第二話 秘恋
今回長めです(+_+)
途中でわけようと思ったんですけど、どっからわけていいかわかんなかったので…
あの空気のまま聖の所に行くと思ってたんだけど、それは私の危惧に終わった。
それは、たぶん迎えに来てくれたこの車のおかげだと思う。
私達が乗っているのは、なんとリムジン。
この車は海の家の車で、運転しているのは在原家の専属の運転手さん。
やっぱり最初はそうなるよね……
涼の隣に座っている莉緒ちゃんを見ると、ただ茫然とどこかを見て座っている。
私も最初乗せて貰った時は、莉緒ちゃんと同じような反応だった。
だってドラマとかでしか見れないし、普段乗らないもん。
「すごいな。俺初めて乗ったよ」
一方涼は、そう言いながら観察するように広い車内をゆっくり見回していた。
気になるものがあったのか、涼は目を輝かせながら海を呼び、一点を指している。
あっ、もしかしてテレビ?
涼が見ていた所には、埋め込み式のテレビがあった。
「なぁ、これつけてもいいか?」
「ああ」
海の返事を聞くと涼は、スイッチに手を伸ばしそれを押す。
すると画面には、イスに座っている学ランを着た男の人とスーツ姿の女の人が映し出された。
男の人は全体的に髪の毛や瞳の色など色素が薄く、耳が隠れるぐらいまで長い髪は所々無造作に外ハネにしている。
「あっ、莉緒ちゃん。ちょうど聖が出てるよ」
「えっ!?」
弾かれたように莉緒ちゃんは、画面に映る聖を見つめた。
聖ってぱっと見るとハーフ?って思っちゃうんだよね。
目鼻立ちがはっきりしているためか、よく勘違いされるってテレビで言っていたっけ。
「しかし、大人って感じがするよな。とても同じ年には思え――」
「お兄ちゃん、ちょっと黙って。聖の声が聞こえないじゃん」
り、莉緒ちゃん……
莉緒ちゃんは涼の話を遮ると、テレビを食い入るように見つめながら、聖が話す言葉を聞き洩らさないように集中して聞いている。
『新曲一位おめでとうございます』
『ありがとうございます』
『今回発売された新曲のタイトル「秘恋」は、心に秘めた恋っていう意味だそうですね』
『はい。そのままです』
聖はスーツ姿の女性アナウンサーに対して、苦笑いで答えた。
『主人公の男の子の心に秘めている恋――つまり片思いの歌です。
プロモーションビデオもそれに合わせて学園ドラマっぽくしました』
あ〜、これってこの間発売した新曲のインタビューなんだ〜。
だから学ランか。
聖はプロモで学ラン姿で歌っているのだ。
私もそのプロモ見たけど、主人公の男の子に感情移入しちゃった。
プロモは主人公の男の子の片思い目線で進んでいくんだけど、その片思い中の出来事が共感できるし、聖の歌声が切なくて……――
「プロモってどんな内容なんだ?」
「えっ?在原さん見たことないの!?」
「俺もない」
「信じられない。お兄ちゃんまで……」
莉緒ちゃんは仕方ないな〜と言いうと、口を開いた。
「内容的には少女漫画的かな。簡単に言うと学校の王子様的な人がいて、その男の子には好きな女の子がいるんだけど、
その女の子とはクラスが違うからなのか、口も聞いたことがないし、面識もないの。
しかも女の子には周りに彼氏と思われるぐらい仲の良い男の友達がいて、主人公の男の子はいつもそれをただ羨ましく見てるしかできないって話」
主人公の男の子はなんとかその好きな女の子と共通点を持とうとするんだけど、なかなかそれが見つからないんだよね。
も〜、じれったいのなんのそのって!!思わずプロモ見ながら、気づいてあげて!!って叫んじゃった。
「しかもね、その彼氏と間違われる男友達が主人公の男の子の友達で部活も一緒なの。
だから部活の差し入れとかもその子が貰ってるの見て凹んだり、雨が降った時に傘を――」
莉緒ちゃんの話はそれ以上は続く事はなかった。
それはたぶん、私の右隣にいる海のせいだと思う。
だって、隣だけ空気が氷点下……
「おい、海。もしかして――」
涼は海の方を見ると、海は携帯を取り出し何処かへかけている所だった。
相手が話し中なのか、それとも出られないのか、なかなか海が口を開く事はない。
その間も海はテレビから目を離すことはしなかった。
というか、むしろ睨んでる。
ど、どうしたの!?なんか空気が不穏に……
『青春って感じがするプロモですよね。もしかして、聖くん自身の体験ですか?』
『いえ。実はこのプロモの主人公の男の子は、僕の友人がモデルなんです。傘のシーンなど所々実話なんですよ――』