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合鍵  作者: 歌月碧威
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番外編 甘く 優しく 蕩けるように 1 sideみく

これもブログからの転載。

最終章の十五・十六話でみくが、ちらっと話してた内容です。

みくが海の好きな人を知ったきっかけ。

暑い。暑すぎる。

日差しを手で遮りながら空を見上げると、雲一つない晴天だった。

さっき校舎を出たばかりなのに、もう制服のワイシャツが肌に張り付き、気持ち悪い。


こんな暑い中、アタシが外に行く理由はただ一つ。

アイスだ。

アイスが無性に食いたくなって、今から学校を抜けて買いに行って来るのだ。

この中庭を抜けて、東棟に向かう。

そこから一番奥の空き教室に向かい、裏門を出ればコンビニはすぐそこだ。



あ~、でも自販機のジュースで我慢しときゃよかったかも。

あまりの暑さに外に出た事を後悔した時、ふいに視界に人の姿をとらえ足を止める。


あれは――


アタシの視線は中庭の中央にある大きな桜の木の下にいる人物に釘づけになる。

そこには女子生徒をお姫様抱っこしている男子生徒の姿があった。


「あ。あれ、在原海じゃん」

そいつはうちの学校で千里に並ぶ人気を誇っている人物で、家は会社経営、容姿端麗、頭脳明晰――他人が欲しいものを全部持っているようなやつ。

その為他の連中から王子だなんだって騒がれているけど、アタシにはどうでもいい。っうか、むしろ気に食わない。

なぜなら、新聞部主催の人気投票で一位を取っているから。

大体、千里を差し置いてアイツが一位ってなんなのよ!!


それに――

時折妙な視線感じるんだよね。

いつもじゃないんだけどさ……


どれどれ、相手の女の顔でも拝んで行くか。

新聞部に提供してスクープになれば、人気投票ランキング落ちるかもしれないし。

そんな軽い気持ちで相手の女を確認するために、相手の女に視線を移す。


――え。


「……桜音」

呟くアタシの声が風にかき消されてしまう。

たしかに中庭に行くって言ってた。

けど、なんで?

この二人の関係って一体なに?


わけがわからず茫然と立ち尽くしていると、「佐々木」と呼ばれ我に返った。

呼ばれた方を見ると、在原海がこっちを見ていた。


「そこでぼーっと突っ立ってるのなら、悪いが飲み物買ってきてくれないか?できれば、スポーツドリンク」

「はぁ?」

ただでさえ理解出来ない状態なのに、なぜこいつにパシリにされなきゃならないんだ!?

っうか、ぼーっと突っ立っているのならって何だよ。

なんか、アタシが暇そうじゃんか。


「俺のズボンのポケットから、財布取ってそれで買ってきて欲しい。佐々木の物も買ってきていいから」

「ふざけんな。なんで、アタシがあんたのパシリにされなきゃなんないのよ?」

「俺の分じゃない。桜音の分だ」

「は?桜音?」

ますます理解不能。


「あぁ。大分汗かいてるから、起きた時きっと喉乾いていると思うから」

たしかに、桜音の額や鼻には大粒の汗を見る事が出来た。

「まさか桜音、この炎天下の中寝てたんじゃないでしょうね!?」

「……寝てた」

在原の返答に思わず頭を抱えた。

きっと桜音の事だ。

日向ぼっこしてたら睡魔が襲ってきてそのまま寝ちゃったんだろう。

ほんとに桜音は一度寝ると起きないんだから。


あ~。外で寝るなとか注意しておけばよかったかも。

この暑さの中、外で寝てたら熱射病にでもなっちゃうじゃんか。


「この炎天下の中寝てて、熱中症にでもなって脱水症状でも起きたら大変だ。だから、写真部の部室で寝かせる事にする。俺が運んでいる間、悪いが佐々木、飲み物を買ってきてくれないか?」

「……わかった」

桜音の分じゃしょうがない。

アタシの分も買っていいって言うし。


アタシは在原から財布を受け取ると、コンビニへと向かった。



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