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ドリームウォーカーズ  作者: 史郎アンリアル
ドリームウォーカーズ
7/43

帽子の男、カチューシャの少女

 忘れっぽい作者あるある。書くだけ書いて投稿するの忘れてました。続きは明日投稿します。

 彼は、ごく普通の少年だった。

 特徴があるとすれば彼は好奇心が旺盛で、よく近所の森に秘密基地なんかを作っていたことくらいだろうか。

 そんな少年はある日、年老いた旅人から一粒の「豆」を受け取る。

 「豆」には様々な言い伝えがあった。雲よりも高いところまで成長するとか、そこでは天空の巨人が宝物を守っているとか。

 そんな信じがたい迷信を信じて、彼は「豆」を家の庭に植える。

 それが「ジャック」の冒険の始まりとなった。


◆◆◆


 白雪姫の国を出てから、何日経っただろうか。

 ジルの記憶が正しければ、すでに四日は過ぎていた。アリスもグレースも、さすがに野宿生活に慣れてきた頃だ。

 そのうち、三人には役割分担以外にもう一つ、特殊なルールが加えられた。それは「できるだけこの世界を操作しない」こと。

 自分たちの国と白雪姫の国以外に国がないのでは、と考えたジルが発案したものだ。いや、さすがにそんなはずはないのだが、そのうち面倒になってきて、その場に国を一つ作ってしまうかもしれないからだ。それに夢だからと言って何でも出したり作ったりしたら、荷物を持ってきた意味がなくなるし、何よりそれでは野宿がつまらなくなるという彼の個人的な願望も含まれていた。

 そのルールの下、ジルとアリスは自らの力を、グレースはマッチを使わないようにして、ごく普通の旅人と同じごく普通の野宿を繰り返していた。

「え~、また塩焼きー?」

 しかし、その途中でほとんど同じ物しか食べていないアリスが、ついに音を上げた。

「しょうがねぇだろ。これが一番安定して国を見つける道のりなんだからよ」

「あたしは塩焼き好きだからいいけどねー」

 太陽と魚を焼く焚き火に挟まれて、グレースが無邪気に笑う。

 ジルの計画は決して間違ってはいない。もとより人類は水のある場所に生活圏を構える生き物なのだ。ならば川沿いに進めば自然と国は見つかるはずだし、釣った魚を食べれば、食費や食料には困らなくなる。だが調味料を塩しか持っていなかったとはいえ、塩焼きのみというあまりにも少ない魚料理のバリエーションに、さすがのジルも自分を責めたくなった。それが長く続くことを考えると、さすがに不満が漏れ始めても不思議ではなかった。

 どこまでも続くような森の中。太陽が真上まで昇ったタイミングを見計らって、三人は魚にかじりついていた。

「「ごちそうさまっ!」」

「はい、ごちそうさまでした」

 元気よく手を合わせる二人を、アリスは理解できなかった。少なくともグレースは一般人並みの生活をしてきたはずなのに、どうしてこの環境下で彼女はあの笑顔を維持できるのだろうと。だが二人が荷物を片付けて立ち上がると、その悩みは中断された。

「よし、行こう。今度こそ次の国を見つけるぞ」

「おー!」

 ここまでグレースの笑顔に、アリスは少なからず支えられてきた。ならそれに対する疑問など無駄なことだ。その笑顔を失わないためにも、アリスは再び立ち上がった。

「今夜こそはベッドで寝るわよ!」

 またジルとグレースが笑った。

 アリスは歩き出した二人の数歩後ろで「まあ、このままでも悪くないかもね」と思ったが、リュックから顔を出すダイナを見て、覚悟を決めた。そして走って二人を追った。


 歩き始めてから一時間くらい経っただろうか。森を出た一行はついに見つけた。

「おい、あれって……」

「まさか、ま……」

 三人がそれに気付いたのはほぼ同時だった。

「町だ!」

 彼らの足を止めた崖。その眼下には地平線まで続きそうなほど巨大な町が広がっていた。

 ようやく野宿生活から抜け出せる。アリスの目は希望に輝いていた。しかし大まかに見積もっても崖の高さは六メートル以上。これが急な坂道だとしても、飛び降りるには危険な高さだった。

