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第9話 ペルと一緒に羊を追う

 口笛を吹いて二頭の牧童犬、キャンディとラッピイに命令を与えながら百頭を超える羊を追って牧草地まで誘導していく。


「わあ、凄いですご主人様(マイマスター)

「え、いやあ、キャンディとラッピイが凄いんだよ、僕はぜんぜんたいした事無いよ」


 僕は照れて言った。

 羊は貴重な財産だから、一頭でも死んだりオオカミに食べられたりすると大損害なので、慎重に誘導しているだけなんだよな。


 端から見ると羊飼いはのんびりした仕事のように見えるけど、まあ、そんなに間違ってない。

 羊たちを誘導して牧草地まで送り、夕方に厩舎まで誘導するだけだな。

 牧草地まで行けば、あとは割と暇なんだ。

 だから鞄に本を詰めて、張ったタープの下で、勉強したり読書したりしてるね。

 

「こうやって沢山の羊の群れを誘導しているから、ご主人様(マイマスター)は【グリフォンテイム】のスキルを賜るはずだったのですね」

「そうかもね、この仕事は空を見てる事も多いから、よく空畜で領都まで飛んで行きたいなとか思ってたんだよ」


 牧草地に着いたので、僕は岩の上にタープを張り、岩に座ってペルとおしゃべりをしていた。

 いつもは一人で羊を追うので、誰かと一緒なのは新鮮だね。

 水筒からお茶を注いでペルに渡した。

 彼女は微笑んで受け取り一口飲んで、フウと大きく息を吐いた。


「昨日、夢に大天使さまが出てきて、なんだかマチスさんが王府に働きかけて、僕を勇者学園に入学させるつもりと言ってたよ」

「はい、お父様に聞きました。ご主人様(マイマスター)にふさわしい晴れがましい舞台だと思いますよ」


 なんだペルは知っていたのか。


「王都に留学すると、僕とペルは離ればなれになってしまうから、テイムを解こうよ」

「まあ、嫌ですわ」

「なんでっ」

ご主人様(マイマスター)の行く所はわたくしのゆく場所でもございます。ええ、王都でも魔王領でも付いて行きますとも」


 うっはあ、ペルの愛が重い。

 と言っても、テイムを切っちゃえば、それきりになるんだろうけどね。

 ペルみたいな魅力的な女の子を能力を使って繋がっているのはどうかと思うんだよ。

 テイムとか無しに、友達から始めたいんだけどなあ。

 あと、【幼女テイム】だから、絶対にHな事で処女で無くなると接続が切れると思うんだ。

 うん、ラブシーンのクライマックスにめちゃ冷めされたら僕は立ち直れないわけで、まあ、そんな事はもっと仲良くなってから悩めよと言われたらそうなんだけど、男の子というのは、ここぞとばかりに想像力が暴走するものでしてね。


「ペルも勇者学園に来るの?」

「わたくしは十四歳でまだ入学はできませんから、ご主人様(マイマスター)の従者として、日々の生活をささえ、魔族の暗殺者から護衛しますわよ」


 なんだかペルに悪いなあ。

 ペルの将来の夢は……、処刑人になることか。

 ああ、まあ、あれはお母さんの末期の言葉を誤解したわけで、たぶん本当に処刑人になってほしかった訳じゃないので、そんな夢は叶わなくて良いのか。

 ペルは武道の才能があるんだから、そっちの方に進んでほしいね。

 うん。


 太陽が天頂に昇った。

 この季節は鷹石の影が池の中心の祠に掛かる頃が正午だ。


「一度家に帰ってお昼ご飯にしよう」

「羊さんたちはどうなりますの?」

「キャンディとラッピイがいるから大丈夫」

「そうですの、お二人とも優秀なのね」


 ペルが牧童犬を人みたいに言うので可笑しくて笑ってしまった。

 僕たちは丘を降りて牧場へと戻った。


 僕の家では両親がお昼の準備をして待っていた。

 あと、マチスさんもいた。


「あら、お父様」

「こんにちわペルリタ、ご機嫌はいかがかな」

ご主人様(マイマスター)と一緒ですから悪い訳はありませんわ」

「おほほ、積もるお話は後にして、今は一緒にお昼ご飯を食べましょうね」

「はい、お義母さま」

「そういたしましょう」


 マチスさんは勇者学園の話を持ち込んできたな。

 僕が羊飼いを出来ないと、困るな。

 主にお父さんが。

 お父さんは陶芸の時間を取るために羊飼いを僕に全部ぶん投げているのだ。

 まあ、良いか、お父さんは陶芸で賞をとったり、村のお店に置いて貰ったりしてるけど、この家は羊飼いの家で、収入の大部分は羊からの物だ。

 羊本体と、子羊を売るのと、羊の毛を刈って卸している。

 沢山居るのでオオカミに殺されたりしない限りはわりと儲かる。


 今日のお昼はパスタだった。

 羊肉も入っているね。

 お母さんのお料理は美味しいな。


「これは美味しいですね」

「ありがとうございます、マチスさま」

「羊肉は癖があるのですけれども、ここのお肉はあっさりしていて美味しいですわね」

「香草を効かせるのがコツなのよ。晩ご飯の時に教えてあげますからね」

「本当ですか、お義母さま、楽しみです」


 わきあいあいとしているお母さんとペルを見て、マチスさんは目を細めて微笑んでいた。

 マチスさんも奥さんを亡くして寂しいんだろうなあ。

 愛する娘さんは怪しい小僧にテイムされてしまうし。

 踏んだり蹴ったりだね。

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― 新着の感想 ―
思考が飛躍しすぎと言いたいが、15の男子なんてこんなもんだったわ こんなスキルを授かったからマチスが呼ばれてペルリタとも出会えた訳で、なんとも感情が混線するね
アヤシイ小僧って、君自分のことでしょw  だいぶ自己肯定感が低いなあと思って読んでました。勇者学園で面倒が起きないといいけど(フラグピコーン
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