第八話 パーティをしませんか
テーブルの上には、お花の和菓子が赤い漆皿の上にのっている。
私はそれを竹の楊枝で切ると、口の中に入れた。
うん、おいしい!!
ここは賽極のお店と同敷地内にある、凛さんが住んでいるお屋敷。
話があるからと、浴衣を見ている圭吾さんを残して私は日下部君達にここに連れてこられたのだ。
「お口に合いますか?」
「はい。とても」
「よかったですわ」
着物姿の美女・凛さんは私の返事を聞くとにっこりと微笑んだ。
彼女は、賽極凛さんと言って、ここ賽極のお嬢様。
年は私と一緒で、陸王学園高等部の二年生なんだって。
陸王って言ったら、幼等部から大学まである社長子息・子女などが通う名門校。
海も元々中等部まで陸王の生徒だったんだけど、推薦で高校からうちの学校に入学。
もちろん、この事はうちの学校の生徒達はみんな知ってる。
陸王はエスカレーター式なのに、どうして外部の高校に来たのかって入学当初すごく噂になってたから。
結局理由としては、うちの学校がバスケが強かったって事だったんだけど。
「あ〜。早速だが、逢月。話なんだけどよ〜」
日下部君が、みたらし団子を食べながら話を始めた。
あっ!!お団子私も食べたかったのに!!
皿の上にのっていたお団子は、日下部君によって串だけになっている。
「もうすぐ海の誕生日だろ?そんで俺と凛、それと他の奴らで海の誕生日パーティーを計画中なんだ」
「いつやるの?」
「23日です。金曜日で平日ですが、ちょうど夏休み中なので」
あ。それじゃあ、海の誕生日当日にパーティーなんだ。
って事は、あと一週間と少しってとこか。
「もちろん参加するよな?」
「うん!!」
これはもう即答。だって、海の誕生日パーティーだもん。
私もちょうど、料理を考えたりして海の誕生日をお祝いしようって思ってたのだ。
だから、日下部君達も一緒って心強い。
だって海との付き合いが長いから、いろいろ知ってそうだもん。
あっ、そうだ。海の好きなものとか聞いておこうっと〜。
私、プレゼントまだ買ってないんだよね。
「日下部君。海が欲しいものってわかる?」
ちょうど今日浴衣見た後に買いに行こうって思ってたんだ。
海に何か欲しいのある?って聞いたら、何もいらないって言われちゃったし。
「あ〜、それならお前にリボ――」
パチンと日下部君が凛さんに扇子で頭を軽く叩かれた。
「まったく、貴方ときたら」
「なんだよ!!あいつ一番喜ぶじゃねぇか!!だから、俺もこいつの写真し――」
……私の写真が何?
日下部君はわざとらしくせき込むと、何事もなかったように緑茶を飲み始める。
なんか、気になる〜。
「もちろん、誕生日パーティーの事は海さんには秘密です。もしばれそうになったら、なんとか誤魔化して頂もらえませんか?」
「誤魔化す……」
ん〜、難しいかも。
でも、なんとか頑張る!!
「そんな考えねぇでも、簡単だ。悩殺だ。悩殺」
「は?」
思わず凛さんとハモってしまった。
何言ってんの!?
「は?じゃねぇよ。その事がぶっ飛ぶぐらい、悩殺してしまえばいいんだっうの」
「ちなみに、どうやって……?」
そんなスキルが私にあるわけない。
というか、そもそもよくそんな発想が出て来たね。
「抱きついて、キスの一つや二つでもしてやれ」
「ちょっ……」
無理すぎるでしょうが!!
「相変わらず貴方は無責任すぎる発言ばかり」
凛さんは大きくため息をはくと、冷めた目で日下部君を見る。
「どこがだよ。海はこいつの事となると、抱きつかれたぐらいで顔赤くして固まる純情少年になるんだぜ?そう考えると、出来なくはないだろ」
「本当ですの?あの海さんが……!?」
凛さんの目が大きく開かれた。
「信じらんねぇだろ?この間のモデルが逢月ならどうなってたんだろうな」
「モデルって?」
「海のバイトに決まってるだろ。この間、モデルの女との絡みでキスシーンあってよ――」