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ウスイカメンノハズシカタ  作者: てらうえーい
2/2

期待

ー2ー

「えーと、座ったらどうかな、茜原さん」

名前を呼ばれてドキッとした。昨日までの案件のせいと、この男の話がくだらないせいだろうか、つい寝てしまったようだ。

とはいえ悪いのはこちらの方だ。茜原巴は正直に謝った。

「ん、ごめん寝てた」

その言葉にギャーギャー噛み付いてくる、ええと、そうそうローレンとか言ってたか。

「失礼、追い出しましょうか?」

隣にいる殺意が全面的に押し出された女が言う。むしろ帰りたいのは山々なのだが、ローレンが必死に止めている。

「戸惑ってなんかいない」

巴は、はっきりとした口調で言った。

「ローレン・メディッチ。あなたのこの依頼は間違いなくこの社会を混乱に叩き落す」

そう言って私は依頼内容を確認する。

薬物による肉体開発、早い話が戦争という試合で使われるドーピング。

この程度ならどこかの国で、すでに開発中だろう。ただ他と違うのはその薬が安全性•即効性に優れているということ、そして何より大量生産できるということ。

依頼は、この薬の生産ラインを確保に対する障害の排除。

開発されれば、犯罪も過激化するであろうこの計画を、全員が受け入れる訳がない。

危険だな、断りたいなー。

「一緒にこの世界を変えましょう」

この男はなんとかしなければ、ならない。

そう思いながら、私は薄い仮面を見つめ続けた。

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