第二十四話 ちょっと落ち着いて
ん~。今日の夕食どうしよう?
たしか、冷蔵庫に海老とイカが少し残ってたよね。
他の材料もあるし、シーフードカレーにでもしようかな~。
頭で今日の夕飯を考えながら、材料を取り出すために冷蔵庫を開けた時だった。
玄関の方でなにやら物音がしたのは。
それは音を変え、こっちに段々近づいてきた。
何か急ぎなのかな?
廊下を走る音に、私は首を傾げた。
玄関にはちゃんと鍵をかけておいたから、他人には開けられない。
なのでおそらくこちらに向かっているのは海だと思う。
一端開けた冷蔵庫を閉め、廊下へと通じるドアへと向かった。
緊急の用事とかだと悪いし。
ドアに手をかけようと腕を伸ばしたら「桜音っ!!」という声と共に、海によりドアが開けられてしまった。
入室してきた海は、バスケ部指定のTシャツとジャージ姿。
そして肩にはスポーツバックを背負っている。
今日練習試合って言ってたから、買ったのかな?
その表情は何か良い事でもあったのか、海は極上の笑みを浮かべていた。
なんか、連都が欲しいおもちゃが手に入った時みたいな顔してる。
「なんでこんなに可愛すぎるんだ!!」
「は?」
脈絡もなくいきなりガバッと海に抱きしめられ、急に視界が遮られてしまう。
なっ、何事!?
何度抱きしめられれば免疫がつくんだろう。
未だになれないので反射的にジタバタと悪あがきをする。
そんな行動を起こしても腕の拘束は解けず、ただ体力の無駄遣いにしかならないとわかっているんだけど……
「桜音。俺、こんなに誕生日が楽しみなのは初めてだ」
「何か欲しいものでもプレゼントして貰えるの?」
そうだとしたら、海のテンションが高いのも頷ける。
どうしよう。腕時計とかだったらダブっちゃうよ……
私は、海の誕生日プレゼントに腕時計を用意してしまったのだ。
腕時計なら、学校に行く時も啓吾さんの会社に行く時も使えるって思ったから。
まさか、ここでそれって時計?なんて聞けるわけもないし。
「あぁ、最高のプレゼントだ。桜音が俺にキスしてくれるなんて」
「――え」
その言葉に表情筋達が動くのを辞めた。
ま、待って。まさか……
「それってまさかみくから聞いた話?」
「そうだ。そんな事で悩むなんて可愛い。悩まなくてもいいんだぞ?俺はいつでも大歓迎なんだからな」
ええっ!?なんでおかしいって思わないの!?
普通なら私が言ったんじゃないって気づくはずなのに、海はまったく気づいてない。
「あのね、海。その事なんだけど……――」
「今年の誕生日は絶対に忘れられない。なんていったって桜音が祝ってくれる上に、最高のプレゼントまでくれるんだもんな。夢みたいだ」
どうしよう。なんか言いにくいよ。
こんなに喜ばれると、言うのを躊躇ってしまう。
みく~、責任とってよね!!