第二話 悩める少女
久し振りに見た校庭の桜は、もうすっかり見ごろだった。
普段の私なら、花見だ〜と騒いでいる所だが今はそれどころではない。
この頭の中に棲みついている問題をなんとかしなければ。
「はぁ……」
新学期初日だというのに、本日何度目か分からない溜息を吐きだす。
別に在原海個人が嫌いってわけじゃないよ。
それに好き嫌い言う前に、よく知らない人だし。
てっきり女の子との同居だと思っていたのに、あてが外れてしまったのが嫌なのだ。
女の子同士ならある程度生活パターンが似ているはずなのに、それが男の人との生活となるといろいろ面倒になる。
だってジャージ姿でゴロゴロしてるのとか、髪ボサボサの寝起きとか見られるんだよ?
キチンとした生活送れって事なのかな。
「……音」
でも家でぐらいダラダラしたい。
とりあえず一緒に住むのは一週間後だか――
「さ〜く〜ら〜ね〜!!」
急に呼ばれた自分の名前のせいで、思考が途絶えてしまった。
鼓膜が――
キーンとする左耳を押さえ、叫んだ主を睨んでやった。
こんなことをするのは、一人しかいない。
「涼っ!!」
水谷涼。私とは中学からの男友達。
涼とは中学からずっと同じクラスで、今までいっぱい助けてもらっている。
お互い家族ぐるみの付き合いで、涼は半ば私の保護者代わりだ。
いつも明るくて、太陽のような人。
そんな性格の為、人見知りをしないなんとも羨ましい性格をしている。
「おはよう」
バスケ部なので背が高い。涼の身長は、180㎝。
私は155㎝だから結構差が大きい。
そのため涼の事を見上げる形になっちゃうので、たまに首が痛くなるんだよね。
涼はさわやかな朝に相応しい笑顔を撒き散らしていた。
「も~、おはようじゃないよ。朝から、耳元で大声出さないで!!」
「悪い。悪い。何回呼んでも返事しないからさ」
「そう怒るなよ〜」と言いながら、頭を軽く撫でてきた。
あ〜、呼んでたんだ。全然気付かなかったや。
「……ごめん。ちょっと考え事してたの」
「そんな考え込まなくても、大丈夫だって」
「そうかな」
「そうだよ」
涼にそう言われるとそんな気がしてくる。
なんか不思議。
っていうか、涼ってこの事知ってたっけ?私、言ってないよね?
「そんな考え込まなくたって、きっとまた同じクラスだぞ」
は?同じクラス?在原海との同居の事じゃないの?
「あっ、忘れてた」
うちの学校は二年になると、理系文系に分ける為にクラス替えがあるのだ。
もちろん私は数学苦手なので、文系。
やばい、急いで掲示板に行かなきゃ。
「早く見に行こう!!」
私は涼の腕をつかんで引っ張った。
考えるのは、後でいいや。
そんな事より今は、クラスのメンツの方が気になる。
みく達と同じクラスだといいな〜。
そんな時だった。
ざわめきと共に、私を悩ますあの人が現れたのは。