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腐ってもタイ! 連載版  作者: 中村沙夜


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魔竜との会談④ とりあえずの終了

 ヤヒコのくすぐりによりぐったりしたランドルは、どこからか調達されてきた鳥籠に放り込まれることになった。そして、生産系スキルを持った数人の手によって、ドーナツ型の桶が作られ、水が満たされる。どういう仕組みかは知らないが、中で水がぐるぐる回るようにしたらしい。円形の小型流水プールと言えば解りやすいだろうか。鳥籠はその中心に据えつけられた。これで流水を渡れない吸血鬼を閉じ込めることができたはずだ。

 しばらくは籠の中で目を回していたランドルだが、目を覚ますと途端に籠を揺らして暴れ出そうとした、が、籠の周囲が流水であることを知ると、大人しくなり、籠の中の足場にぶら下がった。

 西門で暴れていた吸血鬼達はプレイヤー達が炒り豆を使用したこともあり、すでに撤退したとのこと。そうなると、プレイヤー達の考えることはひとつだった。

『こいつ、どうしよう』、である。






「でも、良く捕まえられたわねえ……」

 半分感心、半分呆れた顔のエリンが鳥籠を眺めながら言う。何とも予想外の展開だ。

「いや、俺もまさか本当に捕まえられるとは思ってなくて……」

 ヤヒコは頭をかいた。相手があそこまで隙だらけだとは思わなかったのだ。

「なあなあ、ヤヒコ。こいつと勝負してみていいか?」

 黒狼は興味津々の様子で籠の中のコウモリを見ている。確かに吸血鬼は炒り豆抜きならとんでもなく強い相手だ。

「駄目だ。こいつを籠から出して、逃げられちまったらどうすんだ」

 ヤヒコは黒狼を籠から引き離す。放っておくと勝手に色々しかねない。いつも黒狼の面倒を見ているはずのアルトは席を外しているので、ヤヒコが止めるしかなかった。


 ランドルが捕まってから、魔竜との会談は再開され、今回の魔族との闘争に関しては双方不干渉、あとは今後のことを考え、お互いの交渉の窓口を設置することで合意した。細かいところはこれから詰めなければならないが、一応の方向性は決まったので、今回の会談はこれでお開きということになった。

 2匹の魔竜は会談の後、《始まりの町》を散策し、用意された土産を持って帰還していった。帰って一族内での話をまとめ、また近いうちに交渉しに来るとのことである。

 魔竜は帰還したが、主要ギルド会議は終了できなかった。ヤヒコがランドルを捕まえてしまったせいである。

 会議は今、彼の処遇について紛糾していた。

 これはある意味チャンスでもあり、ピンチでもあった。現在対立している魔族の少なくとも吸血鬼に対しては有利な交渉カードを手に入れたことにはなるが、主人を捕らえられた手下の吸血鬼達が一体何時ランドルを取り返しに来るかわからないのである。現在《始まりの町》はいくつもの攻略ギルドから出された人員によって警戒態勢が敷かれていた。黒狼も先程までは町内の警邏をしていた。


「身柄と引き換えに攻めてこないようにしろ、とか交渉できねーのかなあ」

 ヤヒコはぼやく。捕まえた当人であるとはいえ、会議に出られるような身分ではないため、彼の発言権は実質ゼロだった。低レベルソロの悲しい境遇である。

「それは難しいんじゃないかしら。ランドル、ですっけ? この吸血鬼の今までの言動から察するに、性格的にもそういう条件呑んでくれそうにないじゃない。絶対怒って仕返しに来るでしょ」

 エリンは串に刺した果物を籠の隙間から中に入れるが、ランドルはつーんとそっぽを向いたままである。彼は捕まってからというもの、何も飲み食いしようとせず、プレイヤー達を困らせていた。

「もしかしたらコウモリ姿のまま捕まってるのが不満なのかもしれないけど、人型にすると何するかわからないし、どうしようもないわよね」

 何よりも、吸血鬼との交渉窓口がないのが痛かった。一体どこの誰と話し合いをすればいいのか見当がつかないのである。

 結局会議では結論は出ず、吸血鬼の出方を待つ、ということになった。

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