表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
合鍵  作者: 歌月碧威
22/112

第八話 嵐の前のいちゃつき?

今回少し長いような気が…

「やっ!!離して!!」

「桜音、そんなに暴れて暑くないのか?」

暑いよ。暑いに決まってるじゃん。

「だったらこの腰に回した手を離してよ!!」

「離したら逃げるだろ」

そりゃあ、逃げるに決まってるでしょ。

だってこんな状況が続いたら、心臓が持たないもん!!


外にいるからたまに風か吹いて涼しいけど、夏だしそれにこの状況がより暑くさせていた。

海は体育座りをしているような格好で、足と足の間に私を挟んで抱きしめている。

なぜかメールで呼び出されたのは屋上。

壁にもたれて寝ているのかな?と思って近寄ってみれば、こうなってしまった。

何度もがいてもそこから脱出する事は出来ない。


「今、授業中なんだけど!!」

「どうせ自習だろ?」

「海だってあるでしょ!?」

「俺らも自習。そんな事より昨日買ってきた服って、俺とのデート用って本当?すごい時間かけて選んでくれたんだって?」

デート……?土曜に出かける事を言ってんの?

付き合ってないからデートって言わないんじゃ……

「っていうか、なんで知ってるの!?」

海が迎えに来てくれた時言ったっけ?

昨日、日下部君と千里ちゃんとあの後、ご飯食べたりなんだかんだして少し遅くなってしまった。

そしたら海が駅まで迎えに来てくれた。

駅から家まで徒歩五分だから近いんだけど、夜道の女の子一人歩きは危ないからって。

そしてなぜか暗いからっていう理由で手まで繋いで帰った。

街頭あるから転ばないのに。


「悪ぃ。言ったの俺。昨日お前と遊び行ったって口滑らせたらこいつ機嫌悪くなってさ〜」

そう話したのは、うちわで仰ぎながら上半身をあられもない姿でいる日下部君だった。

「服着てよ!!」

慌てて日下部君から視線を外す。

「暑ぃんだよ。だだでさえ気温が高いのにお前らがいちゃついてるから、ますます暑い」

「いちゃついてなんかないってば!!」

日下部君のその台詞に早く海から離れようともがきまくった。

すると逃げられないように片手を私の腰に回し、空いたもう片方の手で髪を梳くように頭を撫でてくる。

うっ。私頭撫でられるのに弱んだよね……

あんなに暴れてたのに、すぐに大人しくなってしまった。


「桜音はこうされるのが好きか?」

だって頭撫でられるの気持ちいいもん。

「……すき」

体の力を抜き海にもたれるように身を預ける。

海が一瞬体を固くしたかと思うと、ふいに手の感触が消えてしまった。

「海、もっと〜」

「――っ」

もっと撫でて欲しくて、海におねだりした。

だってもっと撫でて欲しいんだもん。

すると頭を撫ででくれるどころか、なぜか強く抱きしめられ海の胸に埋まってしまった。

ワイシャツのゴワゴワした感触を感じる。


「何!?何も見えないんだけど!?」

視界は白一色。

「――わいすぎる」

は?海が何か言ったらしいが良く聞こえない。

なんとか頑張って顔を見ようとしたら、

「桜音、今こっち見ないでくれ」

と言われて頭を手で固定されてしまった。

なんなの一体。

あれ……?


「海」

「何?」

「大丈夫?」

「何が」

「心臓の音すごいけど?」

「――っ」

海の返事の代わりに、日下部君の笑い声が聞こえてきた。

「残念だな、お前。今、海すげぇおもしろい事になってっぞ?

しかし、これを全校生徒に見せてぇ。クールな王子の意外な一面って学校新聞の一面飾れるぞ」

「えっ、見たい」

見たいけど視界は相変わらずのまま。

「ちょっと待て、今写メを……」

「撮るな」


――バタン


海の低い冷たい声と共に聞こえたのは、ドアの閉まる音だった。

ばたん?

「……って!!今誰か居たの!?」

この状況を見られたのなら、早く口止めを――!!誰だかわかんないけど誤解なんです!!

ようやく緩められた腕から抜けだし、海達を見るが一向に焦る様子がない。

「居たっていうより、覗いてたが正解だな」

「あれは覗いてたっうより、ただ入れなかっただけだろ」

「何でそんなに二人共冷静なの!?」

「あ〜心配しなくていい。あいつは誰かに言うとかはしねぇよ。っうか出来ねぇ」

「日下部君知ってる人なの?」

「あれはお前も知ってる奴だ」

……知ってる人?


「今頃見たこと後悔してるはずだ。これでやっと俺と状況が対等だという事がわかるだろ」

海はあざ笑うように言葉を吐き捨てた。

海も知ってて日下部君も知ってる人って事は――

「涼?」

「なんで涼なんだ」

「水谷なら遠慮せず入ってくるだろ」

「言っておくが俺はあいつと直接面識はない。ただ通りすがりざまに睨まれたり、優越感に浸ったような目で見られるだけだ」

えっ、それって嫌われてるんじゃないの?

「嫌いだろうな」

心が読めるのか?今私が思ったことを海が口にした。

「嫌うっうか、ライバル視だろ」

「どうでもいい。とにかく渡すつもりはない――」

そう言って未だ離していなかった腕に力を込められ、また海の方向に体を寄せられてしまった。

何を渡すつもりはないんだろう?










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