「お前ら、とりあえず落ち着け。ここは遠回りして……」

 ジルがそのことを二人に伝えようとした時には、すでにその姿は消えていた。

「あいつら、まさかっ!」

 彼はすかさず崖に向かった。


  ◆◆◆


 商店街の最奥部。高い壁を背にした場所で、二人の青年がショーを開いていた。

「さぁこの手品師ジャックのスペシャルショー。いよいよ最後となってしまいましたが、この盛大なマジックは、アシスタントのバター君に手伝ってもらいましょう」

 背の低い方の金髪の青年ジャックが、隣の背の高いバターから、大きなシルクハットを受け取る。

「最後に皆様にお見せするのはマジックの代表格。ハトの召喚です。ですが皆様、このジャックがそれをたった一羽で済ませるとお思いですか? なんと今回は、この帽子から何十羽と……」

 しかしその時、ジャックの頭上からぱらぱらと砂が落ちてくるのをバターは見た。そしてその出所を見上げた時。彼は一歩横に引いて叫んだ。

「親方! 空から女の子が!」

「ふぁっ?」

「いぃやっほぉーーーい!」

 ジャックが見上げた時にはすでに、その顔の真上に二人の少女が、まさにその顔を踏みつぶしそうな勢いで滑り降りてきた。しかもとんでもない笑顔で。

 横に避けたバターはともかく、ジャックは二人の下敷きとなってしまった。そのおかげで二人の少女は無事だったのだが、ジャックが何が起こったのか確認しようとした時、その上からさらに男が一人落ちてきたのだ。

「……とまあ、意外でしょう? 偉大なマジックにはサプライズがつきもの。正解はハトではなく、まさかの人を召喚するマジックでしたー。ハイ拍手ー」

 明らかに無事ではないジャックと、その様子に呆然とした観客をよそに、バターはわざとらしく明るく振舞った。するとたちまち観客からは拍手と歓声が沸き上がり、ジャックが地面に落とした空のシルクハットに大量のコインが飛び込んできた。


「いったい何なんだお前たちは!」

 催し物の準備用に閉じられた黒幕の中で、ジャックは空から降ってきた三人に怒鳴った。

「まあまあ、儲かったんだからいいじゃないか親方」

「それと君はその呼び方をやめてくれよな!」

 隣でなだめるバターにさえ、ジャックは噛みつくように怒りをぶつける。だか確かに、彼のシルクハットにはこれまでにないほど大量のコインと、いくつか高価そうな宝石まで入っていた。

「いやホントマジですみませんでした。こいつらが勝手に飛び降りたもので……」

 ジルが頭を下げると同時に、アリスの頭を押さえつけるように無理やり下げる。グレースも申し訳なさそうに目を伏せていたが、アリスはカチューシャが落ちそうになるのを慌てて押さえていた。

 見知らぬ旅人にショーを邪魔されて、しかも結果として儲かってしまったことに納得のいかないジャックは、その様子をまっすぐ見ることができなかった。

 しかし、バターだけはアリスに、正確には彼女のカチューシャを付けた姿に見覚えがあった。

「君、もしかしてアリスじゃないか?」

「えっ?」

 驚いて手を放したジルと同時に、アリスが起き上がってバターを見る。

「ほら、覚えてないの? 僕だよ僕」

 そう言いながら、バターは手元の袋から濃い緑色の燕尾服を取り出して、それを着て見せた。

 アリスはその姿を見て記憶が戻ると同時に、だんだんと顔色が悪くなっていくのを感じた。右目が隠れそうなほど無造作に伸びたクリーム色の髪、さらに伸びたもう片方を三つ編みに結った先の緑のリボン、細めていてもまだ大きく見える青い瞳、ジルと同じくらいの身長にもかかわらずその中性的な印象。そして何より、ジャックの持つシルクハット……。そのすべてが、アリスの曖昧な記憶を完全に復元させた。

