第42話 メロディ・メロディ
僕とメロディは魔力の線で繋がった。
お互いの記憶が双方向に流れ始める。
メロディが生まれてすぐに、スキルを配達するのに緊張した事。
なんだか、初めて会ったのに、ずっと前から知っているような、やさしそうな男の子にスキルを配ろうとした事。
転んで、スキルの卵を割ってしまって、パニックになって、慌てて繋いだら、取り違えて、人聞きの悪いスキルを発生させてしまい、これは消滅させられてしまうという絶望。
わあわあ泣いていたら、リュート君が優しく、自分が引き受けるからと言ってくれて、とても嬉しかった事。
でも、どうして初めて会った人が、こんなによくしてくれるのだろうと。
『ああ、あなたは、私のお兄ちゃんにゃ!!』
メロディは泣きながら、そう、宣言した。
猫の姿だから、しまらないけどね。
「メロディ、メリーの記憶は戻った?」
『戻ってないにゃ、でも、あなたは私のお兄ちゃんにゃ!!』
僕の記憶で、はっきりと解ったようだ。
うん、それでも良いよ。
僕とメロディは魔力の線で完全に繋がった。
『お兄ちゃん、私のスキルをつかうにゃ』
「ああ」
メロディのスキルは【スキル改造】だ。
だから、スキルの卵が割れ、つなぎ直す事が出来た。
とんでもないスキルだ。
『マイタケの【聖剣】を破壊して使えなくするにゃ!』
いまだ、【幼女テイム】の時間停止が効いている。
だんだんとマイタケの顔色が悪くなる。
「そこまではしない」
が、彼のスキルは改造する。
改造が終わった瞬間、時間は動きはじめた。
マイタケの聖剣が粒子になって消えた。
「何をした!! 僕の【聖剣】に何をした!!」
「消してないし、壊しても無いよ。ただ、前提条件として、『正義の為以外で発動しない』の条件を付け加えさせてもらった」
「な、なんだと!!」
「正義の為には使えるんだ、問題は無いだろう。放せ、ロジン!!」
僕は杖でロジンの足を掬って、【螺旋回転】を足して転ばせた。
「き、貴様、人類の宝の【聖剣】スキルを、改造するなぞっ!!」
「正義の為なら使える、今使えないって事は、マイタケは今の行動が間違っている、正義では無いと解っているということだ!!」
マイタケは真っ青になって腰に差した剣を抜いた。
「スキルを元にもどせ、今すぐにだ」
「うるさい、黙れ、お前は勇者候補かもしれないが、僕も勇者候補だ、命令を受ける理由は無い」
「だまれっ!! お前は勇者学園にふさわしくない犯罪者だ!!」
斬り掛かって来たマイタケの、足の蹴り出しベクトルを曲げて、加速させた。
グルリンと宙を一回転して、マイタケは体を打ち、場外に落ちた。
「あ、あああ、お前はお前はなんという事を」
「勝利を確定しろ」
「こ、断る!」
「この障壁結界はロジン、あんたのスキルだな」
「そうだ、お前が飢え死にするまで、ここで籠城してやる……」
「スキルを書き換えるぞ。お前のやり方は酷すぎる」
『スキルを破壊するにゃ!! 二度とスキルが使えなくするにゃ!!』
メロディの声を聞いてロジンは真っ青になった。
「はやく障壁を解け」
これ以上何か言うなら、一時的にスキルを止めよう。
と、思ったら、ロジンは顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。
「だめだ、君では魔王を殺す事ができない、テイムでは駄目だ、僕の姉さんを殺した魔王ピエラを殺す事が出来ない。君では駄目なんだ」
ああ、それでマイタケを使って自分の復讐を果たそうとしたのか。
そうかそうか。
僕は深く理解したので、ロジンの頭を杖で思い切りぶん殴った。
「復讐は自分でやれ、ふざけるなよっ!!」
ロジンは号泣しながら、障壁を解いた。
会場はシンと静まりかえった。
ごめんなさいね、F組が勝ったりして。
「リュウウウウウトオオオオ!! よくやったあああ!!!」
ジナンさんが泣きながら絶叫した。
その瞬間、体育館は沸騰したように、歓声がまきおこる。
うお、マジか。
「ご主人様、素晴らしい決着です」
「あ、ペルさんありがとう」
ペルさんがタオルを持って来てくれたので、顔を拭いた。
ああ、死ぬかと思ったよ。
カンパがやってきて、僕に抱きついた。
「主さま~、ありがと~~」
「どういたしまして、カンパ」
「さすがは主だ、かっこ良かった」
「MarkⅡの貸してくれた【螺旋回転】のお陰だ。あ、あとペルさんの【剣】と、あと、カンパの【ブレス】もね」
「主さま、ブレスを練習しようよ~」
「そ、そうだね」
メロディが胸を張って台上に上がってきた。
「ありがとう、メロディ」
『お兄ちゃんの為だからしかたがないにゃ』
メロディにお兄ちゃんと言われて胸がきゅっとなって抱きしめた。
『ぎゃあ、苦しいにゃ、やめるにゃっ!!』
バリバリと爪で顔を切られたよ。
「やったなあ、リュート、お前はすげえぜっ」
「カービン王子、ありがとうございます」
「本当になあ、テイム相手のスキルを借りれるってのはスゲえな、無敵じゃんよ」
「そうだそうだ、スキルの書き換えとか、反則級だ、これは使えるぞ」
エリン先輩が自然に、F組の輪に入ってきていた。
「先輩は、S組だから出てってくださいよ」
「なんだとー、ジナン、生意気な事をいうなーっ」
喧嘩しているジナンさんとエリン先輩の後からマノリトさんが歩いて来た。
「がんばったね、リュートくん」
「ありがとうございます、マノリトさん」
彼とも、今後とも良い関係を結べたら良いね。
天井からキラキラとした光の柱が発生して、大天使さまが降臨した。
『義人リュートよ、よくやった。偉いぞ』
「そうですか」
僕はメロディを抱え上げて、リカリエルさまに渡した。
『お兄ちゃん?』
『まったく、お前は飲み込みが早い』
「【スキル改造】なんてスキルは地上にあると戦争の元ですから」
『いやにゃっ!! 私は、お兄ちゃんが死ぬまで地上で一緒に居るにゃ!!』
『これ、暴れるな。その素晴らしいスキルがあれば、スキル製造局で出世できるぞ』
「メロディは天使の世界で頑張れ、お兄ちゃんは地上でがんばるから」
『お兄ちゃんっ!!』
メロディは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
ああ、懐かしい泣き顔だな。
リカリエルさまとメロディは光の柱の中を上昇していった。
さようなら、僕の妹。
また、どこかで会えたらいいね。
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