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合鍵  作者: 歌月碧威
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第三話 流れに身を任せるしかないのです

「おはよう。桜音、涼」

振り向くとそこには、これまた朝に相応しい笑顔を携えた在原の姿があった。

涼の無邪気な笑顔とは違い、こっちは洗練された大人って感じがする。

落ち着きがあるから、そう思うのかな。

もちろんそんな笑顔を見せられた周りの女の子達の様子が一変したのは言うまでもない。


「はよ〜。海、それに片桐も」

片桐?

涼の視線を追う。

在原の隣には、モデル体型の女の子が寄り添うようにいた。

すごい美人。こういうのって、クールビューティっていうのかな?

切れ長の目に、手入れの行き届いたロングの黒髪。

背は高めで、細いのに出るとこは出ている。

なんとも羨ましい体型だ。


あれ?この人、どっかで見たことある……

あんなに美人なのに、はっきり覚えていないのが悲しい。

どれだけ記憶力がないんだよ。私。

曖昧な記憶から名前をなんとか思いだそうとしたけどやっぱ無理。

仕方なく涼に視線を投げかけると、マネージャーだよ。と教えてくれた。

片桐麗香かたぎりれいか男子バスケ部の美人マネージャー。

部活の時、在原の傍にいるのを何度か見かけた事がある。


「おはよう。水谷くん。それから……」

その美人さんは、涼から私に視線を変えた。

「たまに水谷くんの試合見に来てくれる子だよね」

何回かしか行ったことないのに、覚えててくれてるんだ。

「逢月桜音です」

私はあわてて、お時儀をする。

勢いが良すぎたのか、鞄につけていたキーホルダーがガチャガチャと音を立てた。

「かわいらしい彼女だね」

口元に手を当てて、クスクスと小さく笑う。

彼女じゃないんですけど……

よく一緒にいるせいか、たまに間違われてしまうんだよね。

「ち――」

「行くぞ」

違いますと口を開きかけた瞬間、体が勝手に校舎側に動いてしまった。

な、なんなの!?

在原に手を掴まれ、私は引きずられるように連れていかれていた。

掴んでいる本人は、何が気に食わないのか眉間に皺をよせしかめっ面をしている。

「ちょ、ちょっと」

呆然としている涼と片桐さんの二人を残し、私たちはその場を後にした。







「もう、いい加減離して」

無理やり手を振り解く。

私は結局あのまま引きずられ、中庭まで連れて来られた。

いつもは賑わっているこの場所も、時間帯のためか誰もいない。

なんなのよ、一体。

在原は、無言で腕を組んでこっちを見ている。

「彼氏のくせに彼女置いてきちゃ、マズイでしょ!?戻ろうよ」

何も言わないでこんなとこ来て、絶対に彼女変に思う。

クラス替えの表も見なくてはならないし、とにかく学校の中に早く行きたい。


「チッ」

私の何が気に障ったのか舌打ちが聞こえたかと思うと、いきなり右ほっぺを掴まれた。

「いひゃい」

「この口か?片桐の事を彼女だと言った口は。あいつが勝手に俺に付きまとってきてるだけだ。付き合ってなんていない」

えっ、違うの。だって、そういう風に見えたんだけど。


「それに俺は――」

在原は何かを言いかけたかと思うと急に、

「そういや、おまえあの時、涼の彼女って言われて否定しなかったよな?」

と言いながら、空いた手でもう片方を掴まんできた。

あれは貴方が無理やり引っ張ってきたせいじゃん。

そう言いたいのに、口が言うことを聞いてくれない。


「今度から、否定しろよ。わかったか?」

涙目で頷くと、やっとほっぺが解放された。

っだ〜痛い。

痛みを紛らわすため、さする。

気休めにもなりゃしない。


なんで怒られなきゃならないのよ……

もしかして片桐さんの事苦手なのかな?





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