 しかし、その名前だけは思い出せず、ただなんとなく嫌な記憶を頼りにアリスはジルの側についた。

「ジル、グレースを守ってて。よく覚えてないけどこの男は危険よ」

「お、おう」

 ジルにとってバターはそれほど妙な感じには見えなかったのだが、とりあえずグレースを守るように彼女の前に立った。

「いやだなぁ、僕が何かしたってのかい? あっ、もしかして君の鎧を作った時に徹底的に寸法を測ったの、まだ根に持ってた?」

 ひらひらと手を振って笑う様子を見て、ようやくアリスは思い出した。

「根に持つに決まってるでしょ! あんなの最ッ低のボディタッチよ!」

 その様子を想像してジルとジャックは顔を赤らめたが、バターは平気な様子で話を続ける。

「わかってないなぁ。鎧っていうのは男性用の量産型ならともかく、女性は体にフィットした物じゃないと素材が活きないからね。より正確な情報が必要だったんだよ。そもそも僕は仕事柄……」

「もうやめないか! そういう話はよそでやってくれ!」

 恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にするアリスとそれを平気で受け入れるバターに、ようやくジャックが割って入った。

「うーん、そうだね。ここで立ち話ってのもなんだし、続きは僕の部屋でしよう。この近くに宿を借りてるんだ。じゃあそういうことだからジャック、もう今日はこれが最後の公演だよね後片付けは頼んだよ」

 バターは一人で勝手に話を進め、アシスタントという立場を忘れたように自分の荷物だけを持って立ち去ろうとした。

「おっと、忘れるところだった」

 彼はふと思い出してジャックのシルクハットから、自分のやや赤いシルクハットにコインを半分入れると、あらためて黒幕を開けて立ち去った。

 ジルとグレースが気まずそうに、アリスにいたっては不機嫌丸出しの顔で彼について行くのを、ジャックは何もできずに見送った。

「何だったんだ。あの人たちは……」

 だが、謎の旅人という共通点からか、彼は家の庭に植えた豆のことを思い出す。

「あれ、どこまで育ったかなぁ……」

 彼もまた、自分の荷物をまとめて帰路についた。

「そろそろ見えるといいけどな」

 その途中、彼はふとつぶやいた。

「世界の出口ってやつ」


  ◆◆◆


「ベッドだーーっ!」

 バターが扉を開けて部屋の中が見えた瞬間、アリスはほかの三人を追い越して、一人分しか用意されていないベッドに全身で飛び込んだ。待ちに待ったベッドを前にして、彼女は我慢できるはずがなかった。

 しばらくベッドに転がり続けて降りようとしないアリスを見て、バターは恥ずかしげに顔を隠してつぶやいた。

「気を付けてね。そこ、裁縫針とか落ちてるかもしれないから」

 その一言でようやくアリスが我に返った。

「そ、そうよね。こんな変態野郎のベッドがまともなはずないわよね」

 開放感のあまり口から垂れそうになった唾液を手の甲で抑える様子を見て、ジルはあきれた。

「おいおい、二人で勝手に進めるなよ。第一お前は誰なんだよ」

 その鋭い目線が、自分よりわずかに身長の高いバターに刺さる。

「そうだね。まずはそこから始めようか。お茶とお菓子くらいならすぐに用意できるからね」


 バターの準備は完璧だった。ベッド以外すべての物が収納されていた部屋には、瞬く間にテーブルと四人分の椅子が置かれ、その上には人数分のカップと適切な量のクッキー、そして持ち主のセンスを感じさせるおしゃれなティーポットが並べられた。まるであらかじめ客が来ると予想していたかのようなその手早さに、ジルは思わず唾を飲んだ。

「さ、どうぞ座って」

 バターが椅子を引くと、三人の客はそれぞれ適当な場所に座った。ただしアリスだけは、バターが座るであろう奥の席から最も遠い位置(どの椅子も大して変わらないが)を選んで座った。

