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第二十三話:巨大魔石

「うおぉぉぉっ!やっぱこの感覚はそんなすぐに慣れねえよ!!つーか速すぎる!!」

『うるさいのう。もう少し大人しくできんのか?』

「人は空を飛ぶようにはできてないんだから仕方ないだろう!?」


 今ノインは飛んでいる。ライムエルに頭を掴まれることによって。こんな飛び方をするのは後にも先にもノインだけだろう。


 今ノインはプレデターデーモンプラントがしっかりと倒されたことを確認するため、ライムエルに頼んでその場所まで飛んでいる。


「そういえばかなりのスピードで飛んでるように思えるけど、風が来ないな。ライム、何かやってる?」

『うむ。そのままのスピードで飛ぶと風の影響が凄いからな。魔法を使って相殺しておる』

「やっぱりそうか。ん、なんかでかい木が見えて来たな。あれか?」

『そうじゃ。あれがプレデターデーモンプラントの残骸じゃ』


 移動し始めてから数分くらい経っただろうか。他の木とは違って物凄い大きさの木が一本見えて来た。まだかなりの距離があるとはいえ、他を圧倒する大きさの木は目立って仕方がない。


 ノイン達は間もなくプレデターデーモンプラントの側までやってきた。空から見下ろす形となったので、ライムエルが上空から攻撃したであろう穴がプレデターデーモンプラントの中心に見える。加えて葉や枝は焼けてしまったのもわかった。


「なあ、これ上空からブレスでも放ったのか?」

『うむ。ただそのままブレスで攻撃したら地脈の魔力を吸い上げて再生をし続けるかと思うたから、プレデターデーモンプラントの周囲の土を隆起させてからじゃがな』

「……ああ、あの揺れはそれが原因だったのか」


 二回ほど地揺れを体感したノインだが、その理由がはっきりとした。一回目の揺れはプレデターデーモンプラントの周囲を隆起させ、二回目の揺れはそれを元に戻したから起こったのだろう。ただ先程のライムエルの念話に聞き逃してはいけない単語が出てきた。


「うん?地脈の魔力?」

『ちょうどこの辺りの地中深いところに地脈が通っておってな。そこの魔力を吸い上げていたからここまで急激に成長したのじゃろう』

「地脈って確か大地を巡る魔力の通り道だっけ」

『そうじゃ。その魔力が土を豊かにしたり、清浄な地を作る。そういった地脈が通り、魔力が色濃く現れる場所には強い魔物が多い傾向にあるのう』

「魔力が魔物を強大にしてるのか」

『大地の恵みにも良い影響を与えるがな』

「というか、ライムエルには地脈がどう通ってるのかわかるのか」

『まあのう。お主も魔法を学んでいけば、そのうち見えるじゃろ』


 ノインはライムエルの話を興味深く聞くが、ここに来た目的はプレデターデーモンプラントが本当に倒されたのかの確認だ。ノインは改めてプレデターデーモンプラントをしっかりと観察していく。しかしながら、本当に倒せているかの判断がノインにはできない。


「見た感じ動かないから倒せてるのだとは思うんだけど……。こいつの前身であるプレデタープラントは擬態するんだろ?今のこいつも死んだふりして体力回復に努めているとかって可能性はないか?」

『ないな。お主は魔法使いじゃから魔力が見えるじゃろう?であれば、木全体に魔力が巡っていないのがわかるか?』


 ノインは集中して目の前のプレデターデーモンプラントの魔力の流れを見る。すると確かにライムエルの言う通り、この巨木からは魔力の流れは感知できない。


「なるほど、言われてみれば確かに。……ん?でも何かこのプレデターデーモンプラントの下の方にでっかい魔力があるんだけど」

『うん?ああ、あれは魔石じゃな。再生で魔力を使い切る前に核を潰したから残ったのじゃろう。……そういえばお主ら、来る途中でワシが倒したゴブリン共の魔石を回収していたな。あの魔石も回収して帰るか?』

