表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/36

第二十二話:これからの方針

 ノインとラシュウは必死になって走っていた。フーズベール大森林に突然現れたプレデターデーモンプラントから逃れるために。加えて、もしライムエルが倒せなかった場合に備えるべく、一刻も早くルワズへと戻って情報を伝えたかった。


 ライムエルと別れて数分くらい経っただろうか。二人は急に地面が揺れるのを感じた。


「うおっと」

「ちっ、こんなときに地揺れか」


 ノインは突然地面が揺れたことによりバランスを崩して転んだ。一方のラシュウはノインが転んだのを見て取ると、ノインの側へと駆け寄る。元魔法使いであるノインと元戦士であるラシュウとでは、身体の使い方や経験が違うからであろう。対応力に差が出た。


 大地が揺れた時間は極僅かな時間であった。二人は地揺れが収まったので再び駆けだそうとするも、突然聞こえてくる轟音に身を竦めた。


「おいおい、今度はなんだあ!?」

「今の音はライムが向かった方向から?ってことは、この音はライムとプレデターデーモンプラントの戦闘音?」

「意外と近いのか、それとも物凄い攻撃だからここまで音が聞こえてるのか……。まあいい。俺らは俺らが今できる事をやる。行くぞ」

「はい」


 ラシュウの声により、二人は再び駆けだす。二人が移動を再開してから数分後、今まで鳴り響いていた音が止んだ。その後しばらくするも、再び音がする事はない。


「音が鳴り止んだってことは、戦闘が終わったってことですかね」

「さあな。音だけじゃそれを判断できねえよ。うおっと」


 二人が話をしていると、今度はまた地揺れが起こる。しかし今度は先程よりも揺れは大きくなく、揺れた時間も長くはなかった。加えてノインも転ぶ事はなかったので、速度を落としながらも走り続けた。


「また地揺れ……。もしかしてこれも戦闘で起こってる?」

「そうかもしれんし、そうじゃないかもしれん。考えるのはいいが、あんま余計なことに思考を割くんじゃねえぞ。この辺に魔物はもういないとは思うが、攻撃を仕掛けられたりでもしたら厄介だ」

「すいません」


 二度目の地揺れが収まってしばらくすると、ノインに向かって念話が飛んできた。


『うむ、見つけたぞノインよ。プレデターデーモンプラントは倒したからもう大丈夫じゃ。あと少しすればそちらに着くので待っておくが良い』

「えっ、マジで!?もう!?」

「どうしたノイン?」


 ライムエルからの念話の情報に、驚きの声を上げて立ち止まるノイン。それに合わせてラシュウも足を止める。


「えっと、ライムがプレデターデーモンプラントを倒したみたいです……」

「おいマジかよ!?別れてからそんなに時間経ってねえぞ!?」

「俺に言われても……。ライムエルからそういうのを感じましたので。俺を見つけたみたいなので、もうすぐここに着くとのことなので、待っていてほしいみたいですね」

「うーん、それが本当なら急いで移動する必要もないが……。その情報が本当かどうかが俺には判断できん……。まあ、しばらくここで待機してライムエルが来るのを待ってみるか。来たら本当っぽいしな」


 二人はその場でライムエルを待つことにした。すると、ほとんど間を置かずにライムエルが上空から降りてきて、定位置のノインの頭の上へと着地した。


「おお、本当に戻って来た。ライム、本当にプレデターデーモンプラント倒したの?」

『うむ、倒したぞ。プレデターデーモンプラントの残骸はまだ残っておるが、核は潰したからもう動く事はない。ああ、あと周囲への被害はほぼないから安心しろ』

『良かった……。ありがとうライム』


 ライムエルはノインに念話で答えるとともに頷いた。その動きを見て、ラシュウはライムエルが本当にプレデターデーモンプラントを倒したのだと認識する。


「ノイン、ライムエルは何て言ってるかわかるか?お前の問いに頷いたから、倒したっぽいのはわかるんだが……」

「えーっと、プレデターデーモンプラントは核を潰して倒したそうです。でもその残骸はそのまま残ってるとのことです。加えて周囲への被害はほぼないそうです」

「おお……、それは助かった!!ライムエル感謝するぞ!!ただ、実際に倒したのも確認しておきたいところだな。俺はノインとライムエルを信じるが、お前たちを知らないやつが聞いたら信じないかもしれないからな」

「うーん、それは確かに。どうします?実際に見に行きますか?」

「正確な場所がわかればなあ……。一応食料などの物資は持ってきてはいるが、日帰りのつもりだったしな」

「ライムなら迷わずに行けるとは思いますが。でも、飛んでいくのと徒歩とではスピードも違いますし、どれくらいの時間がかかるかまではわからないかと思います」

『なんじゃ、実際に確認してみたいのか?なら飛んでいけばいいじゃろ?』


 ノインとラシュウが今後どうするかを相談していると、ライムエルからノインに念話が伝わって来た。だが飛んでいくとはいっても、ノイン達に飛ぶことはできない。


「いやいや。飛んで行けって言われても、ライムじゃないんだから俺たちには無理だよ」

『前みたいにワシが頭を掴んで近くまで飛んでいけばいいじゃろ?ここらは木々が深いから人には見られんじゃろうし目立たんぞ』

「……いや、あれ怖いんだって!!あと、あれは一人ずつしか無理だろ!?」


 ライムエルが提案してきたのは、以前ノインとライムエルが出会った際に、洞窟から脱出した方法だった。だがあの方法は掴まれている側からすればたまったものではない。飛行系の魔物にとらわれたエサの気分を味わえるという疑似体験に加え、いつ落ちるかわからないという恐怖と戦わねばならない。あとは爪が頭に刺さって痛い。