 そして最後にバターが座った時、その顔は長い髪のせいか、暗く見えた。外からは左目しか見えない、髪の奥の大きい瞳がジルを刺すように光る。

「ところで、君達はアリスと同じ世界の人間なのかな?」

 クッキーを取ろうとしたジルの手が止まった。

 アリスと同じ世界。つまり現実世界からきて、今自分は夢を見ている状況にある人間か否かという質問だろう。バターの真剣な眼差しからは、言葉にせずともその情報が読み取れる。彼が軽い性格なのだと思い込んでいたジルは、少し考えてから真剣な答えを返した。

「ああそうだ。俺も、このグレースもな」

 その言葉に反応してバターの目線がグレースに向くと、彼女はおびえながらもこくりとうなずいた。

「……ふぅ」

 それを確認してから、バターは立ち上がった。その顔には先ほどまでの威圧感ともとれる暗さはなく、外にいた時と同じ軽い笑顔が戻っていた。

「いやぁ良かった良かった。てっきり君たちが勝手にアリスを連れだしたのかと思ったよ。うん、彼女に友達ができるのは僕にとってもうれしいからね」

 そう言いながら彼はティーポットを取り、テーブルを一周するようにして順番に紅茶を注いだ。そして最後に自分のカップに注いだ後、大げさに両手を広げて言う。

「さあ、飲んでみて。高い物ではない普通の茶葉だけど、僕のお気に入りのブレンドなんだ」

 先ほどまでの様子からいまいちバターを信用できないジルが恐る恐る紅茶を口に近づけると、最初に湯気と共に爽やかな香りが鼻を通り抜けた。それに驚きながら紅茶を口に入れた時、ジルは感動した。子供でも美味いと言いそうなほどよい甘さの奥に、洗練されたわずかな酸味と苦みを伴っている。彼はすぐに白の女王と飲んだ最高級の物を思い出した。高い物ではないなどと冗談を。バターの淹れたそれは、今まで飲んだすべての飲み物を凌駕した最高の味を持っていた。

「お前、まさかこれ本当に普通のやつか?」

 ジルが我慢できず、その疑問を投げつけるように言うと、バターは何も変わったことはせず、ただにこりと笑った。

「本当さ。この商店街で買った茶葉に、そこらへんのハーブを混ぜたものだよ。この町は湧き水も豊富だからね。いい紅茶ができるんだ」

 それでも疑いを晴らしきれないジルは他の二人を見た。しかし、いややはりと言うべきか。グレースは一口飲んだだけで驚きの表情のままカップの中身を見つめ、アリスでさえも悔しそうにしながらだが飲み干していた。

「少なくとも僕は君たちの敵ではない。これでその気持ちが伝わってくれたら嬉しいんだけどね」

 さすがにここまで完璧な物を受け取って、それでも疑う者はまずいないだろう。バターは三人の心を、たった一杯の紅茶で掴んでみせたのだ。

「ではあらためて自己紹介を。僕はハッタ。この国ではバターで通してある。アリスや君たちと同じ、現実世界の住人さ」

 それを聞くと、ジルは何かに降参したように目を閉じて手を上げた。

「……ジルだ。疑って悪かったな」

「いやいや。あれくらい疑われてむしろありがたかったよ。なんせ久しぶりに人に出したからね」

 バター、もといハッタは満足げに笑顔を見せた。

 ここでようやくアリスが一息ついてから口を開く。

「で、どうして偽名を使ってまで大道芸の手伝いなんてしてたの?」

 するとハッタの笑顔が少し苦笑いに変わった。

「あー、それについては話すと長くなるんだけどね。彼らにもわかるように初めから話そうか」

 ハッタはあらたまったようにコホンと咳をしてから話し始めた。

「僕は元の世界で帽子職人をしていたんだ。家族で守ってきた店だったんだけどね。さすがにいまどき帽子のオーダーメイドなんかで売れるわけがなくて最近は不況なんだ。そんな時、僕はこの世界に来た。ここは僕にとってとても都合のいい場所だった。電気は開発されてないし、服の技術も元の世界ほど発達していない。だから僕はここで一からやり直そうと思ったんだ。帽子だけじゃなくて、範囲の広い洋服屋としてね」

