番外編 もう一つの合鍵をキミに 1
ちょっとデータを書き換えて番外編です。
短期集中連載というか、もう書きあげているので見直ししてupしていくので、短期集中更新予定。
「自分で歩けるよっ!!」
廊下をすれ違う生徒達が、私ともう一人の生徒に視線を集中させている。
それも当然。
だって私は日下部君によって米俵のように担がれているんだから。
も~、なんなんだろう。
せっかく涼から貰ったクッキー食べようと思ってたのに~っ!!
私は諦めを含み、右手に握られているものに視線を向けた。
それは水色と白のボーダーのリボンだ。
今日は私の誕生日。
そのため、友達から誕生日プレゼントを貰った。
その中の一つに、涼から貰ったチョコチップクッキーがある。
この右手に握られているこれが、そのラッピングされていたリボン。
涼ってクッキー作るのが、すっごく上手なの。
特にチョコチップクッキー!!
「プレゼント何が欲しい?」って聞かれた時にすぐに「チョコチップクッキー!!」って毎年リクエストするぐらい。
だから食べるのすっごく楽しみにしていたの。
それなのに、さっそく食べようとラッピングを解いた瞬間に、突然現れた乱入者のせいで中途半端に中断させられ、肝心のクッキーは机の上に放置されたまま。
乱入者の日下部君は、私の意思など関係なく、私を教室から連れだしたのだ。
もうそっからはあっと言う間。
私は担がれて今に至る。
「ねぇ、降ろしてってば!!」
「うるせぇな。耳元でガタガタ騒ぐんじゃねぇよ!!」
……え。なんで怒られなきゃならないの?
なぜか私は怒鳴られてしまい、口を結んだ。
だって日下部君見た目もそうだけど、声的に怒ると迫力あるんだもん。
*
*
何、この空気?
教室のドアから中を覗くと、みんなの様子が違っていた。
他の教室からは朝の登校時間ともあってか、賑やかな笑い声が聞こえてくる。
それなのに、この教室はしんと静まり返っている。
でもそんな様子の原因も、今ここにきたばかりだけど、すぐにわかった。
それは窓側の一番後ろの席に座っている人。
頬づえをつき窓から校舎の方を見ているため顔は見えないけど、醸し出している雰囲気と周りの生徒の視線などから原因は明らかに海だという事がわかる。
「海、機嫌悪いの?」
「わかってるんだったら、とっとと行け」
「日下部君の方が海と付き合い長いんだから、海の機嫌なおるような事知っていると思うよ……?」
「だからこうしてお前呼んで機嫌とろうとしているんだろ。ほら、早く行け。あの王子の頭に花咲かせてこの教室を平穏にしろ」
「えっ!?急にそんな事言われて……――って、ちょっと!!」
とんと日下部君に背中を押され、私は教室内に足を踏み入れてしまう。
いいのかなぁ?他クラスに勝手に入って。
そう思いながらも、私の足は進んでいく。
「海」
海の傍に行きそう名前を呼ぶと、海はすぐにはじかれた様に私の方を見た。
最初大きく目を見開いてたんだけど、やがて少し目じりを下げ始めた。
あっ、少し戻ったかも。
海の表情がさっきより、緩んだように感じたのでそう思った。
海は私の名を呼ぶとトントンと自分の太ももを右手で軽く叩き、腕を広げて自分の所に誘う。
えっ、もしかして座れって事っ!?
ここ教室なんですけど!?
ぶんぶんと横に首を振ってたんだけど、「逢月さん、座ってやってくれよ!!」と教室中から声が私に集中する。
各自言い回しは違うが、みんなクラスマッチの時並みに団結力を誇っていた。
それらの懇願は、私に拒否権を与えてぐれないぐらいのもの。
何、このクラス……
「し、失礼します」
完全に私に反する空気が流れている。
そんな中逆らえるはずがない私は、大人しく言われるがまま海の膝の上に横向きに座った。
すると落ちないように海の腕が私の体に絡まり引き寄せられ、お互いの体が密接してしまう。
ちょっと!!朝から!?しかも、ここ教室っ!!
「もういい!?もういい!?」
あまりの恥ずかしさに、今すぐ自分の教室へ帰りたい。
だってそうでしょ?クラス全員の視線が集中してるんだよ!?
だが、首を振り拘束を全然といてくれない海にそれが出来ない。
周りも周りで「良かったな、在原」って言ってるし。
ちょっとおかしくない?この教室。