第三話 パフェと店員さんと
「あれは一体どういうつもりなんだ!!―……何の事じゃないだろうが!!――……ああ、貰った。
まだ見てなかったんだよ。はっ!?薄情者だって?なんでそうなるんだ!!」
隣りから聞こえてきた怒鳴り声に、たまらず耳を塞ぐ。
海はやっと繋がった携帯で話をしているみたいなんだけど、かなり機嫌が悪い。
眉間に皺をよせながら、受話器越しに相手に文句を言っている。
絶対相手の人、携帯耳から離してると思う。
「……ああ、いる。そんなんで気づくなら、とっくに俺の気持ちの気づいてくれている。……いいんだ。それでも俺は。
だから、もう余計なことするな。――は?そんなことお前に言われなくてもちゃんと考えてる。……いつでもいいだろ。お前には関係ない」
海はさっきより少し落ち着いたのか、淡々とした口調になっている。
誰と話してるの……?
そういえば、さっき聖の映像見て電話かけ始めたっけ。
という事は、聖かな?
あれ?そういえば聖と海ってどういう知り合いなんだろう……?
「だから、そういうのが余計なお世話だって言ってるだろ。とにかくもうすぐ着くから。……ああ、わかった。じゃあな」
海は通話を終えたらしく、携帯を畳むと空いている座席に放り投げた。
そして溜息を吐いて何か少し考えた後、備え付けられているインターフォンを押した。
「海のバカ……」
この呟きを聞く人は周りには誰もいない。
白をベースとした室内には、私だけが一人ぽつんと存在している。
ここはフランっていって、最近雑誌やテレビで紹介される人気スイーツショップだ。
どの部屋も完全個室でプライバシーは守られている。
もうっ。置いていくなら、最初から連れて行かないでよ。
別に聖のファンってわけじゃないけど、会うの楽しみにしていたのに。
私以外の他の人――海と涼と莉緒ちゃんは私を置いてここからモデル事務所に行ってしまい、私だけこの店に取り残されてしまったのだ。
一時間ぐらいしたら戻ってくるから、好きなものなんでも頼んでて良いって言ってたけど。
でも一体なんだろう。急に私だけ置いていくなんて。
海に理由聞いたら、「聖のせい」ってしか言わなくてちゃんとした理由教えてくれなかったし。
あれこれ理由を考えていると、ドアをノックする音と共に「失礼いたします」と白いシャツに黒っぽいエプロンとパンツスタイルの
男の店員さんがドアを開けて入ってきた。
あれ?私、まだ何も頼んでいないのに。
しかもあれって――
私の目は店員さんの持っている銀色のプレートの上にのっている物にくぎ付けだ。
「お待たせいたしました」
店員さんの手によって、ピンクゴールドのスプーンと共にそれがテーブルの上に置かれた。
溢れんばかりにのった季節のフルーツに、バニラアイスとマンゴーゼリーの二重の層。
それらが細かい細工が施されてあるガラスの器に入っている。
フランのパフェだ〜っ!!
これみくと、食べたいよね〜って言ってたんだ。でも値段が値段なだけになかなか手が届かなくて……
だって、これ一つで3000円もするんだもん。
パフェにしては高すぎると思わない?
だって私がしているレジ打ちのバイトが時給650円だよ!?
あっ、でもこれ私頼んでない。
「あのっ、私まだ注文してないんですけど」
店員さんにこれが自分の注文品ではないことを告げると、返ってきた返事は想定外のものだった。
「言うことはそれだけなのかよ。どんくさいのか?それとも僕の事知らないのか?」
「は?」
いきなりそんな事を言われて、すぐさまパフェから店員の顔に視線を向けた。
あれ……?なんかこの顔どっかで……
ずっとパフェばかり見てたから、全然店員の顔まともに見てなかったよ……
「あ〜〜〜っ!!」
私の叫び声を聞くと、その人は、「やっと気づいたか」と言うとテーブルをはさんで迎え側のイスに座った。
どうして!?どうして聖がいるの!?
久々の一か月ぶりの更新です。
もう検定試験も終わったので、更新普通に戻ります(^_^)