第40話 そして決戦の舞台に僕は上がる
「あの、ペルさん、そろそろ」
「あ、ごめんなさいご主人様、ついつい」
「カンパもついつい」
二人はあっさりと抱擁を止めてくれた。
「くそう、ペルさんとカンパちゃんに抱きつかれて妬ましい……」
「マノリト、炎が出てるぞ」
「あ、いや、ついつい」
ついついブームか!
僕はパアンと自分の頬を叩いて気合いを入れた。
愛用の杖を持って台上へとのぼる。
反対側からマイタケさんが上がってくる。
「来たな、【幼女テイマー】」
「もう止めませんか、マイタケさん、あなたが勝って、S組が勝っても、僕はカンパを守る為に学校を辞めるだけで、あなたの手に黒竜は手に入らないんです」
マイタケさんは天を仰いで、笑った。
あれえ?
「違うよ【幼女テイマー】、僕の目的は、お前が名誉ある勇者学園を辞めること、そして、お前が負けたら、約束通り、黒竜の命は貰う。殺す」
「は?」
驚愕のあまり、変な声が出た。
「おいおい、【幼女テイマー】の頭はおかしくなっているのか、暗黒竜は魔物だ、人に懐いたからといって放っておいて良いものではない。先祖が作った勇者学園に暗黒竜が居る事自体、僕には耐えられないのさ」
目的は……、カンパを騎獣として欲しい、のでは無いのか……。
カンパを魔物として殺す事なのか。
「お前は、本当に勇者の家系なのか」
「【幼女テイマー】に言われたくは無いぞ、お前のような薄汚いスキルの持ち主が、天界の秘密兵器の訳が無い、天界の連中は祖先の勇者シイタケが異世界のニホンから呼ばれるのを黙って見ていたぐらい薄情な奴らだ」
マイタケは憎々しげに天界を罵倒した。
「やつらは自分達で与えた禁忌スキルの責任も取らずに、異世界から勇者を呼んで、悪食帝ヨーハンを殺させた。その対価として勇者シイタケが世間から貰ったのが、魔王を倒していない、勇者未満というレッテルだ」
こいつは……。
ちがう、勇者じゃない、勇者であるべきという家系で熟成された、世界を憎悪する存在だ。
脳の芯辺りが痺れて凍ったようになった。
僕が、負けると、カンパが殺される?
そんな事はゆるされない。
そんな事は僕がゆるさない。
「まずはお前を下し、あの暗黒竜を血祭りにあげて、天界に、勇者は、この僕、マイタケさえいれば良いと実力で認めさせてやる。そのための捨て石になれ、【幼女テイマー】」
「ふざけるな、人の愛する者を殺す事でしか証明出来ないような勇者なぞ、偽物だっ! お前は勇者シイタケの血脈に繋がる資格も無い、偽物の勇者だ」
「取り消せ!! 僕は偽物なんかじゃ無いっ!! 先祖の汚名を晴らして、この世界に君臨する勇者だっ!!」
マイタケは手の平から光線状の聖剣を……。
二本!?
「驚いたか、僕の【聖剣】スキルは進化して、二刀流になったのだ、お前に勝ち目なぞ最初から無いんだっ、あっはっははっ!!」
くそっ! 魔力でしか受けきれない厄介な聖剣が二本だとっ。
僕の杖は一本しかない、分が悪い。
悪いが、ここでカンパを諦める事は出来ない。
僕は絶対にカンパを守る。
MarkⅡやマノリトさんが繋いでくれた勝負だ。
僕は何としてでも勝つ。
「大将戦、S組マイタケ、F組リュート、始めっ!!」
眼鏡先生が試合開始を宣言した。
「いくぞっ、【幼女テイマー】!!」
マイタケは両手の光る聖剣を踊るように振るって僕に肉薄する。
ガチン、ガチン。
何とか、受ける。
「へえ、練習したんだね、凄いね僕の【聖剣】を魔力で受けるなんて」
「……」
一瞬も気が抜けない。
軽口を叩ける状況では無い、二本の聖剣が縦横に振られ、連撃を放ってくる。
杖は真ん中を持つことで、擬似的な二刀として機能できるが、長さが短い。
集中して、聖剣をさばく。
一瞬でも気が緩んで、魔力の層が薄くなれば、杖は両断されて、何も出来ずに負ける。
「もうあきらめたまえよ、良いじゃ無いか、この前知り合ったばかりの竜だろう、愛着を持つには短いよ」
マイタケは余裕で双聖剣を振るう。
くそっ、受け流すので背一杯だ。
「ああ、上手いけれど、所詮は羊飼いの技だ、実戦剣術の敵ではないな、それそれっ」
「くっくっ」
ガキンガキン!
はあはあはあ。
「やあ、がんばるねえ、あはは、幼女の為なら無限に力が湧いてくるのだろうねえ。じゃあ、もっと条件を悪くしてあげるよ」
マイタケは聖剣を握ったまま、器用にパチンと指を鳴らした。
「わあ、やめなさい、なんてことするの!」
場外で女性の先生が悲鳴をあげた。
S組のネクタイの男子生徒が、デク人形を一体、効果範囲から蹴り出した。
青いネクタイの人形、あれは僕の人形だ。
「これで、君の防御機能は無くなった、聖剣に切られたら死ぬよ。あはは、【幼女テイマー】という恥ずかしいスキルを持った奴はここで不幸な事故により命を落とすんだ」
こいつは、なんて卑劣な事を!
「おまえーっ!! ご主人様の人形に何をする!!」
ペルさんが怒鳴って駆けて行った。
「あはは、無駄だ、もう効果範囲にデク人形は出た」
カービン王子が立ち上がった。
「試合は中止だ!! おい、ロジン先生! 試合を中止しろ、リュートが死ぬ!!」
眼鏡先生は薄笑いを浮かべて首を横に振った。
「リュート君、悪いが最初から決まっていたんだよ。君をここで殺し、暗黒竜を殺す、それが勇者学園にとって一番良いんだ」
「先生もぐるの出来レースだったのか」
「そうだとも、そうだとも、君のようなスキルの持ち主は、この学校にはいらないんだ」
「恨むなら馬鹿なスキルを作ってお前に与えた天界をうらみたまえよ、【幼女テイマー】!!」
ふざけんなよ、お前ら!!
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