黒霧の騎士① 出現
※運営からのお知らせ※
『ソード&マジック・ファンタジアストーリー』をプレイしていただき、ありがとうございます。
この度、ゴールデンウィーク並びにこどもの日に因み、期間限定クエストを開催いたします。
日頃皆様が駆け回るこの世界に、何か大きな事件が起きようとしているようです。
皆様の力を合わせ、事件を解決し、世界に平穏を取り戻してください!
その日、ヤヒコがマックス君と卵の争奪戦を繰り広げ、浜辺へ上手いこと逃げ出した時のことである。
浜に、見知らぬ人影があった。
それはがしゃ、がしゃ、と耳障りな音を立てながら、ゆらりゆらりと近づいてくる。
ヤヒコは目を凝らしたが、その者の輪郭は不自然にぼやけ、ずいぶんと大柄な、2m以上はある人型であるという以外の判別がつかない。前後左右に大きくふらつきながら歩くその姿から、間違いなくプレイヤーではないことだけが判る。
「……ぼやけてるんじゃなくて、黒い煙か霧みたいなのに覆われてるみたいだな。モンスターか? 動き方ゾンビっぽいし」
少なくとも今までに行った場所でこのようなものと出くわしたことはない。
ばしゃん!
鯛子が水球をぶつけるも、少し仰け反った程度で、ソレの歩みが止まるわけではなかった。
背後をちらと見ると、マックス君がいない――否、森の中で気配を殺し、様子を窺っているらしい。
「《ファイアアロー》!」
ヤヒコが覚えたばかりの下級火魔術を食わらせても、まともなダメージが通った様子がない。アンデッド系ではないのだろうか。
ある程度双方の距離が近づいたところでソレの動きが止まった。
どうやら、全身に黒い霧を纏わりつかせた西洋鎧姿であるらしい。騎士の類だろうか――ヘルムの隙間から見えるはずの目が見えない。鎧の隙間からも霧が出入りしているようだ。
背後をちらと見ると、マックス君がいない――逃げたらしい。
「あの蛇野郎……。何にしても近づきたくねーな、なんか呪われそう……」
そう呟くヤヒコの前で、ソレはゆっくりと剣を抜いた。よく見れば帯剣していたらしい。ロングソードのようだが、纏わりつく黒霧のせいで形状が判別し難い。
互いに距離を保ちつつもじりじりと半円状に動き……ヤヒコの背側に海が来た。
ヤヒコが騎士に背を向け海へ駆け出すと同時に、騎士は剣を振るった。
海に飛び込み、間一髪のところで背後からの『何か』を躱す。斬撃の届く距離ではなかったはずだ。
騎士を見ると、波打ち際からまた剣を振るうのが見える。
いつの間にか壺から飛び出していた鯛子に深みに引きずり込まれるヤヒコの眼前で海が割れた。
「! 衝撃波!?」
鯛子の背に乗り、もう一度海面に上がると、すぐに衝撃波が飛んできた。敵が剣を振るのと海が割れるのと以外に目視の方法がない、厄介な攻撃だ。しかし、鯛子の回避行動のほうが早い。これがもし陸上のことであったら、間違いなく避けきれなかっただろう。
衝撃波の射程は5メートル程度のようだ。低レベルであることに加え、後衛職であるヤヒコが接近戦を挑むのは拙いだろう。
「そっちが衝撃波だってんなら、こっちもだ! 《ショックウェーブ》!」
下級無属性魔術。文字通り弱い衝撃波を飛ばす攻撃魔術である。水属性以外の属性魔術とは違い、水中でも使用可能で威力も落ちないのが利点だ。
騎士は回避行動を一切とらず、魔術は直撃した、が、少しよろめいた程度である。
目を凝らすと、まだ一割どころか五分程も削れていないHPバーが見える。HPバーの色からするとモンスターの括りにあるようだ。倒してしまっても構わないのだろう――倒せるならば。
「……全然効いてねーな……ずらかったほうがいいk」
ばしゃん!
言い切らないうちに、今度はヤヒコが水を掛けられた。鯛子としては戦わせたいらしい。
「ぐぬぬぬぬ……」
歯軋りするヤヒコに、フレンドチャットが飛んでくる。エリンからだ。
「はい、ヤヒコです、今ちょっと立て込んでて……」
『ヤヒコ君大丈夫!? いま、世界中で大変なことになってるの!』
この怪しげなる騎士、ここにいる1体のみならず、世界規模で大発生しているらしい。
MMOに季節限定イベントの類ってよくありますよね。
春にもお花見イベントがあったという設定ですが、まだヤヒコ君はゲームはじめてなかったので参加してません。




