第十四話 恋の相談ならやっぱり。
なんだか、少し緊張する……
少しでも落ち着くため、紅茶を飲んだ。
そしてテーブルをはさんでむかえ側にあるダークブラウンの
皮ばりのソファに座っている人に向ける。
するとそこには紺と白のマリンタイプの半袖のカットソーに、
デニムのショートパンツという格好のみくがこちらを見ていた。
「足、大丈夫なの?」
「うん、平気。軽い捻挫だって」
私の右足には、ぐるぐると包帯が巻かれている。
あの後海に病院に連れて行ってもらい、お医者さんに見て貰った。
そして、下された診断は軽度の捻挫だった。
三日間は運動もせず大人しくしてれば、一週間ぐらいで治るみたい。
これなら、海の誕生日パーティーにギリギリ間に合う。
「良かったね、軽くて済んで。でもさ、なんで捻挫なんてしたの?」
「うん。実はその事も含め、みくに相談したい事があったんだ」
「相談?いいよ、何?」
みくはそう言うと、麦茶に口を付ける。
実は今日はみくに海の事を相談しようと思い、家に来て貰ったのだ。
海は部活中で家にいないので、話すにはちょうどいいし。
「あのね、実は好きな人がいるの。それで……――ってみく!?」
まだ肝心の内容を離していないのに、みくが麦茶を詰まらせたらしくゴホゴホと咳き込んでしまっている。
「だっ、大丈夫!?」
「だい……じょ……ぶ」
私が立ち上がろうとするの見て、みくはそれを手で制する。
そして何度が咳き込むとやがて落ち着いたのか、大きく深呼吸し目に溜まった涙を擦った。
「あんた好きな奴いたの!?それってうちの学校!?っうか、そもそもそいつは誰よ!?」
みくはダンッとテーブルに手をつき、前のめりになっている。
その迫力に、若干の恐怖心を感じずにはいられない。
「あっ、あのね隠してたわけじゃないよ。何度か言おうとしたの!!
でもみくその人の事苦手っていうか、嫌いっていうか……」
「はぁ?私が嫌いな奴?」
「うん」
だってみく海の話題とか耳にすると、すぐにおもしろくなさそうな顔するじゃん。
それに前に「海の事苦手?」って聞いたら、「ムカツク」って言ってたし。
「――で、誰なのよ。名前言ってくれなきゃわかんないよ。もしかして言えないとか?」
「言えなくない。あのね、海なの……」
「は?かい?かい……?」
みくは首を傾げながら、ぶつぶつと海の名前を何度も呟いている。
もしかして、誰だかわかんないのかな?
やがて思いついたのか「まさか!!」と応援団顔負けの声で叫ぶと立ちあがった。
ちょっ、ご近所さんにご迷惑が!!
「まさか、海ってあの在原海の事じゃないでしょね!?」
返事の代わりに頷くと、みくは力が抜けたようにソファに座りこんでしまう。
えっ、ちょっ!?みく!?
「ありえない。まさかこうなるなんて――」
みくはそう言ったまま急に黙りこんでしまった。
どうしたんだろう……?
どれくらい経ったのかな?
それは数秒だったのかもしれないし、数分だったのかもしれない。
みくが黙りこんでしまってから、しばらくぶりにその口が開く。
そしてその言葉に、私はしばし呆然となった。
「あんた達が付き合ったら、アタシと桜音遊べなくなるじゃない!!」
「は?」
なんで付き合うとかの話になるわけ?
というか、遊べなくなるってどういう事?
もし仮に海と付き合ったとしても、みくとは遊べるはずだよ。
「いい、桜音。あいつはね、あんたの事が大好きなのよ!!いやもう好きっていうか、うっとおしいぐらいの溺愛レベルで。だからあいつは桜音の事になると、私にまで焼きもち焼くぐらい器が小さい男なの!!」
「は?」
「は?じゃない~っ!!」
思わず肩がビクッとなった。
えっ、何?なんなの!?
急に立ち上がり拳を握りしめ始め、みくは段々とヒートアップしてきはじめてしまった。
「いい?桜音。私は在原海の事を嫌いでもないし、苦手でもない。ただムカつくだけなのよ!!
ああ、思いだしただけでも腹立つ。あの時の事――」
一か月以上ぶりの更新って…
こんな亀更新でも読んで下さってる方、ありがとうございます!!