間章 彼女の好きな人(上)
見ていた雑誌を芝生に置くと、寝転びながら携帯を取り出す。
そしてそれを弄り、画面に映し出された画像を見て顔の筋肉を緩めた。
これはこの間水族館に行ったときに撮ったもので、俺と桜音そして、その間にペンギンのキグルミが映し出されている写メだ。
……やっぱ、桜音可愛いな〜。
この時はいつもと違って髪を巻いてたし、メイクもしていて少し大人っぽく、いつもとは少し違っていて新鮮だったんだよな。
そのうえ大好きな水族館で興奮したのか、抱きついてきたりスキンシップが多くてやばかった。
まぁ、それも桜音が我に返るまでの間だけだったが。
「もしかして、桜音さんの画像でも見ているんですか?」
この声は……
「あなたにそう言う顔させるのは、桜音さんしかいませんから」
さっきまで空と雲しか映し出されていなかった携帯のバックには、女――いや、中世的な顔立ちをした男がいた。
色素の薄い髪が僅かに吹く風で揺れている。
――藤原千里。
こいつが俺の所に来るって事は、どうせろくな事ではないだろう。
前回は桜音にちょっかいをかけて、その事をわざわざ報告に来た。
今度は一体なんだよ。
「そんな怖い顔しないでください。こう見えても傷心中の身なんですから」
「傷心中?」
まさか、こいつ――
携帯をたたみ上半身を起こす。
「ええ。この前桜音さんに振られました」
「……そうか」
「つまらないですね。もう少し違う反応を期待したんですけど」
何も言えるはずがないだろ。
これが『告白成功しました』なら話は別だが。
「……それで本題はなんだ。まさか、慰めて欲しくて来たわけじゃないだろ?」
「気持ち悪い事を言わないでください。どうして僕があなたに慰められなければならないんですか」
「だったらなんだ。宣戦布告か?とにかく用があるなら早く話せ。悪いが、これから部活なんだ」
こいつの事だ。きっと他に何かあるはずだろう。
俺の所に来た理由が――
「宣戦布告なんて今さらじゃありませんか?」
「じゃあ、なんだよ」
藤原は、ほんの少し口角をあげると口を開いた。
「ほんの少しだけ意地悪をしに来たんです」
意地悪ってなんだよ。下らない。
てっきり、また桜音になにかしたんじゃないかと思ったじゃないか。
俺は立ち上がると、あいつの横をすり抜けようとした。
その時だった。あいつが囁くように俺の時間と思考を止める宣告をしたのは――
「あっ、そうそう。知ってます?――桜音さん、好きな人がいるそうですよ」
かなり久々の合鍵です。
待っていて下さった方いましたら、すみませんでした<(_ _)>
ブログの方にも書いてましたが、資格検定があったので、時間がなかなかとれなかったんです…(-_-;)
でわ、ここまで読んで下さってありがとうございました。