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合鍵  作者: 歌月碧威
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第十七話 他人には見えて自分には見えないもの

「桜音」

「は、はいっ!!」

みくに呼ばれ、思わず体がビクつく。

だって怖いんだもん……

目の前のみくは、腕を組んだまま般若のような顔でこっちを睨んでいる。


「説明しろ。なんでこの男がただいまって言いながら、家の中入ってきたのよ?」

「あの、その……――」

「桜音!!」

どう話せばいいのかがわからず、うまく言葉を発することが出来ない私にイラついたのか、みくはさっきより強く私の名を呼んだ。

ど、どうしよう!?みくに海との同居バレちゃったよ!!

海にみくが来たことを言いに行こうとしたんだけど、その前に海がリビングに入ってきてしまったのだ。


ここはなんとか誤魔化すべき?

いや、もう誤魔化せないから正直に言うべき?

どうしたらいいのかわからず、視線で海に助けを求めた。

すると海はその視線の意味にわかってくれたのか、口を開く。


「大体想像出来ていると思うが、俺と桜音は一緒に住んでいる」

海は私の肩に手をかけると、みくに説明し始めてくれた。

だが、それを聞いてみくが顔を顰めてしまう。


「桜音バカになんか聞いてない。アタシは、桜音に聞いてるんだ」

「状況を説明するなら、別に俺だっていいだろ」

「あんた、桜音バカは否定しないの?」

「自覚があるからな」

「でしょうね。だったら、黙ってな」

「だからなんで俺じゃ駄目なんだ?これは俺も関係あるだろが」

「アタシは桜音に聞いてるの。あんた桜音じゃないでしょうが!!」

みくは烈火の如く怒りまくし立てている。一方、海は流水のごとくそれを流す。

温度差のある二人だ。


「か、海。私が話した方がいいみたいだから、話してもいい?」

このままじゃ埒があかない。

そう判断して、私はみくに自分の口から説明する事にした。

じゃないと永遠に二人の口論が続きそうなんだもん。

「大丈夫か?」

「うん」

海に笑顔で返事をすると、深呼吸し、向かえに座るみくを見つめた。

若干、口元がひきつるのは仕方ない。


「あのね、お父さん達が海外に転勤になったのは、みくにも話したでしょ?その時日本に残る条件を出されたの。それが、海と一緒に住むこと。なんか女の子の一人暮らしは危ないからだって。海もちょうどお家の関係で一人暮らしをしようとしてたから、ちょうど良いタイミングだったの」

「……ねぇ、桜音。それはそれで危なくないかと思うのは、アタシだけか?こいつ男だよ?」

「私も最初思ったけど、海は大丈夫だよ。ねっ?」

私が海に同意を求めると、みくは海に憐れんだ視線を向ける。

その視線を受けた海は「放っておいてくれ」と言い、ばつが悪そうに顔をそむけた。


「ごめんね。事情が事情だから、言えなかったの」

「別に良いわよ。正直、話してくれなかった事については少しムカついてる。でも、アタシも桜音の立場ならきっと言えなかったからしょうがないとも思う。だから、気にしないで」

黙ってた事怒られるかな?って思ってたのに、みくはあっさりと受け入れてくれた。

ごめんね、ありがとう。みく。


「――で、在原海。あんたほんと巧くやったわね。外堀から埋めるなんて。これは作戦勝ちなの?」

みくは残っていた一口分のタルトを口に頬張ると、海に向かってそう言った。

「勝ちかどうかはまだわからない。ただ、桜音が『境界線』の中に入ってくれたのは確かだ。少し無理やり感があったのは、否めないが」

「――境界線?あぁ、『あの話』あんた知ってんの?」

「耳に入って来たからな」

「ふ~ん。で?いつその結果がわかるのよ?」

「近々」

「そう。ヘタレも覚悟決めたってわけ」

「ヘタレって言うな。慎重って言え」

みくと海の会話に、私は首を傾げる。

ほとんどの会話が意味不明だ。


なんか、置いてけぼりって感じがするよ。

だって、二人の話ちっともわかんないんだもん。

そりゃあ私が知らない海の事を、みくが知ってる事もあるのは当たり前だ。

もちろん、逆もある。


でも……――


頭ではわかってても、焼きもちを妬いてしまう。

こんな風にみくと話してる海を見てるだけなのに。

焼きもちだけじゃなくて、自分に対してのコンプレックスとかも合わさって不安もある。

みくは美人で大人っぽい。

よく町で声掛けられてるし。

海だって、そんなみくの事好きになるかもしれない。

そしたら勝ち目なんて全然ない。


人と比べるのは良くないし、きりがないと思っても比べちゃう。

性格なのかな……?

涼には「桜音には桜音のよさがある」って言うけど、そんなのわかんない。

前に日下部君に「自分に自信持って、ちゃんと海に気持ち伝えろ」って言われたけど、

どうやったら自身って持てるんだろう。






















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