第二十話:プレデターデーモンプラント
「おい、ノイン避けろ!!」
無数の触手がノインたちを捕えようと伸び出てくる。ラシュウはそれにすぐに気づいて大剣で防ぎつつその場から下がるが、驚きのあまり呆然としていたノインは判断に遅れてしまう。
「やばっ……!!」
回避が間に合わずに触手がノインに触れようかというそのとき、ノインの目の前で何かに弾かれた。
『気を付けよ。いったん距離をとれ』
ライムエルの反応からしてライムエルが防いだのだろう。ノインは触手から距離をとるようにしてその場から離れた。
「ライム、何か知ってるんだろう!?アレは一体何なんだ!?」
そして先程から念話で意味ありげに呟くライムエルに知っている事を話せとばかりに強く聞く。
『プレデタープラント。それが元々のアレの名じゃ。じゃが、あそこまで育つとなるとプレデターデーモンプラントと呼ばれる個体となる』
「プレデターデーモンプラント?プレデタープラントは聞いた事あるけど、プレデターデーモンプラントなんてのは聞いた事が……」
「はああぁぁぁぁっ!!?プレデターデーモンプラントだとおぉぉ!!?」
聞いた事ない名前だったため反応が薄かったノイン。だが、ノインの言葉を聞いたラシュウは驚きのあまりにノインに詰め寄る。
「おい、ノイン!それマジか!?何であれがプレデターデーモンプラントってわかる!?」
「いや、えっと……。俺はライムの考えていることがなんとなくわかるので、そのライムがあれはプレデターデーモンプラントだと……」
「マジかよ!!なんでったって異名持ちの魔物がこんなとこにいるんだよ!!」
念話のことはぼかしてライムエルと簡単な意思疎通ができることを明かすノイン。本当かどうか問い返すこともなく受け入れるラシュウだが、目の前の光景を見てそれが本当だという事を感じたのだろう。
「くそ!フォレストウルフたちが逃げ出したのはこいつがいたからか!?だがいくらなんでもこんなの想定できるか!!」
「ラシュウさん!何なんですか、プレデターデーモンプラントって!」
「プレデターデーモンプラントは暴食亡国って名の異名を持つ災厄を引き起こすランク外の魔物だ!過去、アレが生まれた国はほぼ例外なく滅んじまったらしい。あの触手で全てを食い尽くされてな……」
ラシュウはノインを伴い、少しずつ触手から距離をとりながら説明する。
プレデターデーモンプラントの前身であるプレデタープラントは、生まれたばかりのころは無害な草木に擬態し、地に根を張り土の中から養分を吸って成長していく。
ただし、ある一定の大きさまで成長を遂げると、触手を展開して範囲内の生き物を絡めとり、その触手から生き物を養分として吸収して成長するようになる。
地に根を張っているためその場から動くことは無いが、成長していくにつれて触手も大きく、そして長くなっていく。ただ、普通はある一定の大きさで生涯を終える。
何故なら、大きくなった身体を維持するので精一杯になるからだ。だが稀に、それ以上大きくなる個体が出てくる。それが暴食亡国とまで呼ばれるプレデターデーモンプラント。過去の記録では人の手によって討伐ができたことはないという。
プレデターデーモンプラントはいくら攻撃を受けたとしても、核が無事ならば再生してしまうからだ。再生スピードを上回る攻撃を与え、核を破壊するのがプレデターデーモンプラントの討伐方法だと考えられている。しかし、人の手でそれを成すことは過去できなかった。そこまでの攻撃を与え続けられる者たちがいなかったのだ。
プレデターデーモンプラントは放置し続けると際限なく大きくなり、周囲の生き物を食らい続け、さらには大地の養分も吸収し続けていく。大きくならないうちに討伐しないと手に負えなくなり、周囲一帯の草木すらなくなるという。
そしてプレデターデーモンプラントの触手が届く範囲は全て砂漠と化し、最終的には吸収する養分がなくなって自身の身体を維持できなくなって自壊する。それが暴食亡国プレデターデーモンプラントだ。
