善していこうと思っています。よろしくお願いします。
「――よし!」
僕の高校生活三年間を丸々つぎ込んでやっと叶った。
本当に長い道のりだった。良くやった、僕!
「さっそく開封ボタンを押して……って、ええ!?」
夢が叶ったと思ったその瞬間、僕は突然気を失ってしまった……。
まぶたが重くて目を開けられない。
口が渇いて声が出ない。
手足の指一本すらも動かせない。
一体ここはどこで、どうして僕はこんなことになってるんだろう。
朦朧とした意識の中、誰かの会話が聞こえてきた。
「あー、なんかおもしれーこと起きねーかなー」
「例えば?」
「んー、そうだな。ニンゲンと魔物が和解して毎日お祭り騒ぎ!とか。どうだ?」
「もしそうなっちゃったら無職よ、あんた」
……なにその会話?魔物?
「やー、でもそれで戦いも仕事も無くなるってんならみんなは幸せ俺は楽でいいじゃねーか」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと次の町に……何?あれ」
「んー?って、こりゃニンゲンじゃねーか!おい、大丈夫か?」
そう言って二人は僕のそばに駆け寄ってきた。
「あら、このニンゲン、呪いにかかってるじゃない。軽いやつだけど」
「んー、それよかなんでここに人がいるんだ?クエストは俺たち以外受けられねーはずだ」
二人は僕がここで倒れていたことに疑問を抱いているようだ。
そしてこの身体が動かないのは呪いのせいらしい……。
「あー、ここじゃなんだ。とりあえず運ぶか。……わかった。俺が担ぐ」
「私が運べるわけないでしょ。ったく、あんたってほんと馬鹿ね」
そうして僕は、文字通り見ず知らずの男に担がれ馬車に揺られた。
「――解呪できたわよ」
かいじゅ?たぶん呪いが解けたってことなんだろう。
さっきまではぴくりともしなかった目を恐る恐る開けてみる。
「……っ!!」
そこには、現実にはあり得ない。ファンタジーの世界があった。
獣人や、剣と鎧で武装した人間たちがそこかしこを歩き回っている。
そして空には硬そうな鱗がびっしりと生えた巨体の竜が飛んでいる。
……僕は夢でも見ているんだろうか。
「おー、目が覚めたんだなボーヤ。ここはアクトだ。来るのは初めてか?と言っても、この場所はあまり知られてねえからな。当然か」
と、僕を助けてくれたと思われる男が話しかけてきた。
「……え?」
返事をしようとその男の方へ振り向いた瞬間、僕は信じられないものを見た。
それは……。
僕の名前は森秋人森明人。
都内の高校に通うごく普通の男子だ。
最初は何か部活に入ろうかと思っていたのだが、その時僕は偶然ネットゲームに出会った。
丁度その日がゲームの配信日だったので物は試しとダウンロードしてみた。
今思えば有り触れたMMORPGだったが初めてそれに触れた時、僕の世界は一変した。
それからは毎日、学校が終わるとすぐに帰って朝までゲームに明け暮れた。
イベント最終日は学校を休んだりもした。それほどまでにハマっていた。
そんな日が続いたある日のこと、僕は移動先が変わってしまうというバグに遭遇した。
本当は王都ジェルネに移動したかったのだが、僕はMAPにも攻略サイトにもない「バルバダ」という町に移動された。
そのゲームは人間と魔物の百年戦争を終わらせるために人間側に味方をして戦うという設定だった。
当然人間サイドの僕たちプレイヤーは人間の町にしか移動出来ないし、そもそも魔物の町という概念がなかった。
しかしその「バルバダ」は魔物の町だったのだ。
宿屋の一室に転送されたため何も起きることはなかったのだが、その部屋には宝箱があったのだ。
僕はバグだとわかりつつもその宝箱をインベントリに保管し、一旦リログした。
このゲームは宝箱を開ける際の条件がそれぞれ違っていて、低級モンスターの素材で空けられる宝箱もあればゴールドが必要な場合もあった。
今回の場合は後者で、すぐに開けようと思ったのだが……。
「い、いっせんまんゴールド……」
なんとその宝箱はバグで入手したにも関わらずインベントリに残っており、開封には莫大な費用が必要だった。
僕は戦士でプレイしていたのだが一千万ゴールドを稼ぐため商人に転職したのだった。
そして三年という月日が流れ、ようやく宝箱を開封したところで気を失ったのだ。
「あー、おい。聞いてんのか?ボーヤ、おーい」
……僕はこの男を知っている。
僕がゲームで使っていたキャラクターそのものだからだ。
たぶん、あのバグ宝箱のせいでゲームの世界に入り込んでしまった、のか?
