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合鍵  作者: 歌月碧威
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第二十三話 みく的サプライズ

「――んで?王子に告られて、それから?」

「え?終わりだけど?」

みくの言葉に首を傾げ、スプーンでジェラードをすくって食べた。

うんっ!!お米のジェラード初めて食べたけど、これおいしい。

ゴマもおいしそうだったけど、こっちにして正解だったかも。

おいしさに思わず頬を緩ますと、隣りから何やら不穏な空気が漂ってきた。


「『え?終わりだけど?』じゃないだろうが!!しかもなに暢気にジェラードなんか食べてんのよ!!」

急にそう怒鳴りながらみくはベンチから立ち上がる。

えっ、なんで怒ってるの~?

私を見下ろしているみくの気迫に、思わずジェラードを持つ手が弱くなってしまう。


「だっ、だって昨日の事はそれで本当に終わりなんだもん。それに、ジェラード食べたいって最初に言ったのみくだよ」

噴水の前を通る人たちが、不審そうにベンチに座る私達を見ている。


「アタシが言いたいのは、んな事じゃない。なんで在原海に告られたのに、そこで終わるのよ!?桜音も好きだって言えば良かったじゃんか!!」

「だって言うの恥ずかしいし、海じゃないとキスやだって言ったんだよ?だから、わかってくれるんじゃないかなって思ったんだもん……。それにその後、二人でテレビ見始めちゃったし……」

「はぁ!?テレビだと?」

え~と、みくさん?目が座ってるんですけど?

あまりの気迫に目をそらす。

こ、怖い。


「テレビどころじゃないでしょうが!!あんた達、二人して何やってんのよ!?せっかくの良い雰囲気なのに!!」

「ごっ、ごめんなさい」

「あ~っ!!ほんとこいつらは……」

みくはカバンをごそごそとあさり、何かを取りだした。

それはみくの携帯電話だった。

ストラップはシルバーの蝶のモチーフのものがつけられ、本体はラインストーンで綺麗にデコレーションされている。


「電話?」

みくはそれには何も言わない。

「あ。もしもし、アタシ。――は?別に何もないわよ。桜音なら隣りでジェラード食べてる。……あんた前から思ってたんだけど、その桜音とアタシの態度の違いってどうなのよ?ムカつくわね。……明後日、在原誕生日でしょ?――あ~、よかったわね。桜音に祝ってもらえて。……デレデレすんなキモイ」

本当にみくは海の事が嫌いじゃないの?

みくの話しか聞こえないため内容はよくわからないけどそう思った。


「――あ~、も~うるさい。電話口で大声だすな。――……いいのかな?切っても。まぁ、アタシは別に切ってもいいんだけど?……そうね、さっさと要件だけ言うわ。桜音があんたの誕生日にキスをプレゼントしようと思ってるんだけど、迷惑かな?って悩んでるのよ……――」

「ん~!!」

慌てて否定しようとしたら、先を読まれみくの手によって口を塞がれてしまった。

ちょっと待って。本人が外野っておかしいでしょ!?

っていうか、そんなこと言ってないし!!


「マジで。……それで、あんたはもちろん迷惑じゃないわよね?――……ちょっと、雄叫びあげんのやめてくんない?うっさいんだけど。……は?桜音に代われ?今いないわ。アイスが手について洗いに行ったから」

ここにいるってば――!!

いくら叫ぼうと、全部ちゃんとした言葉にならない。


「じゃあ、切るわよ。……はいはい。わかってる。ちゃんと桜音の事見てるし、何かあったら連絡入れる。はい、はい。じゃあね」

みくは携帯を切ったのを確認すると、私の口から手を離す。


「良かったね。王子、狂喜乱舞」

「良くないっ!!しないから!!絶対にしないからね!!」

というか、なんでそうなるのよ……

カバンから携帯を出しいますぐ否定しようとしたんだけど、ディスプレイを見て首を傾げた。

あれ?真っ暗。


「桜音、あんた携帯の充電切れてるの忘れてた?」

「あ」

「残念~。かけられないわね」

たしかに、私の携帯からはかけられない。

でも――


「みくの携帯貸してよ!!」

「え。無理~」

「なんで!?意地悪っ!!」

「意地悪って酷いわね。とっととくっつけてあげようとしてんのに。いいの?桜音。あんた達両思いかもしれないけど、付き合ってないのよ?」

「え……」

「そうでしょ?あんた彼女でもなんでもないんだから」

たしかにそうだ。

私達は付き合ってるわけじゃない。


「彼女になりたくないの?」

「……なりたい」

「だったら、ちゃんと気持ち伝えなきゃ。そしてちゃんと、カレカノになりなよ」

「うん、わかった。海にちゃんと気持ち伝えてみる。でもさ、それとキスするのって何か関係あるの?」

「は?別にないわよ。ただ、おもしろそうだからいっかなって~」

「みくっ!!」

公園に木霊するのは、私の怒鳴り声。

それを聞いてみくはただ笑っていた。


も~っ。家に帰ったら、ちゃんと海に誤解解かなきゃ。

海だって今頃絶対おかしく思ってるはずだもん。

だって、私がそういう事言うわけないもんね。

みくが勝手に言ったことだって普通考えればわかるはずだし。


そんな私の考えが安易なものだと、数時間後に思い知る事になる。






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