「おお、魔石は売れるからな!持って帰ろう!」

『ほう、そうなのか。ということは、それは食事に変わるということじゃな。今後は魔物を倒したら持ち帰るようにしなければな』


 ライムエルはそのままゆっくりと降下していく。ノインは降下していく際にプレデターデーモンプラントの幹を観察するが、その辺にある木々と大きく変わらない。もし大きさがそこまで変わらなければ、この木がプレデターデーモンプラントとは気づかないだろう。


 おおよそ地上から5mくらいまで降下しただろうか。ライムエルはそこで降下をやめると、ノインに尋ねる。


『この辺りじゃな。どうする、ワシが取り出すか?』

「うーん、ちょっと試してみる」


 ノインは右手の指先に魔法で風の刃を纏わせると、そのままプレデターデーモンプラントに突き刺す。しかし、ノインの風の刃ではプレデターデーモンプラントに傷をつけることは出来なかった。


「堅いな……。俺の魔法じゃ解体できなさそうだ」


 ノインは普段の解体も魔法で行っていた。というのも、解体用のナイフを買うのもお金が必要だし、手入れも面倒だからだ。もしそんなお金があるのなら、ちょっと高級な食材でも買う。


 だが、魔法で解体などという事ができるのもノインくらいだろう。魔法で解体するのならば、風の刃を精密に操る魔法技術や魔力が必要になってくる。精密に操る魔法技術はまだしも、解体で余分な魔力を使おうなんていう魔法使いはいないだろう。


『いや、もう少し魔力を込めて出力を上げればいけると思うぞ?』

「なるほど…。いやでも、この状態で解体するのもきつい。ライムエルが魔石を取り出せるのならまかせたい」


 ノインはライムエルに頭を掴まれている状態である。確かにそんな状態では解体するのもきついだろう。


『ふむ、わかった。ならばさっさと取り出してしまうとするか』


 ライムエルはそう言うと、直径2mほどの円状の風の刃を作り出し、ゆっくりとプレデターデーモンプラントに当てた。その風の刃に当たったところはどんどん削られていく。しばらくすると、風の刃は大きな空洞とぶつかった。穴が開いた事を確認したライムエルは、自身の真上に魔法で光を灯し、中へと入っていく。


「空洞があるのか?ってなんだあの魔石の大きさは!?」


 空洞というよりは部屋といった方がいいだろうか。大体5m四方くらいの大きさがある。その部屋の真ん中には直径2mくらいの球状の魔石があった。こんな大きさの魔石をノインは見たことがない。


『ここだけでなく、他にも空洞はあるぞ。空洞というよりは、魔石が詰まっていた場所がな。そこにあった魔石は全部自身を再生する魔力として使われたのじゃろう。ここ以外に魔力の反応はないしな』


 その残りというこの魔石だけでも十分な量がある。売ったらいくらになるのか見当もつかない。


「だけどこれ、どうやって持ち帰ればいいんだ?流石にここまでの大きさは想像してなかったぞ」

『お主、何を言っておる?お主は先日、異時空間収納を使えるようになったじゃろうが』

「あっ、そうだった。まだあんまり使ってなかったから忘れてたな」


 ノインは巨大な魔石を異時空間へと収納した。そして再度プレデターデーモンプラントに魔力があるか確認してみるも、魔力を感知することは出来ない。このプレデターデーモンプラントにはもう魔力が一切ないことがわかった。


「よし!これでプレデターデーモンプラントのどこにも魔力はなくなったな。これならプレデターデーモンプラントを倒せたって説明もできるよ。回収した魔石も証拠になるだろうし」

『目的は達成したか。なら戻るか?』

「そうだな。もう他にやることも思い浮かばないし、戻ろうか」

『わかったぞ』


 ライムエルはプレデターデーモンプラントの中から外へ出る。そのまま高度を上げてルワズの町の方へと飛んで行った。


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