現実的に考えてそれは絶対にあり得ないことだが何故か夢の中とも思えない。
「こらヒデ!この子、怯えてるじゃないの。まずは自己紹介からでしょ。私はマヤでこっちの男がヒデ。よろしくね。それで、あなたの名前は?」
……やっぱりヒデだ。
マヤさんの方はわからないが、ヒデとかなり親しげなところを見ると長い付き合いのようだ。
いつまでも黙っている訳にもいかないので自己紹介をすることにした。
「僕は……アキヒトです。生まれはポポン、歳は19です」
ポポンというのは僕が一番好きだった町だ。
町中に綺麗な花が咲き乱れていて、そこで購入できる装備品も植物をモチーフにしたものが多かった。
見た目は好きだったけど僕のキャラには合わなくて結局購入して倉庫に保管していた。
今なら僕はただの人間だし装備できそうだな。もしもあるならこの目であの美しい町を見てみたいな。
「ねえヒデ、ポポンって花のポポンだよね?あそこって確か今……」
マヤは心当たりがあるようで、花の、と言っているところをみると僕の好きなあの町に間違いなさそうだ。
そういえば確か今の季節は丁度春だったか。毎年春には祭りをやっていたんだった。行きたいなあ。
「ああ、今はもうねえな。先月魔物の襲撃を受けて村は壊滅。生存者も――」
「ちょっとヒデ!あんたってなんでそうなの!」
マヤがヒデの言葉を遮るように言った。
「今……なんて」
「あ……いや、なんでもないのよ。またヒデのやつが馬鹿なこと言ってるだけだから。気にしないで」
「で、でも今、魔物の襲撃を受けて壊滅したって……」
マヤは必死に誤魔化そうとしているがそれももう意味を為さず
「そうだボーヤ。あの美しかったポポンの町はもうねえ。花も、人っ子一人いねえ。魔物にやられちまったのさ。ボーヤは偶然町から離れてたのか知らねえが、運が良かったな」
「ヒデ!いい加減にしないとほんとに怒るわよ!」
「いいやマヤ。これは伝えるべきことだ。ボーヤの生まれた町で起きたことである以上、事実を知っている俺たちには伝える義務があんだ。俺だって辛えよ、あの町好きだったしな。生まれ育った故郷ならなおさらだ。だからこそ伝えなきゃなんねえのさ。残酷かも知れねーが、これは事実なんだ」
「で、でも」
「マヤさんありがとう、でもいいよ。今か後かの違いだけだから。それなら今知れてよかったよ。ヒデさんもありがとう」
僕は実際にポポンで生まれたわけでも育ったわけでもないからぎりぎり抑えられた。
けど、好きだったのは本当なんだ。
悲しいのも本当だ。
僕は魔物を憎いとは思わないけどマヤはそういう気持ちが芽生えないようにとも考えていたのだろう。
昔読んだ本に「復讐は虚しいものだ」とあったのを思い出した。
「んー、で。ボーヤ、これからどーすんだ?」
そうヒデに聞かれたがまだ何もわからない。元の世界への戻り方も、この世界での生き方も。
そうして答えの出せない僕をみたヒデは言った。
「あー、もしボーヤさえ良ければなんだが、俺たちと一緒に旅。しねえか?」
「あ、え、あの、その」
「俺たちは魔物に襲われてる村や町助けて回ってるんだ。もちろん全部とはいかねえが……。ボーヤがその気なら戦闘だって教えるし、戦えなくてもやることはある。今後のアテ、ねえんだろ?」
ヒデはそう言って手を僕の前に突き出してきた。
「握手」のエモートだ。
考えてみればここは僕のハマってたゲームの世界で、目の前にいるのは僕のキャラだ。
自分のやっているゲームの世界に突然送り込まれたらどうする?
一番信頼できるのは誰だ?
いつの間にか僕はヒデの手を強く握り返していた。
「ヒデ、僕も一緒に連れてってくれ!僕はポポンのような町をもう出したくない。魔物から人間を守りたい!誰でもない、この僕の手で!」
……考えるまでもない。
僕はヒデで、ヒデは僕なんだ。
自分を信じなくて誰を信じるっていうんだ!
と一人で盛り上がっているときに、ヒデが言った。
「あー、いや、ちょっと違うな。俺たちはただ人間を救うんじゃない。魔物も救いてえのさ。最終目標はこのアクトのように人と魔物が共存できる誰も傷つかない平和な世界だ!どうだ、ボーヤ?最高だと思わねえか?」
満面の笑みを浮かべたヒデを見て僕は言い表せないものを胸の奥に感じた。
「うん、最高だよ!!」
「ったく、男は単純ね。ヒデは特に」
口ではそう言っているがマヤも同じ思いなのだろう。心なしか嬉しそうだ。
「さー、早速だが明日の朝には出発するからな!今夜はゆっくり休めよ、ボーヤ!」
僕はその後、ヒデに言われたとおり早めに眠ろうとしたが、あまり寝付けなかった。
あのバグ宝箱の正体も本当にゲームの世界なのかも、元の世界に戻れるのかもまだ何一つわからない。
けど目標だけははっきりとしている。
そう、ヒデとマヤとそれから僕とでこの世界を最高に平和な世界にすることだ!
そして僕個人の願い。
ポポンの春祭りに一度で良いから行ってみたい。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
一つの作品を生み出すということはとても難しく、そして大変なことなのです。
どんな作品に対しても「この作品は駄作だ」などという声を聞くのは心苦しい限りです。
私の作品も含め、全ての作品を暖かい目で見守ってやってくださると嬉しいです。
それではまた。