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第二十一話:一方的な戦い

 ライムエルはノインの頭から飛び立つと、フーズベール大森林の中央部の方向へと向かっていた。そちらの方からプレデターデーモンプラントの気配がするからだ。


 加えてライムエルは地脈の流れも観察していた。地脈は大地を巡る魔力の流れである。人の間でも地脈についての理解はあるだろうが、それがどこをどう巡っているのかはわかっていない。また、ライムエルのように見る事など到底不可能だ。


(まったくもって、地脈から魔力を得られる奴は厄介じゃのう。まあ、ワシも地脈から魔力を得て回復していたわけじゃが……。ん、待てよ。もしや……。)


 ライムエルは何かを思い出したかのように顔を北の方角へ向ける。そして注意深く観察したかと思えばため息をついた。


(そういうことか……。ワシが地脈から得ていた分がこちらに流れ込み、地脈の道が分かれたのか。それでプレデタープラントのところに地脈の道が開かれて急成長したと見えるな)


 元々ライムエルがライムエル山と呼ばれるあの場所で眠っていたのは、消費した大量の魔力を回復させるのが目的であった。その方法として、地脈を巡る魔力を自身に取り込んでいた。あの場所の地脈は地表に近いところを流れており、魔力を取り込みやすいためにライムエルはあそこで眠っていたのだ。


 しかし、ライムエルが目を覚まし、あの場所から離れたことで地脈を巡る魔力の流れが変わってしまった。いや、ライムエルがせき止めていた魔力の流れが元に戻ったと言えるのかもしれない。


(やれやれ。偶然の産物とは言え、責任の一端はワシにあるのかもしれんな)


 ライムエルが目を覚まさずにあの場で魔力を取り込み続けていれば、プレデタープラントの元に魔力が届く事も無く、プレデターデーモンプラントは生まれなかったかもしれない。ただ、それはもう言っても仕方の無きことだ。今は生まれてしまったプレデターデーモンプラントを倒す事の方が大切だろう。


こうやってライムエルが移動している今も、急激に地脈の魔力が吸い取られている。今もなお、プレデターデーモンプラントは成長し続けている。


(あまり悠長にはしていられんな)


 ライムエルは移動スピードを上げ、核の場所へと急ぐ。時間をかければかける程、プレデターデーモンプラントを倒すのは容易ではなくなる。


 数分後、周囲の木々よりも数段大きな木をライムエルは捉えた。気配からしてあれがプレデターデーモンプラントであるのがライムエルにはわかる。


(ふむ、今回は樹木型か。まあ、森の中にいるのじゃからそれも当然か。じゃが、あそこまで大きくなるとすぐにわかるな)


 プレデターデーモンプラントは周囲の木々よりも大きい。幅は20mはあり、他の木とはまったく違う。高さも周りの木よりも倍以上は高い。40mほどはあるだろう。


 プレデターデーモンプラントは個体によってとる形態が違うと言われている。周囲の環境に合わせ、近くにある木や花といった植物と同じような姿に擬態するらしいが、本当かどうかはわからない。何故なら、プレデターデーモンプラントの進化前、プレデタープラント自体の発見が稀であり、その生態を詳しく知る者はいないからだ。


 そもそもプレデタープラントという魔物は、ある一定の大きさまで育たなければ無害な植物と変わりない。ある程度の大きさがなければ、周囲の生き物を根で捕まえる事ができないからだ。そのため、自身の周辺にある土に十分な養分や魔力がなければ成長せず、プレデタープラントと気づかれることがなくその生涯を終えることになる。


 ライムエルがプレデターデーモンプラントに近づくにつれ、下方から数本の根がライムエルに向かって伸びてくる。だがライムエルは慌てず、高度を上げる事でそれを回避する。ライムエルの現在の高度は根が届く範囲外なのだろう。根はそれ以上ライムエルには向かってこなかった。


 ライムエルはそのままプレデターデーモンプラントの真上まで移動した。既にライムエルはプレデターデーモンプラントの核の場所は掴んでいる。木の幹の中心部。外から攻撃されて一番届きにくいところにある。


