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合鍵  作者: 歌月碧威
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番外編 Sweet×sweet×honey ~お邪魔虫は突然に~ 前編

お久しぶりの合鍵です。

期末試験が終わって最初の休日。

私は海の住んでいるマンションに訪れていた。

テスト期間も終了して海も今日は部活がないということで、久しぶりにまったりと過ごす予定なんだ~。

というわけで、これからDVD借りて来てついでにコンビニでお菓子とか飲み物とか買いに行くの。


――……って、レンタルショップ行こうって言ってから、かれこれ十分ぐらい経ってるんですけど。


「海っ!!コンビニにお菓子買いに行くんでしょ!?DVDもまだ借りてきてないし!!」

私を膝の上に乗せ、まるで大きいヌイグルミでも抱いているかのように私の腰に手を回し拘束している彼氏にそう告げるけれど、離してくれる気配が全くない。

むしろ、止まるどころかヒートアップしている。

最初は頬にキスされたかと思うとその範囲が段々移動され、髪だったり私が海の拘束を解こうとしていた手だったりと様々な場所へと変わっていく。

どうやら海のキス魔スイッチが入ってしまったようだ。


「桜音が先。テスト期間中、ずっと自重していたから」

たしかにテスト前の勉強中やテスト期間中は、私に勉強を教えてくれてこういう時間は無かった。

その海の特訓のおかげで、結果結構良かったんだ。


「なぁ、なんで桜音ってこんなに可愛いんだろうな」

「えっ!?私可愛くないもん……可愛い子いっぱいいるよ?みくとかさ。しかも、みくってスタイル良いし可愛いし明るいし。それにね、すっごく――って、ちょっと!?」

みくについてちょっと語り出していた私は、話の途中で起こった出来事に思わず叫び声を上げると、体を横に捻って顔を上げ海の方を見た。


だ、だって……急に耳元にキスされたんだもんっ!!そりゃあ、驚くでしょ!?


「桜音。佐々木の話は今日は辞めてくれ。だって、せっかく二人っきりなんだぞ?テストも終わってゆっくりいちゃつける。だから、佐々木なんかの話なんかしないで今は俺の事だけ見て」

「……海」

「俺は桜音とこうするのを楽しみにしてたんだ。それに、噂をすれば影がさすって言うだろ。佐々木が急に来たらどうするんだ?あいつに桜音取られて、俺がいちゃつけないじゃないか」

海はクスクスと笑うと、私の髪を梳くように撫でていく。


「も~、海ってば。みくがここに一人で来るわけないよ。約束しているとかなら別だけど」

もちろん、みくも海のマンションがある場所を知っている。

日下部君や涼達などメンツは違えど、前に何度か一緒に海の部屋で遊んだ事があるから。

だから前もって約束しているなら来ても不思議じゃないけど、今日は約束もしていないから来る予定はないはず。


「そうだよな。そんな事あるわけな――」

海がそう言いかけた瞬間、来客を告げる音楽が室内へと流れ込む。

そのゆったりとしたオルゴールのメロディーとは打って変って、海の表情は瞬時に険しくなっている。

そんな彼の態度に私は首を傾げた。

その上いつもならすぐにドアホンで確認するのに、この日に限って海は全く動く気配がない。


「海……?」

「嫌な予感がする」

「え?」

ここはセキュリティがすごく強化されていて、マンションの玄関の所まで来るのにいくつかのセキュリティをクリアしなければならない。こちらのドアホンがなったのだから、きっと来客はエントランスのインターホン前にいると思われる。


「私、出ようか?」

「いい。居留守使おう。なんだか、嫌な予感しかしないんだ」

「でも――」

宅配の人かもしれないし、他に海に急用があったお客さんかもしれない。

だから一応姿だけでも見た方がいいような気がする。

私が口をつぐんでいる時、もう一度メロディーが流れた。


それに観念したのか海は立ち上がると、「……桜音はここで待ってて」と言ってリビングの壁に備え付けられているドアホンの方まで歩いて行った。

そしてその画面を見ると、無表情のまま今度は寝室やゲストルームがある部屋へと続く廊下の方へと行ってしまう。


あれ……?


すぐに海は戻って来るって思ったんだけど、なかなか戻って来ない。

気になって海の元に行こうとしたら、私の携帯が鳴ってしまい足止めされてしまう。

誰だろう?と画面を見ると、みくだった。


「もしもし?」

「あ、桜音。昨日、旦那のマンションでDVD見るって言ってたわよね?もしかしてマンションに居ない?」

「は?旦那って、私結婚してないよ?」

「んな事知ってるわよ。あの桜音バカの事よ」

「あ、うん。いるよー」

私がそう告げると、みくは舌打ちすると「あいつ、居留守使いやがったな」と吐き捨てた。


「桜音。家デート中悪いんだけど、頼みがあるの。あいつにアタシに勉強教えてくれるように頼んでくれない?私、追試入ってんの!!」

「……みく。前回海に怒られたよね?」

「わかってるわよ」

みくは前回のテストでも追試だった教科が何教科かあったんだけど、その勉強を海に教えてくれるように頼んだ事があったの。

あの時たしか、私と海遊園地デートに行く予定だったっけ?


予定があったから海はかなり渋った。

それでもみくと私と、それから同じ追試を受ける予定の日下部君と三人がかりでの説得。

そのかいあってか、「今回だけはしょうがないが、二度目はない」って言って引き受けてくれたんだ。


「みく、さすがにキツイかも」

だって、前回の追試勉強の時の海怖すぎたもん。

でも、なんだかんだで優しいから引き受けてくれるんだよね。


「そこは困った時の桜音よ。あいつ、あんたには弱いから。だからね、協力して。ちゃんと作戦があるのよ」

「うん。もちろん、協力できるのはするよ。みく今何処?海に聞いてみるから」

「あ、下。もうエントランスまで来てんの」

「ええっ!?」

私はリビングにあるモニターへと走った。









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