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腐ってもタイ! 連載版  作者: 中村沙夜


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大魔術師のセカンドライフ⑤ 島内観光 ~ホーネット書店~

 早速アマンダの店で購入したお洒落着――魔術師用ケープにシャツにズボンにブーツ――に着替えさせられ町を歩くヤヒコ。白銀などは、とてもお似合いでござる、などと言っていたが、元々ファッションに疎いヤヒコにはよくわからない。

 というか、NPCの審美眼の基準が良く解らない。何を持って美醜だの似合う似合わないだのを決めているのだろう。どうもここの運営は謎が多くて困る。

 ローブではなくなってしまったので、福助はおまけにつけてもらったベルトポーチに入れることにした。中々居心地良さそうにしている。鞄もケープでは背負えないので取っ手を引き出してキャリーケースモードで持っていくことにした。アマンダさんがうらやましそうにしていた。ここらでは見ないタイプの鞄なのだそうだ。ファンタジー世界なので仕方ないだろう。






 通りに軒を連ねる店先を冷かしていると、魔術師装備の他にも中々面白い物を売っていた。スケルトンが生前の人間の姿に一定時間戻れるアクセサリー、設置した壁をレイスが通過できなくなるというタペストリー。あの炎が青い蝋燭も売っていたので、土産に買ってみた。これからの暑い季節にいいかもしれない。

 そんな店の中にあったランプ屋の軒先に、可愛くデフォルメされたオバケの形をしたランプが吊るされていた。それには『ゴースト型ゴースト除けランプ』という札がつけてある。

「ゴースト除け……? ゴーストって何ですか?」

「私達レイスのように死後に自我を保つことができなかった死霊のことですね。生者にも死者にも危害を加えてくる困ったモンスターなのです。主にそこら辺をうろうろしたり良くないことのあった場所にたむろしたりしますが、私達のようなアンデッドの多く住む場所に寄って来る習性があるんです。なので、町の周辺や各家ではこういったゴースト除けを置いているんですよ」

「へえ……」

 床に置いても吊るしても使用でき、中に普通の蝋燭を入れて火をつければそれだけで機能する魔術具らしい。ヤヒコもいくつか買ってみた。どこかへ出かけた先での防犯にもなるだろうし、エリンや槐の店の軒先に吊るすのもいいだろう。


 しばらく店を冷かしながら歩いていると、段々通りのおしまいに近づいてきた。

「通りの一番先にあるあの大きな建物はホーネット書店です。魔術書の専門書店なんですよ。人族のひと達が普段使う魔術の本もありますし、それ以外の種族用の本もあります」

 サリーの指し示すその先には10階建ての建物があった。軒先に蜂の意匠の看板が下がっている。

「1階は雑誌や一般的な本で、2階から上は階ごとに属性別に魔法書が売られてるんです」

「ちょっと見てきていいですか?」

「はい、いいですよ。私は1階で本を見てますから」

「拙者は外で軽く体操してるでござる!」

「やめろって。無属性に確か身体強化魔術とかあったから、それの本探してればいいんじゃないか?」

「それはいい案でござるな!」

 どうにか白銀を店の迷惑にならないように片付けたヤヒコは、自身も本を探すために店内案内板を見る。階段の横に設置されたそれには、2階から9階まで順に地・水・火・風・雷・光・闇・無属性と分類されていると書かれていた。

 このゲームには魔術や属性の取得制限はないため、理論上は全魔術が使用できるようになる。そのかわりにとんでもなく労力と費用と時間がかかるが。ヤヒコも最下級魔術は全属性について学習済みだった。

 まずは階段横に設置された小型の転移魔法陣に乗って9階まで向かう。水中でも使い勝手の良い、《ショックウェーブ》より高威力の無属性魔術が欲しいのだ。

 イリーンベルグの図書館でも色々探したのだが、水属性以外はどの属性も一番威力の低い魔術書しか置いていなかった。水属性も中威力までである。それ以上になるとリンデンロウまで行かないと見つからないと司書に聞いて、困っていたのだ。

 棚の間を歩いていると、やたらと騒がしい声が聞こえる。何事かと近づくと、『身体強化魔術書フェア』と書かれた吊るし看板の下で白銀と別のリビングアーマー、そしてデュラハンが楽しそうに語り合っていた。ヤヒコはそっとしておくことにした。

 棚に並べられた魔術書は半分ほどが一般人でも読める普通の文字で、もう半分は恐らく他種族の独自言語なのだろう、読むことができなかった。中には龍語で書かれた物もあったが、なんにせよ辞書と首っ引きになること大請け合いであった。

「今急いで買うよりは、今日は品揃えをチェックするだけにして、図書館の方も見てまわってから何買うか決めたほうが良いかもな」

 もう一度白銀の様子を見に行くと、白銀を含む3人は騒音のかどで揃ってレイスの店員から叱られていた。ヤヒコはやっぱりそっとしておくことにした。

 その後、ヤヒコは各階を順繰りに見てまわった。イリーンベルグになかった水属性以外の中級魔術書も売ってたので安心した。値段は高いが、またお金を貯めてから買いに来ることもできるだろう。

 1階に戻ると、既に白銀とサリーは合流していた。

「すみません、お待たせしました」

「大丈夫ですよ。何か良いご本はありましたか?」

「色々欲しいものはありましたけど、明日は図書館に行こうと思うので、そちらを見てからにします」

「わかりました、では行きましょうか」

 外に出るともう日が傾いている。他のところを回るのは時間的に無理だろうということで、ヤヒコ達は館に戻ることにした。






 ヤヒコが部屋に戻り、居間の机の上に目をやると男の生首がカッと目を見開いていた。

「うぎゃあああああ!」

 思わず悲鳴を上げたヤヒコの目の前で生首は楽しそうに笑い、壁をすり抜けてきたレイスのメイドに回収されていった。

 落ち着いて考えてみると、今のは朝に訓練場で会ったデュラハンの首だ。ヤヒコが帰って来るのに合わせて悪戯しに来たのだろう。何とも油断のならない宿だった。

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