Special Thanks小説 クリスマス 前編(海視点)
前回言っていたお礼小説の前編です。
*二人はもうすでに付き合っている設定です。
*ネタばれになるかもしれませんが、この二人本編では今のところ、クリスマスを一緒に過ごせない(予定)かもしれないのでパラレルと考えて下さい。
もう寝ているよな。
さっき部屋を出る時に時計を確認したときは、午前三時を少し過ぎていた。
この時間なら確実に寝ているだろう。
手に持つ紙袋を手に、隣の部屋のドアノブに手をかける。
付き合う前は言われる通りちゃんと鍵をかけたあった部屋も、今ではすっかり無防備になっているのですんなり入る事が出来た。
物音をたてないように静かに壁際のベットまで進む。
幸いな事にカーテンからもれる月明かりによって、視界は悪くない。
覗き込んで見ると、俺が部屋に侵入しているのにも気づかず桜音はすやすやと寝ていた。
それを確認すると、手にしていたものをそっと枕もとに置く。
「メリークリスマス、桜音」
起こしてしまわないように小さい声で呟くと、片手をベットにつき屈むような態勢をとった。
そして可愛い彼女の額にかかる柔らかい髪を手で優しく払うと、そこに唇をおす。
やっと念願叶い、カレカノとして桜音と初めて迎えるクリスマス。
驚かせたくてこうして夜中に部屋に忍び込み、サンタのまねごとをしている。
桜音と出会う前の自分なら考えられない行動だ。
誰かの為に何かをするなんて。
きっと驚くだろうな、桜音。
朝起きた時の反応を想像してしまい、顔が綻ぶのが自分でもわかる。
だがそれも、桜音の寝言で一気に崩れ落ちた。
「…りょう……ちゅー……の」
俺の名前じゃなくて、他の男の名前――その上キスだと!?
一瞬で頭に血が昇る。
たとえ夢の中でも許せない。
「起きろ!!桜音!!」
急いで揺すって現実の世界へと呼び戻す。
「……ちゅー……だめ……い」
「桜音!!」
一刻も早く夢の中から起こすため、さっきより強く揺する。
そのかいあってか、桜音がゆっくりと目をあけ寝ぼけ眼でこっちを見た。
「……かぃ?」
桜音がおぼろげながら俺を認識したので、無理やり唇を塞ぐ。
夢の中だとしても、桜音が他の男とキスするなんて冗談じゃない。