第十五話 眠り姫と王子様
「ねぇ、一体何があったの?」
首を傾げみくを見つめる。
するとみくは苦虫でも噛みつぶしたような顔をしていた。
えっ、ほんと何があったの~~っ!?
なんかみくの様子を見ていると、すごく不安になってしまう。
「パシリにされたり、無理やり携帯の番号とアドレス交換させられた。
まぁどれも元をたどれば、あいつの桜音バカのせいだけど」
「はぁ!?いつ!?」
思ったより大声が出てしまい、慌てて自分の口を押さえる。
海がみくをパシリにしたなんて信じられない。
それと、私バカって一体何なの?それ。
「いつだったか覚えてないけど、あんた中庭に日向ぼっこしに行った時あったでしょ?
クーラーで体冷えたからって言ってさ」
「え?」
いつのことだろう?
クーラーで冷えると、結構頻繁に廊下とか中庭に出ちゃってたんだよね。
そのためみくの話しているのがいつのことなのか、見当がつかない。
「桜音日向ぼっこしに行って、あの暑い中そのまま寝ちゃった時の事よ。
ほら熱射病になると悪いからって、あんたが寝てる間に運ばれた時あったじゃん」
「あっ、あの時のこと!!」
思いだした。あれはいつだっけ?
私もみくと同じではっきりとした日にちは覚えてない。
でもテスト勉強してたから、テスト週間より前のことだとは思う。
あの日クーラーで体の冷えた私は、中庭で日向ぼっこをしてたんだけど、
そのまま夏の暑い日差しの下で寝てしまったのだ。
だってあの時お昼ご飯食べ終わった後だったし、昨夜テスト勉強してかなり眠かったんだもん。
「あの時びっくりしたんだよ。だって中庭で寝てたのに、起きたら写真部の部室だったんだから」
目を覚ますと中庭のベンチにあった私の体は、なぜか部室のソファの上へと移動されてあった。
わけがわからずそばにいたみくに聞くと、「熱射病になると悪いから運んだ」との説明があった。
そう言えば、結局あれは誰が運んでくれたんだろう?
みくは、「引きずって運んだ」ってわけのわからない事言うし。
「その日、実は後からアタシも中庭に行ったのよ。学校抜け出してコンビニに行くために」
「コンビニ行くなら、昇降口から出るんじゃないの?」
中庭寄ってから行くんじゃなくて、直に昇降口に行って外に出た方が早いと思うんだけどな~。
「バカっ。そんな事したら守衛に見付かってすぐバレるでしょうが!!裏門からこっそり行くのよ」
「でも、裏門って鍵掛かってないっけ?」
「……。」
みくの沈黙を聞いて、合鍵か何か持ってるっていうのがなんとなくわかった。
一体何処で手に入れたんだろう。
「とにかく、中庭突き抜けて東棟に向かう。そんでそこの空き教室から裏門に抜けるルートを使うと、
最短コースなのよ。だから、アタシも中庭に向かったわけ」
「うん」
「そしたらそこで偶然見ちゃったのよ」
「何を?」
「――眠り姫が王子様にお姫様だっこされているところ」
「……眠り姫?」
……ん?姫?
あれ、なんだろう?急に背中に変な汗が。