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残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
第8楽章 フェア・ゲーム

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87/114

第87話 少年A

遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「・・西岡さん。

 貴方に支給された

 パスポートのことは、

 鈴木さんに聞きました」

千雪が静かに続けた。

「・・今ここで。

 俺の素性は関係ないだろ?」

西岡が僕の方をちらりと見て

「チッ」

と舌打ちをした。

「それはどうだろうね?

 素性を明かせない人間の言葉は、

 にわかには信じられないね」

僕はグラスに

ミネラルウォーターを注いで

ゴクゴクゴクと流し込んだ。


遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「・・9年前。

 稲置市の小学生5人が殺傷され、

 2人が死亡、

 3人が重軽傷を負った

 事件がありました。

 犯人は近くに住む

 中学3年生の男子生徒でした。

 彼は医療少年院に

 送致されましたが、

 僅か8年で退院し、

 社会復帰しました」

千雪は原稿を読む

アナウンサーのように、

淡々と冷静かつ事務的に話していた。

それがこの場の雰囲気に

似つかわしくなく、

僕は少し戸惑った。

西岡を見ると、

その表情には

微かに困惑の色が浮かんでいた。

「当時。

 『少年A』の顔写真が

 とある週刊誌に掲載され、

 瞬く間にネットで拡散されました。

 今の貴方の目・・。

 あの時の顔写真の少年に

 そっくりです。

 その前髪は、

 その目を隠すために、

 わざと伸ばしてるんですか?」

千雪はそう言うと、

グラスに口をつけて

こくこくと飲んだ。

それから。

「ふぅ」

と小さく息を吐き出した。

「もう一度聞きます。

 六条さんを殺したのは・・。

 貴方ですね?」

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