第38話 マルーンMarkⅡ対ベニーニョ
F組とS組の両選手が台上にのぼった。
「ははっ、馬鹿が選手かよ。お前は、順当に行けばA組確定のスキルなのに、馬鹿のせいでF組だなんて恥ずかしいよなあ」
うわ、ベニーニョさん、いきなり煽る煽る。
「なんだとー! ゆるさないぞー!!」
テイムしているから解るのだが、MarkⅡは内心笑いながら、マルーンちゃんオリジナルの真似をしている。
「中堅試合、S組ベニーニョ、対、F組マルーン、開始!」
MarkⅡが挑発に乗っかったと思ったのか、ベニーニョさんがニヤリと笑い、矢を三本、弓につがえて後にジャンプした。
「ぎゃはは、お前の負けだっ!!」
バンバンバンと三本ずつ合計九本の矢が立体的にMarkⅡに向かう。
わあ、スキルすげえなあ。
こんなに一気に撃てるのか。
MarkⅡはゆっくりとした動きで、ドアノブを回すように手をねじった。
矢の軌跡がぐりんと曲線を描き、明後日の方向へ吹っ飛んでいった。
「弓兵はね、お客さんなんだよ」
「お、お前、お前っ、馬鹿のふりをしていたのか、何故だっ!!」
「教えてあげない」
「くそおおおおっ!!」
ベニーニョさんがバンバンと矢を打ち続けるが、そのたびにマルーンちゃんはゆっくりとしたねじりの動きで、矢の軌跡を曲げる。
「ば、バカヤロウっ、矢が無くてもなあ、お前なんか、ナイフでっ!!」
MarkⅡは薄く笑ってベニーニョさんとの間合いを詰めて行く。
「え、MarkⅡは接近戦どうするんだろう?」
「矢は当たらないかもしれないが、ナイフはどうだろうな」
「かつよー、まるーんちゃんはかつよー」
ベニーニョさんは凄みのある笑顔でナイフを構えた。
「し、試合だからな、悪く思うなよおおおっ」
「ふふふ」
MarkⅡはゆっくりと歩を進める。
ベニーニョさんがナイフを腰だめにして突っ込んで行った。
「死ねいっ!」
「私のスキルはさ、運動の方向を曲げられるんだ」
ベニーニョさんが不自然にたたらを踏んで、前方に回転した。
ゴン!
と、肩から落ちて鈍い音がして、ベニーニョさんは短い悲鳴を上げた。
「廻れ廻れ~~」
MarkⅡの声と共に、ベニーニョさんの体がぐるんぐるん廻り始めた。
「うわ、うわああああわわわっ!!」
そのままぐるぐると回りながら、台上を移動し、そして場外へと飛び出していった。
ドカンと音を立てて、試合場の結界にベニーニョさんは激突した。
「一本!! 勝者、F組、マルーン」
眼鏡先生がMarkⅡの手を上げた。
「うおおお、勝ちやがった!!」
「すげえな、あれは剣客でも勝ててたかもしれねえな」
「すごいよMarkⅡ!!」
「やったあやったあっ」
大番狂わせに会場は沸きに沸いた。
MarkⅡが控え席に戻ってきた。
「やったね、MarkⅡ、すごいや」
「ありがとう、主よ。本来、このスキルは凄い物なんだけど、知能が低いせいで煽りに弱くてね、わりと負けやすかった」
「知性が上がって、隙が減ったんだなあ、やるもんだぜ」
「ああ、でも、次はマノリトかあ」
「なんですか」
ジナンさんに名を呼ばれて、マノリトさんが振り返った。
「いや、スキル名も解らねえし、次の相手はあのハゲ筋肉の、オスヴィンだぞ、スキル【破壊力】だぞ、ふとっちょのお前なんか、一発だ、一発」
マノリトさんは、ふんと鼻で笑って,眼鏡を指で上げた。
「リュートくん、君はF組がS組に勝った方が嬉しいですか」
「え、そりゃ嬉しいですけど、カンパとも一緒に居られますし」
マノリトさんはにっこり笑った。
「そうか、カンパちゃんの為なんだね、そうかそうか、では私も頑張ろうか」
お、マノリトさんはカンパの事が好きなのかな。
「なんだよー、マノリト、おまえ、ロリコンかよう」
「いや、ジナンさん、直球はやめてさしあげて」
マノリトさんは、ふふんと笑った。
「ペルリタくん、リュート君といちゃついてくれないか」
「え、なにを……」
「了解です」
わ、後からペルさんが僕の膝の上に飛びこんできた。
わあ、抱きついて頬ずりしてくるぞ。
なんだ、なんだこれ。
「あ、ああ……、チューもしてくれるかな」
「わかりましたっ」
「えっ、ペルさん……?」
驚いた僕の半開きの口はペルさんの唇で塞がれた。
え、えええっ??
な、なんという柔らかいっ、えええ??
「カンパもカンパも」
カンパも後から飛びこんで来て、僕に抱きついて来た。
ひい、何事なの、この事態は。
「くそう、何と言ううらやましい、妬ましい……」
おや、マノリトさんの周りに赤黒い陽炎のような物が沸き立った。
「行きます」
マノリトさんは台上に向けて足を運んでいった。
ペルさんは未だに僕の唇を塞いで外さない。
いや、なんですかーっ!!
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