「ほぼ例外なく滅んだって……。え!?アレどうするんですか!?」
「最後にプレデターデーモンプラントが出現したのは数百年前って話だ!討伐方法としてはプレデタープラントのように中心部にある核を破壊すればいいと思うが……。核がどこにあるのかもわからんし、こいつの大きさも想像できん!!ひとまず早く状況を外に伝える!!俺ら二人だけじゃどうしようもできんからな!!」
そういってラシュウはその場から撤退しようとする。ラシュウの言う通り、このプレデターデーモンプラントとやらは二人では手に負えない怪物だろう。しかしノインは動かない。ライムエルの念話によって止められたからだ。
『駄目じゃ。アレは根を使って地脈を流れる魔力を吸い上げ、急激に大きくなっているようじゃ。あと数時間もすれば再生速度がワシの攻撃をも上回るほどの化け物になりかねん。攻撃し続ければいずれは倒せるじゃろうが……、この地は魔力が枯れた不毛の地となろう』
「なっ……!?いや待ってくれ。そう言うってことは、今ならまだ何とかできるってのか?」
『ワシならできる。ただし、アレの核がある付近の木々は焼けてなくなるじゃろうし、地形も変わる可能性がある。それでもいいなら……。いや、それでもやらねばそれ以上の被害がでよう。あれはそういう魔物じゃ』
「……」
ノインには想像がつかなかった。今眼前に見えている根ですら周りに見える木の幹より太い。その本体はどれほどの規模なのだろうか。本当にライムエルにまかせて倒す事ができるのだろうか。
「おい、ノイン!話の流れからするとそのドラゴン、ライムエルと言ったな。そいつなら何とかできるのか!?」
「ええっと、ライムなら今ならまだ何とかできるそうです。逆に今何とかしないともう手に負えなくなるそうです」
「なにぃぃっ!!?何とかできるのか!?つか、今何とかしないと手に負えないってことは、これ以上成長したらドラゴンでも止められないってことか……」
ノインからの情報に撤退しようとしていたラシュウも足を止める。そんなラシュウにノインは追加の懸念事項を伝える。
「ただ、核近辺の木々は焼ける上に地形も変わるそうですが……」
「それですむなら安いくらいだ!が、その攻撃範囲内に人はいるかどうかわかるか?いるなら避難させなきゃいかん」
「ライム、範囲内に人がいるかわかるか?」
『攻撃範囲は核付近に絞るから大丈夫だろうて。仮にいたとしても、残念じゃが既にあやつに食らわれておろうな……』
「……いないそうです」
「そうか!なら頼む!!あの化け物を倒してくれ!!森への被害は考えなくていい!」
森への被害も問題ないとラシュウから許可をもらう。ノインは最後の確認として、ライムエルと声ではなく念話で会話をすることにした。
『ライム、本当にお前なら倒せるのか?』
『まあ、不安なのもわかるがな。だがこう考えればどうじゃ?ワシの攻撃で倒せれば儲けものじゃとな。ワシが倒せない場合、結局何もしない場合と変わらんから攻撃してみるのもいいのではないかとな』
ライムエルが言う通り、確かに攻撃が通用するか試してみるだけでもいいかもしれないとノインは思った。それで倒せればそれでいい。ライムエルは空も飛べるし、容易にやられることもないだろう。
「わかった。ライム、頼んだぞ。俺たちは邪魔にならないようできるだけ森の外の方へ向かうってのでいいか?」
『うむ。ワシは空から核のある場所めがけて攻撃を行う。あの大きさならば核のある中心部付近だけ焼き尽くせばよいからここいらにまで被害は来ないと思うが……。まあ、熱波が来る可能性もあるだろうし離れておいた方がよかろうな。では、またあとでな』
ライムエルは念話でノインにそう伝えると、ノインの頭から飛び立った。
「ラシュウさん!ここから離れましょう!!」
「わかった!!」
二人はライムエルの攻撃に巻き込まれないよう、出来るだけ早く、遠くへと移動するのだった。




