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合鍵  作者: 歌月碧威
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もう一つの合鍵をキミに 3

海ってば、一体どんなクッキーを……?

でも、どんなのでも海が私の為に作ってくれたのなら嬉しいって思う。

それが苦手なお菓子作りならなおさらだ。


なんか悪戦苦闘する海を想像すると、可愛いかも~。

だって、絶対にボウルとかひっくり返してそうだもん。

お料理手伝ってくれる時もそうだったんだよね。

なんでも器用にこなすのに。

そう思ってたら、思わず笑っちゃった。


「桜音?」

「ごめん。なんか、海のそういうところも好きだなって」

そう言って胸にもたれかかり海を見上げると、ぽかんとしていた海の表情がみるみるうちに真っ赤に染め上げられていく。

あれ?耳まで真っ赤だ~と思ったら、なんか震え始めちゃっている。

寒いのかな……?


海の不自然な様子に問いかける間もなく、私は強く抱きしめられたかと思うと体がきゅうに宙に浮くような感覚に包まれた。

どうやら私は海に抱きかかえられてしまったみたい。

私はそのまま海に教室の外へと連れて行かれそうになってしまった。


「おい、海。逢月は授業までは戻せよ~」

手を振り見送る日下部君がものすごく速く小さくなっていく。

そんな光景を見ながら、私はただ何処に行くんだろう?と他人事のように思っていた。







空は晴れ渡り、時折温かな春の風が吹き抜けている。

屋上だから何の障害もないので、その風をよりよく感じるのかもしれない。

このまま眠ってしまいたくなるようなそんな日差しの中、私はただ、自分を抱きしめている人に縋りついていた。


こういう事だったのか。そう気づいた時には遅い。

私は学習能力がないのか、いつも後で気づく。


「が、学校ではキス禁止って言ったでしょ!!」

「ん?」

海は目を細めて笑いながら、私の頭を撫でる。

うぅ。またそうやって弱点を……


「誕生日おめでとう。桜音」

そんな耳元での海のささやきに、体温が一気に上昇してしまった。

駄目なのに!!そう思っても勝手に体が反応してしまう。

だって赤くなったら、なかなか戻らないもん。

これから数分後に授業だから、顔赤いとみくに絶対に突っ込まれちゃうじゃんかっ!!


「あ、ありがとう」

「学校早く終わって欲しいな。そしたら、桜音とゆっくり出来るんだが……」

「まだ、1限目すら始まってないよ?」

「そうだったな」

「そうだよ」

二人して額をくっつけクスクス笑いあった。

海と付き合って、本当に些細な事にすら笑うようになっていった気がする。

こうして海と一緒に時間を過ごせるのはどれくらいなんだろう?って時々頭によぎり、不安になっちゃう。

海はお兄ちゃんに結婚とか言ってくれたけど、この先いっぱいいろんな人と出会う事になるはずだ。

綺麗な人だっているし、家柄だってちゃんとした人もいるはず。

海がそっちの人を好きになることだってあるから。



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