第七話 企み…?
わ〜っ、可愛い。
私の視線の先には白の生地に菫の花、薄い青地に兎などの布が並んでいる。
どれも可愛いけど、反物なんだよね。これ。
畳みの上に並べられているのは、どれも浴衣の反物。
そのため花火大会までに浴衣として仕上がるかわからないし、それに何より――予算内に絶対に収まらないよ〜!!
私は夏祭りに着て行く浴衣を新調しようと、圭吾さん……海のお父さんお勧めのこのお店に連れてきてもらったんだけど、ちょっと後悔している。
だって、連れてきてもらったのが『賽極』だったんだもん。
賽極は、江戸時代からある老舗の呉服屋さん。
一見さんお断りのお店で、愛用者はもちろん由緒ある家柄の人や政治家や社長さん達ばかり。
最初に気づけば良かったんだけど、名前しか聞いた事なかったし、のれんに書かれていた賽極って文字が崩されすぎて読めなかったんだよね……
ん〜、圭吾さんにこのお店に既製品ないか聞いてみようかな。
そっちだと私が買えそうなものあるかもしれないし。
そう思って圭吾さんの方を見ると、圭吾さんは撫子や菊などが描かれている反物と、紫陽花の描かれている反物を見比べていた。
時折圭吾さんが、キクさんと呼んでいたお店のお婆さんと話をしている。
あ〜、そういえば、みちるさんにサプライズで浴衣をプレゼントするんだって言ってたっけ。
どうしようかな……
邪魔するのも悪いし、他の店員さんに聞いた方がいいかな?
そんな事を考えてると、聞きなれた声が耳に入ってきた。
「ほら、これ写真」
この声って――
あ、やっぱり。日下部君だ。
声の方向に目を向けると、やっぱり思い当った人がいた。
でも日下部君は一人じゃないみたいだった。
日下部君の隣りには、鮮やかな着物に身を包んだ女の子が歩いている。
同じぐらいの年かな?
髪はおかっぱで目は一重、すっとした鼻立ちの和風美女だ。
二人は私に気づかずに通りすぎようとしている。
「本当なら写真ではなく、桜の姫を連れて来ていただいた方が良いのですけど。そうしたのなら、私もお会いする事が出来ますのに」
桜の姫――もしかしてそれって、私の事……?
聖と逢った時に海の友達が私の事を「桜の妖精」とか「桜の姫君」とか言っているって聞いた。
あの時一人一人にあって訂正入れたいって思ったんだけど、さすがに私の事を話してるのなら声をかけるにかけれない。
「しょうがねぇだろ。あいつ連れてきたら、俺達が動いてるのが海にバレちまうかもしれねぇからな。それに逢いてぇのなら、当日逢えるだろ」
「まぁ、それはそうですけども。でも、海さんにバレてしまうなんて少し考えすぎじゃありませんの?」
「あのな、お前はわかってねぇって。アイツは逢月の事なら些細な変化でも気づくっうの」
「海さんが姫の事を溺愛しているのは、わかっていますわ。現に浴衣の予約だって――」
やばっ!!
あまり見過ぎてたのか、その女の子の視線が急にこっちに向いて目が合ってしまったのだ。
――あ
さらにやばい事に日下部君と目が合ってしまう。
どうやらふいに話と足を止め、こっちを見た女の子を怪訝に思ったらしく視線を追ったみたいだ。
「逢月お前なんでここに!!」
「こ、こんにちは……日下部君……」
私はぎこちなく手を上げた。
読んでくれている方ほんとありがとうございます!!
更新遅いうえに、文章とか下手だし、ありがちな話なのに……
今回は早めに更新できました〜。
このペースをなんとか続けれれば^^;