(さて、核の場所はこの真下。そのまま攻撃しても押し切れるとは思うが、その分威力を高めねばならん。魔力の消費量も大きくなる)


 プレデターデーモンプラントが再生するには魔力が必要である。その魔力は地脈から根で吸い上げているために、生半可なプレデターデーモンプラントは延々と再生し続けるだろう。その再生力をも上回る威力の攻撃をし続けて核を破壊すればよいのだが、それでも余計な魔力を消費するのは明らかだった。


(それに、あまりに強力な攻撃だと世界に影響を与えすぎるな……。少し手を加えてから本命の攻撃をするとしようかの)


 ライムエルは無詠唱で魔法を行使した。大きな地鳴りが周辺に響き渡ると共に、プレデターデーモンプラントの長さが大きくなっていく。いや、プレデターデーモンプラントが大きくなっているのではない。プレデターデーモンプラント周辺の土が隆起しているのだ。


 ライムエルはプレデターデーモンプラントの根が地脈の魔力に届かないように土を隆起させた。地に根を張るプレデターデーモンプラントにこれを逃れる術はない。土を隆起させつつ、ライムエルは高度を上げてプレデターデーモンプラントの攻撃範囲外へと移動する。


(さて、この魔力供給が落ちた今なら再生力は落ちるじゃろう。手早く倒してしまうとしようかのう)


 ライムエルはブレスを放つ。そのブレスは轟音と共にプレデターデーモンプラントの頭上へと突き刺さった。プレデターデーモンプラントの葉や枝が次々と焼き払われ、ブレスは易々と幹の部分まで到達する。


 プレデターデーモンプラントはライムエルからの攻撃を受け、危険性をはっきりと理解したのだろう。何本かの根を頭上へと動かし、ライムエルのブレスの盾とした。しかし、それは瞬く間に焼き尽くされる。


 ライムエルの攻撃は止まらない。プレデターデーモンプラントも負けじと焼けた自身の再生を続ける。だがその再生は攻撃に対して間にあっていない。葉の再生はされずにブレスの余波で燃え広がっている。核までの道筋の幹だけを必死に再生しているのだが、それも長くは続かなかった。


 一際大きな音が鳴り響き、大地が震えた。その音を聞いたライムエルは、すぐさまブレスを止める。ライムエルのブレスがプレデターデーモンプラントの幹を貫通し、地中にまで届いたからだ。


(ふむ。終わったか)


 ライムエルのブレスは見事プレデターデーモンプラントの核を破壊した。プレデターデーモンプラントは核を破壊されたことで行動が止まっている。もはや既にただの巨木でしかない。中心部のみブレスで破壊されたため、空洞ができてしまってはいるが。


 プスプスと煙がプレデターデーモンプラントから立ち上る。火も広がっており、このまま何もせずに時が経てば燃え尽きてしまうだろう。


(終わったのはいいが、このままでは森の方にまで火が広がってしまうのう。仕方ない、雨でも降らすか)


 ライムエルは周囲一帯を魔法で雨を降らせた。燃え広がっていた火は勢いを無くし、次第に鎮火していく。


(あとは土も戻しておくとするか。ああ、少しばかりブレスが地中を貫いたな。それも直しておこう)


 さらにライムエルは隆起した土とブレスで貫いた地中を魔法で元に戻す。プレデターデーモンプラントの外見が少し変わったが、地形や周囲にそこまでの影響は外からは見られない。


(それにしても、プレデターデーモンプラントが巨木形態じゃったため、そこまで周りに被害がでなかったのは幸いじゃったな)


 プレデターデーモンプラントが巨木であったために、その大きな幹が壁となって周囲にそこまでの被害を与えなかった。ただ、プレデターデーモンプラントが巨大になる過程で、近くにあった木々は取りこまれたか破壊されたかはしただろうが。


(さて、このプレデターデーモンプラントの残骸をどうするべきかじゃが……。とりあえずこのままにしておいてノインにでも聞くか。このままにしておいてももう悪さはできないしの)


 ライムエルはノイン達と合流すべく、その場から飛び去っていった。


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