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合鍵  作者: 歌月碧威
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第十四話 捕らえられたお姫様

少し前を歩く人物は後ろを振り返ると、私が付いてきているかどうかを確認した。

まったく、これで何度目だろう……

前を歩く人――岸君に少しうんざりしながらそれでも足を進め着いて行く。


「岸君、ちゃんと着いて行くから大丈夫だよ。そんなに心配なら、やっぱりいつもの通り隣歩くよ?」

そっちの方が自然だし。

「だ、ダメだよ!!絶対一メートル以上距離置いて。これは絶対守って!!いい?わかった?」

手で壁を押さえるようなしぐさをしながら、こっちに来るなと言わんばかりに強制的に距離を取らされる。

それなら何度も確かめないで欲しい。



朝、教室に行くとD組の岸君が待っていた。

思えばその時から様子がおかしかったんだよね。

だって両手で握り拳を作って教室の前で棒立ちしてたんだよ?

それ見たみくなんかは、「ちょっと!!こんな所で告白!?」なんて騒ぎ始める始末。

話を聞くと委員会が緊急に決まったらしく、わざわざ呼びに来てくれたそうだ。


「一昨日保健委員会あったばかりなのに、一体なんの用なんだろうね」

「……。」

岸君は何の反応も示さずにそのまま歩き続けている。

声の大きさ的に聞こえたよね。

もしかして無視?

気まずい雰囲気に耐えきれず、いつものように何気ない会話をしようとしたのに。


委員会仲間として結構仲良くしてもらっているはずなのに、今日の岸君は私とやたら距離を置こうとしているように見える。

まるで私と関わりたくないように。

もしかして嫌われちゃったのかな……?





足を進めるにつれて、人の気配が遠ざかって行く。

本館と西校舎を繋ぐ廊下ぐらいからすれ違う人が居なくなってきた。

西校舎は視聴覚室などの特別教室や空き教室ばかりだからあまり人が来ない。

その為ものすごく静かで二人の足音だけが響く。


「岸君ここなの?」

足はLL教室の前で止まった。

あれ?なんか変。

ドアの前に立つとおかしい事に気づいた。

ドア越しに人の気配がまったくしないんだけど。

二・三人なら気付かなくても済むけど、委員会だから大人数のはずだ。

それならすぐにわかる。


「逢月さん、先入って」

入りたくない。ううん、入れない。体が拒絶して動こうとしないよ。

誰だって危険だと思った所にわざわざ自らのり込んだりしない。

「早く」

初めて本能というものを認識したのか、先を促す岸君に首を横に振り拒否した。


「ごめん逢月さん!!」

「――は?」

じれったくなったのか岸君がドアを開け、入りたくない領域に私を放り込んでしまった。

手と足に絨毯の感触と少しの痛みを感じる。


「痛い……」

なかなか中に入ろうとしない私に業を煮やしたのか、あろう事か岸君は突き飛ばしたのだ。

その上廊下を走る音が聞こえたから、たぶん逃げたんだと思う。

突き飛ばした上に逃走って酷いよ、岸君。


一体何がしたかったの?

そんな私の疑問は、すぐに消える事となる。

ドアの閉まる音に鍵の掛けられる音――

そしてドアの前で私を見下ろしている人を見た瞬間に。















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