第32話 対抗戦の情報を聞く
寮に戻って、晩ご飯の用意をしていると、ちゃっかりエリン先輩がトレイを持って混ざっていた。
「S組寮に戻りなさいよ」
「そうつっけんどんにしなさんな、リュートくん、対抗戦のルールとか相談にのるよ」
「そりゃあ、良いな、助かる」
「よしよし、カービン王子は話がわかるね」
みんなでテーブルを囲んで晩ご飯とあいなった。
ジナンさんとロッカさんも居るね。
「クラス対抗戦は、季節に一回、年に四回開催されるんだ。まあ大体クラス順位ごとに勝敗は決まるね」
「S組とF組じゃ勝負にならねえのか」
「うん、元々、上位リーグとして、S組、A組、B組、の試合があって、下位リーグとして、C組、D組、E組、F組の試合があるわけさ。本来は、S組とF組は戦う事もできないのだよ」
まあ、それぐらいスキルによる力の差があるんだろうね。
「S組には勝てねえのか、ビッチ先輩」
「だれがビッチ先輩かっ、失礼なジナンめ」
エリン先輩は立ち上がって、お盆でパカーンとジナンさんの頭を叩いた。
「あいたあ」
「まあ、普通にしてたらS組の選抜の五人のチームには勝てないかもねえ」
「ふむ、リュート、カンパは試合に出せるか」
「えー」
「出ても良いですよ、主様~」
カンパがスプーンを握ったままニコニコして言った。
だが、小さい女の子に戦わせるのはなあ。
「カンパは幼女だが、黒竜だ。竜モードでリュートが乗って戦うのはどうだい?」
「ルールとしてありなんですか?」
「【幼女テイマー】のスキルとしてはあり、多分試合としては無し、アリならペルリタさんも参加出来る事になって、結構F組の勝率が上がっちゃうから」
「私も出たかったのに」
カンパも、ペルさんの助力も、【幼女テイマー】の能力の内ではあるから、強弁すれば良いのだけれど、あんまりカンパに人と戦ってほしくないなあ。
「カンパはまだ幼いから、人と戦って怪我をさせたり、殺したりさせたくありません」
「うーむ、それでは勝率が下がってしまうが、まあ、カンパに人殺しをさせたく無い気持ちはわかるぜ」
「主様~~、いいのよ~~」
「駄目だよ、本当はね、魔族の人達ともカンパは戦ってほしくないよ」
「わあ、主様、ありがと~~」
カンパは満面の笑みを浮かべてお礼を言った。
『F組だから驚天動地なスキルの持ち主をさがして選手にするにゃ』
メロディは簡単に言うなあ。
「選手は、俺と、リュートと、あとは……」
「お、俺はロッカとして出ます、【メイド使い】として」
「ばか坊ちゃんよ、選手は学園の生徒限定だぞ、そうでなきゃペルリタも参加できるしよう」
「な、なにいっ!」
「ジナンは補欠だな、さすがに【金魚】ではな」
「す、すいません、カービンの兄貴」
「サテンの【健啖家】は戦闘スキルじゃねえしな、ケイトお前のスキルはよ」
「うるせえ、私がそんなの出るわきゃねえだろっ」
「ちっ、役に立たねえ。マノリトのスキルは何だ?」
「え、ああ、その、戦闘スキルではないので、ごめんなさい、カービン王子」
「まあ、不戦敗よりは良いな、お前も補欠だ」
「え、えええっ、勘弁してくださいよう」
マノリトさんは平謝りだが、カービン王子は認めなかった。
「これで選手が四人、うむ、あと一人だな」
「いやいや、これは勝てないわよ。S組チームは大将にマイタケが入るよ」
「スキル【聖剣】か、あれは強そうだな。エリンは出ないのか?」
エリン先輩は揚げ物をくわえながら手を横に振った。
「私は【鑑定眼】だからね、試合には出ないのよ」
「ああ、ケイトとマノリトのスキルを看破してくれねえか」
「やめて」
「ひい、やめて下さい」
「駄目だよ、人の情報を無理には読めないよ」
「僕のを普通に見ていた気がしますが」
「ああ、あれは、確認の為だから、うん」
エリン先輩は、気持ちの赴くままに【鑑定眼】を使ってる訳じゃないのか。
わりと人の気持ちとか考えていてちょっと見直したな。
「後のS組メンバーは誰だい、ポチア嬢は出んのか?」
「あの子も後方だからね、看護班に行くよ」
「それは助かるぜ」
「あとは戦闘系の剣聖候補とか、弓王候補とか、拳王候補と、賢者候補とかが出るよ」
「綺羅星のような候補ですね」
「ああ、将来は魔王討伐隊の中心に据えられるから、みんな連携とかも練習してるからねえ」
しかし、武道系が多いね。
魔法系は一人か。
「大将はリュート、俺は先鋒ででるぞ」
「良いんですカービン王子」
「お前の仲間のカンパを守る戦いだからな、お前が背負うんだ」
「はいっ、カービン王子!!」
「あと、最後の選手は明日学校で探そうぜ、リュート」
「そうですね、きっとスゴいスキルがあるだろうと思います」
よし! 明日、F組で出場選手を探そう。
なにか強いスキルの人がいればいいんだけどなあ。
「え、俺らも出るの確定?」
「勘弁してくださいよ」
ジナンさんとマノリトさんがぼやいた。
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