表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
合鍵  作者: 歌月碧威
90/112

桜音風邪を引く2 side海

外の暑さに比べれば、教室の中はクーラーがかかっていて快適だ。

昼休みも終わり、腹も膨れたところで眠気もやってくる。

その上授業があいつの苦手な英語とくれば、安眠できる要素はそろっていた。


寝るならそんな堂々と寝るなよ……

俺は若林が読み上げる英文を聞きながら、斜め右の方向を見ている。

若林は俺らの英語の担任で、桜音のクラス担任だ。

髭を生やし、体系はかなりの大型。

桜音は「クマさんみたいで可愛い」って言っている。

何処をどう見たら、クマに見えるんだろうか。

ただ、ちょっと桜音に可愛いって言われる若林が羨ましい。


あいつは、もう少しバレない寝方は出来ないのか。

そいつは机にうつ伏せになり、読み上げられている英文を子守唄代わりにして寝ていた。

西野はもっとうまく寝ているぞ。

教室のドア側の一番前席の西野は、教科書を見ている振りして寝ている。


「ではこのページの訳を各自やってあると思うので――在原」

指されたのでノートを持って立ちあがろうとすると、先生によって手で制されてしまう。

「在原と思ったが、日下部。日下部香織」

やっぱ気づくよな。

呼ばれた上に皆の視線を集めているのに、日下部は一向に気づかない。

おい、起きろよ……

隣りの奴が起こす前に、若林が教科書を丸めて頭をはたいてしまった。


「痛ってぇ」

頭を摩りながらあいつはバッと起き上ると、現状を一瞬にして理解したようだった。

「どこっすか?」

「教科書、56ページの訳」

「はぁ!?訳ってこれ英語っすよ?んな、海じゃねぇから急に訳せって言われても、俺が訳せるわけねぇっしょ」

「急じゃない。この間の授業で課題として前もって言っておいただろうが」

「え~、俺居ましたっけ?」

「居ただろうが!!ったく、お前は少しはちゃんと真面目に授業受けろ。あと、西野!!お前も起きろ」

やっぱバレてたのか。

西野は急に名前を呼ばれたため、飛び起きてしまった。


「お前ら、そんなに俺の授業は暇か?」

これから説教が始まるって時に、ドアを叩く控え目な音が聞こてきた。

「若林先生」

ドアが開けられ、白衣の女性が入って来た。

あれは……保険医の高橋だ。


「今、少しよろしいですか?」

「あ、はい。どうなさったんですか?」

若林はドアの方へと向かう。

その後若林と高橋先生は何かを話しているらしいが、俺の席までは聞こえない。


「マジで!?んで逢月さん大丈夫なの!?」


――は?桜音!?

俺には関係ないと思っていた会話が、どうやらそうでもなかったようだ。

西野の声によって、見ていた空からドアの方向に視線を移動させる。


「お前な……」

「聞き耳立ててたとかじゃなくて、たまたま聞こえたんですって。それより、大丈夫なんですか?倒れたって」

――……倒れた!?

勢いよく立ちあがったため、イスが倒れる音と共に教室中の視線が集まったが、それどころじゃない。


「どうした、在原……?」

皆怪訝そうに見ているが、唯一わかっている日下部だけは違った。

「具合悪いので保健室に行きます」

「ああ、行って来い。大丈夫か?お前顔色悪いぞ?」

「あの、でしたら私が保健室に……」

「あ、そうですね。丁度よかったな、保険医の先生ここにいて。では、高橋先生、在原を保健室に――……って、在原!?」

先生が何か言っているが、どうでもいい。

それより桜音だ。

俺は全速力で保健室へと向かう。


だが俺が行った時には、桜音はすでに保健室には居なかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