 ハッタ曰く高級な帽子を作る技術は、他のどの衣装を作ることにも通ずるものらしい。詳しい話はわからないが、少なくとも彼のそれに対するこだわりの強さだけは、確かに三人に伝わっていた。

「その時、一番高価な注文が白の女王から来たんだ。それがアリスの鎧作りだった。僕は金属は扱ってないから、型と下地の革部分だけ担当したんだ。さっきも言ったけどその時には彼女に恥ずかしい思いをさせてしまった。だからそのお詫びに作ったのがそのカチューシャさ」

 アリス以外の目線が、ウサギの耳のようなカチューシャに集まった。アリスはまたも恥ずかしげに顔を隠した。

「気に入ってくれたようで何よりだよ。君は僕の印象よりも派手な物を好まないタイプだからね。ちょっと不安だったんだ」

 ハッタは満足げにカチューシャを見るが、アリスはその顔を見ようとしなかった。

「それで、それを彼女に渡すことだけはできたんだけどね。その後彼女は第三の女王として旧赤の領地に行っちゃって、僕が知らないうちにスパイの男と国外逃亡したなんて聞いたからね。もう彼女に会えないんじゃないかと思ってゾッとしたよ。もしかしたら僕のことなんて忘れたんじゃないかってね。だから女王に内緒でこっそり国を抜け出して、君を探していたんだ」

「私としてはできれば二度と会いたくなかったんだけどね」

 話が一区切りつきそうなタイミングで、アリスがそれを遮るように言った。

「ははっ、まだ許されてなかったんだね……」

 それを見たグレースが、二人の間に割って入る。

「ちょっとアリス。ハッタさんもこう言ってるんだから、その話は許してあげなよ」

「ごめん、アリス。次はあんな風にはしないから」

 しかし、ハッタの謝罪がアリスの怒りの火に油を注ぐことになってしまう。

「次って何よ! もういいわ。あなたはこの町で偽物の名前で働いてればいいわ。私はもう行く」

 アリスは立ち上がり、カチューシャを投げ捨てて部屋を出た。グレースがそれを拾って彼女を追うと、一連の様子に気付いたのか、ダイナもリュックから出て、二人について行こうとした。

 しかし、ハッタはその銀色の美しい毛並みに覆われた体を優しく抱き上げで部屋にとどめた。

 ジルも慌ててアリスを追いかけようとしたが、ふとハッタを見た時にその目が「まあ座りなよ」と言っているような気がして、その場から動けなかった。


「……こんな形でだけど、やっと二人になれたね」

 正確には二人と一匹の部屋で、ハッタはダイナの背中を撫でながながらつぶやいた。

「悪いが、俺はお前らの問題には関われねぇぜ。それについては二人で何とかしな」

 ジルの態度は冷たかったが、ここまでの話を聞いた限りでは彼は、アリスを勝手に連れ出した誘拐容疑者でしかない。しかも白の女王公認で旅に出たのだ。ハッタの問題に彼が関わっている可能性はあるはずがなかった。

「そういうことじゃないんだ」

 ハッタの目が、先ほどの質問の時と同じように鋭く光った。

「君は彼女の、アリスの何なんだ?」

 ジルはその質問にすぐに答えることはできなかった。

 彼は元々アリスの護衛としてこの旅に同行したのだ。本来この旅の主役はアリスであり、ジルはおまけでしかない。なのに彼はその少女に護衛以上の感情を持ち始めていた。これは本来の目的とは違うことであり、同時にハッタの質問に答えられない原因となった。

 その悩みを、ハッタは見逃さなかった。

「僕は、彼女を将来の結婚相手として考えている」

 その言葉は、嘘ではない。

 今回ちょっとだけですが、グルメリポートっぽいものに挑戦してみました。実は紅茶にはさほど詳しくないという。でもこれ書くために急いで三種類飲み比べて、味の変化とかメモってたりはしてましたよ。ティータイムは紅茶よりコーヒー派の史郎アンリアルです。

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