第二十七話 パーティー開始
「ここか?」
「うんっ!!」
私は手を繋いでいる相手に対して、頷く。
すると海は眉を顰めながら私から大きめの白い扉に視線を移すと、首を傾げた。
私達が立っている大理石に赤いカーペットが敷かれている廊下には、他にも数か所の扉が視界に入ってくる。
ついさっきまでテラスでお茶をしていた私達は、ここ5階のパーティー会場前まで来ていた。
予定時間より10分ぐらい早いけど、日下部君からのメールで「準備早めにしたから来い」との連絡がきちゃったので問題はないみたい。
「桜音。ここの階は、パーティー会場ばかりなんだ。だから、ここもそうだぞ?」
「うん、知ってるよ」
「一体何があるんだ?」
「内緒。ねっ、早く開けて。開けて!!」
私は繋いでいた手を離すと、海の背中を押し早く開けるように促す。
早く海の驚く顔が見たいって思うと同時に、少し緊張し始めていた。
だって中にいるのは知らない人が多い。
その上、私はちょっと人見知りするタイプなのだ。
「……わかった。じゃあ、開けるぞ?」
「うん」
せかされるようにして海がゆっくりと扉を開けると、中には日下部くんや凛さんの他に数十人の人達が立っているのが確認出来る。
ざっとみて、15人から20人ぐらいかも。
日下部と凛さん以外知らない人ばかりだ。
「海、誕生日おめでとう!!」
大勢のお祝いの言葉と一緒に、パンっという音と共に紙吹雪が飛んできた。
どうやらみんなクラッカーを手にしていたらしく、それを鳴らしたらしい。
海の反応はというと、想像通り。
視界に入ってきた景色に対し、海は目を真ん丸くし茫然と立っている。
大成功~っ!!
そう思ったのは私だけじゃなく、室内にいた人達も同じだったみたい。
お腹を抱えて笑っている人や、お互いの両手を叩きあっている人などがいた。
「なんで、お前らがここに……?」
「喜べ。今日はお前の誕生日だろ?だから、俺達が祝ってやろうとわざわざ集まってやったんだ」
「もしかして、桜音も知ってたのか!?」
海はまだ取っ手に手をかけたままの体勢で、首を私の方に向ける。
「うん。ごめんね」
だって言ったらサプライズじゃなくなっちゃうもん。
予想通り、驚いてくれて私的には嬉しい。
「さぁ、海さんも逢月さんも中にお入りになって下さい。みなさん、主役もいらっしゃったので、さっそくパーティーを始めましょう――」
この凛さんの開始の声に、室内にいたみんなの歓声が聞こえてくる。
未だ上手く飲みこめないのか反応が鈍い海の手を引いて、私は室内へと海をエスコートした。
どんなパーティーになるんだろ?楽しみ~。
すっかりパーティーに浮かれていた私は、まさかこの後想像もしていなかった状態に陥るなんて思いもしなかった。