第37話 次鋒戦、ジナン対ミレーヌ
ジナンさんは台に上がって、魔法使いのミレーヌさんと向かい合った。
なかなか肩の力が抜けて、余裕があるね、ジナンさん。
何か凄い策があるみたいな事を言っていたな。
Sクラスの次鋒選手、ミレーヌさんは貴族の魔法使いの家に生まれで、【魔法の才能】という、勇者バーティの常連スキルを授かった。
スキルの遺伝というのはあるらしく、家系によって出やすい物がある。
あと、一度出たスキルは、また家系に出る事も多い。
カービン王子の【ちんぴら】とかね。
【魔法の才能】というスキルは魔法を覚える事が楽になり、行使する時も威力、命中率、が上がり、その上に魔力消費も減るという素晴らしい効果がある。
狙える上級職は、『賢者』だが、生涯を『魔術師』で通す人も多いらしい。
ミレーヌさんは小柄な綺麗な人で、魔術師らしく、ゆったりしたローブを着て、大きな杖を持っていた。
「なんでそんなに余裕なのかな、かな?」
「ふ、それはな、俺がミレーヌお前を倒す事が簡単だからだ」
「そ、そんなに」
「そうだ、曲者ぞろいのF組スキルでも俺のは特別なんだ」
まあ、【金魚】は特別だと思いますが。
「ゆ、油断ができませんね」
「ふふ、お前は始まって五分で俺に敗北する、我に秘策ありだ!」
ミレーヌさんは、ジナンさんの自信満々の態度に飲まれて、顔に緊張の色を浮かべた。
「なんであんなに自信満々ですか、ジナンさんは」
「わからねえなあ、何か秘策があるってだけで、詳しくはしらねえんだ」
「でも、ジナンさんのスキルは……」
「まあ、そうだがよう……」
「それでは、次鋒戦、S組、ミレーヌ、F組ジナン、始めっ!!」
眼鏡先生が試合開始を宣言した。
「うおいりゃああっ!!」
ジナンさんは不思議な動きで奇声を上げた。
何かがミレーヌさんの頭の上に出現して落下した。
「うひゃあああっ!!」
ミレーヌさんが悲鳴を上げた。
出現した物が背中に入ったらしい。
あれは……。
「動くな、俺は凶悪毒ガエルを召喚し、貴様の背中に入れた」
「えええっ、とって、とってくださいいいっ」
「毒だぞ、猛毒ガエルだ、毒で死ぬのが嫌なら、降伏するんだ、急げ、間に合わなくなってもしらんぞーっ!!」
……ジナンさん。
ハッタリだ。
「いや、毒ガエルはいやあああっ、こ、こうふく……」
「ミエーヌ、背中にいてうごめいているのは金魚だーっ!!」
「え」
「わああ、なんですか、なんでばらすんですかっ、ビッチ先輩はどっちの味方なんですかっ!!」
「いや、私はS組だが」
それはそうであるな。
なんか仲良くなったから仲間っぽく思って居たが、エリン先輩はS組であった。
ジナンさんがエリン先輩に抗議している間にミレーヌさんは背中から金魚を取りだして、魔法で水球を作ってそれに入れた。
「まあ、綺麗な金魚ですね、これは頂いて私が飼いますね」
「そ、そうか、うん、まあ、かまわんよ」
「それはそれとして、まあ、思い切り行きますよ」
「い、いや、ミレーヌ、ミレーヌさん、や、やめて下さいっ」
「『メガファイヤーボム』」
なんだか凄い火球の魔法がジナンさんに襲いかかり、爆発して吹っ飛ばされた。
場外のジナンさんのデク人形が爆発四散した。
「ぎゃあああっ!!」
「ダメージは人形に行くのに、痛いのですか、ご主人様?」
「痛みは結構行くらしいよ」
「続かねえだけで、すげえ痛い、失神負けもあるぜ」
というか、ハッタリで勝ちを拾おうというジナンさんがおかしいよなあ。
これでF組は二連敗、マルーンちゃんが負けたらストレート負けだなあ。
「私は頑張るぞ、親友のカンパが勇者に飼われるなんかまっぴらだ」
「マルーン、ありがとー」
マルーンちゃんが準備運動を始めた。
「そろそろ接続する?」
「そうだな、やってくれ、リュート」
僕はマルーンちゃんとの接続を復活させた。
なんか、一度接続した相手には、一度切ったとしても、再開は簡単っぽいね。
マルーンちゃんの目に知性の光が灯り、MarkⅡとなった。
「うん、マルーンとカンパちゃんはお友達になったのだね」
「そうだよ、まーくつー、マルーンちゃん大好き」
「ありがとう、仲良くしてあげてくれ」
「まーくつーもマルーンちゃんだから、そういうのおかしい」
MarkⅡはとびきりの笑顔を浮かべた。
「そっか、じゃあ、私もカンパちゃんとは親友だ」
「うんっ、なかよしっ!!」
カンパも邪気の無い笑顔をMarkⅡにむけた。
良い関係だなあ。
ジナンさんがボロボロになって帰って来た。
場外に吹っ飛ばされて地面で何回転かしたので、泥が付いてシャツがやぶれていた。
「うう、酷い目にあったぜ、ビッチ先輩めえ、裏切りやがって」
「あれが、秘策でしたか」
「なんだよ、いいだろっ! 一瞬勝てそうだったんだぞ」
「坊ちゃんは足りねえのじゃないのか?」
「なにおうっ、ロッカ!!」
悪いけど、僕もそう思うよ。
「ジナンがこのざまだから、MarkⅡ、お前が負けるとストレート負けになっちまった、なんとかなるか?」
「ああ、なんとかしますよ王子。私のスキルにとって、弓兵はお客さんです」
「つうか、螺旋回転ってなんだよ、知恵がついたなら説明しろっ」
「まあ、試合を見ていてくださいよ、ジナンさま」
「うぐぐ」
さあ、マルーンMarkⅡの試合が始まる。
F組後が無い、というか、MarkⅡが勝っても次はマノリトさんだからなあ。
もう、詰んでるかもしれません。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