 加えて、この場には二人の人間がいるがそれはどうするのだろうか。


「おい、ノイン。また何かライムエルから考えが伝わってきたのか?何か飛んでいくとか言葉が聞こえてきたが」

「ええ、まあはい……。以前、ライムエルが足で俺の頭を掴んで飛んだことがあって……」

「マジで……?」


 流石のラシュウもその言葉には驚く。ただ納得もしていた。この小柄な体格では、背に乗せて飛ぶことはできない。なら、どこか掴んで飛ぶしかないだろうと。


「マジです……。でもライム。二人は運べないだろ?」

『片足ずつで行けなくもないが、ちょいと不安ではあるのう……』

「流石に片足ずつはちょっと……」

 

 まさか片足に一人ずつと言い出すとは思わなかったノイン。仮に片足ずつで飛ぶのなら、二人が抱き合う位に近づかねばライムエルの足の長さでは掴めないだろう。


「ノイン。お前、ライムエルと一緒に飛んで確認して来い」

「はああぁぁぁぁっ!?マジで言ってるんですか、ラシュウさん!!」

「真面目な話、問題ないのかすぐにでも確認しておきたいんだよ。どのみち後から調査隊が送られるだろうが、安全を守る意味でも本当に倒せているのか確認できているかできていないかで話は変わってくる」

「いや、言ってることはわかりますよ?でもラシュウさんはあの体験をしたことないからそんなこと言えるんですよ。というか、ラシュウさんが俺の代わりに行ってくださいよ」

「おいおい、ライムエルをテイムしているのはノイン、お前だろうが。流石に人がテイムしているドラゴンで俺一人行くのは無理だ。ライムエルが何言ってるのかわからねえし」


 ラシュウの言うことは尤もであったし、ノインも納得はできる。だが、ノインとしては出来ればあの体験をもう一度するのは勘弁してほしかった。


「まあ、お前の気持ちもわからんでもないがな。俺も話を聞いて、やべえって思ったからよ」

「でも行けって言うんですね……」

「そりゃ、すぐにでも確認できる方法があるんなら、ギルドマスターとしてはそう言うわな」


 ラシュウはギャナン支部の冒険者ギルドのギルドマスターだ。そしてノインは今現在、そのギャナン支部に所属する冒険者である。よほど理不尽な命令以外、従う必要があるだろう。


「あとは俺の個人的な考えだが、お前さんしっかりとライムエルで飛ぶのを慣れといた方がいいと思うぞ」

「えぇ……、何でですか?」

「飛ぶことに慣れてれば、最悪逃げられるだろ?ライムエルがお前を守りながら戦うのが難しいって判断した場合とか。あと、移動手段とかでも便利だと思うぞ」


 それは確かに、とノインも思った。だが空を飛ぶことに慣れたとしても、ノインの命はライムエルの足次第になってしまうだろう。安心して飛ぶためには、仮に空から落下しても生き延びるための手段が必要だ。わからないことがあるときは、ライムエルに聞けばいい。


『なあライム。仮にだぞ?仮に俺が空から落ちても死なないような術って何かある?』

『術というか魔法で色々あるぞ。浮遊とか重力操作とかな。飛行や転移もあるが、これらの魔法は操作や発動が難しいし、消費する魔力量も多いからのう。まあ、お主なら使えるかもしれんし、いずれ教えてやるとしよう』


 意外にもいろいろとあった。だが、ノインが今使える術ではなかった。できれば今現在使えるものがあればよかったと思うノイン。しかし、そんなノインを安心させるようにライムエルから念話が来る。


『まあ、お主の懸念もわかるが安心せい。万が一にもないとは思うが、もしワシがお主を掴んで空を飛んでいるときに離してしまった場合、ワシが重力操作でもお主にしてやるから大丈夫だ』


 ライムエルの言葉に少し安心するノイン。死ぬ危険性が低いのであれば、プレデターデーモンプラントの残骸を確認しに行ってもいいかもしれない。


「わかりました。ライムエルに頼んで、空を飛んで確認してきますよ」

「よし、頼んだぞ!確認を終えたら、そのままルワズの冒険者ギルドに行ってくれ。そこで落ち合うとしよう」

「ということは、ラシュウさんはここから一人で森の外に向かうんですか?大丈夫ですか?」

「これでも元Aランク冒険者だ。プレデターデーモンプラントのような規格外が急に出てこない限り、フーズベール大森林にいる魔物には一人で対応できる」


 ノインとしても、またここに戻ってきて歩いて戻るよりも、いっそ飛ぶならそのままルワズに戻る方がありがたい。そっちの方がルワズに到着するのも早いだろう。


 もう既にライムエルというドラゴンをテイムしたという情報は知れ渡っているだろうし、今更飛ぶ姿を見られても問題ない。いや、頭を掴まれて飛んでいる姿を見られるのは問題あるかもしれないが。


「了解です。それじゃあプレデターデーモンプラントの残骸をある程度確認したら、そのままルワズに戻りますね」

「ああ。それじゃあまた後でな」


 そう言葉を交わしてラシュウは森を出てルワズに行くべく走り去っていった。


「それじゃあライム、頼む」

『うむ。では行くぞ!』


 ライムエルはノインの頭を爪でしっかりと掴むと羽ばたき始めた。そして先程プレデターデーモンプラントと戦った場所まで飛んでいくのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