第29話 休日なので、カンパの服を買いにいく
「おはようございますっ、ご主人様、今日は良い天気ですよ」
ペルさんが僕とマノリトさんの部屋に入ってきて、ジャッとカーテンを開けた。
うお光が入ってきて眩しい。
「主様~~、おきる~、朝ご飯~」
「はいはい、起きるよ、着替えるから外で待っていてね」
「お手伝いします、ご主人様」
「てつだう~」
「いや、着替えるだけだから、ねっ」
「ぶうぶう」
「ぶうぶう」
ぶうぶう言いながら、ペルさんとカンパは部屋を出て行った。
マノリトさんが半身を起こしてこっちを見ている。
「お、おはようございます、マノリトさん」
「……フンッ」
マノリトさんは鼻を鳴らすと、毛布にくるまって寝転んでしまった。
騒がしくてごめんなさいね。
制服に着替えて廊下に出ると、カンパが抱きついて来て、ペルさんがネクタイを直してくれた。
『おはよう、みんな』
メロディも起きてきて、カンパが抱き上げた。
「あさごはん~~」
「はいはい、今日は何かな」
「たまご好き、あとねえ、ハム~~」
「そうかそうか、さあ、食堂に行こうね」
「行きましょうご主人様」
三人で食堂に入り、ミランダさんから朝ご飯のプレートを受け取る、今日はソーセージエッグに白パン、コーンスープだね。
メロディのご飯も深皿に入れてもらい受け取る。
彼女も同じ食事だね。
「おお、ソーセージおいしいでしゅ」
「そうかそうか、たんとお食べね」
「はいっ」
「ドラゴンの頃は何を食べていたの」
「肉ですよう」
「肉かあ」
まあ、ドラゴン形態だから生肉だろうねえ。
カンパは生まれたばかりみたいな感じだから、いろいろと美味しい物、楽しい事、嬉しい事を体験して大きくなってほしいね。
ペルさんがお茶を注いでくれた。
彼女のお茶は香り高くて好きだな。
「いよう、ここだけ新婚家庭みてえだな」
「あらっ、嫌ですよ、カービン王子たらっ」
ペルさんが照れ笑いして言葉を返した。
「カービン王子おはようございます」
「おう、せっかくの休日だから昼まで寝ていたい所だが、王府の呼出しくらっちまってなあ」
「大変ですね」
「まあ、しょうがねえ、魔王軍だからな」
そう言ってカービン王子はソーセージをがぶりと噛んだ。
「おなかいっぱいっ、主さま、遊んでっ」
「そうだね今日は日曜日だからカンパと遊ぼうか」
「カンパちゃんの服を買いにいきましょうよ」
「あ、それは良いね、あと、王都観光をしよう」
『楽しそうにゃ』
「いくいく~」
カービン王子が懐から袋を出して僕の前に置いた。
中を見てみると金貨がぎっしり入っていた。
「なんですかこれ?」
「王府からのカンパへの支度金だ。幼女が一人増えると、服とか下着とかいろいろ物入りだろ、それをリュート一人に任せるわけにゃあいかねえぜ」
「あ、教会からお金が……」
「教会のお金は黒竜を養うためには出てねえべ」
たしかにその通りだなあ。
教会からのお金を節約すればカンパぐらいは養えると思っていたけど、彼女たちに不自由な目に合わせるのは嫌なんだよね。
「それでは、ありがたく」
「気にすんな、王府は王府で竜の戦力化を狙ってるんだからよ」
「はい、でも、ありがとうです」
カービン王子は漢臭く微笑んでパンをかみ砕いた。
「良かったですね、ご主人様」
「王子にお礼をいいなさい、カンパ」
「おうじさま、ありがとーございまーす」
カンパはカービン王子の前でぺこりと頭を下げた。
王子はまなじりを下げてカンパの頭をなでなでと撫でた。
さて、楽しい休日だ。
ペルさんとカンパとメロディと一緒に王都を遊び尽くすぞ。
僕はカンパの手を取り、メロディを肩に乗せて寮を出た。
カンパのもう片方のうではペルさんが取っているから、僕とペルさんにカンパは挟まれて、キャッキャと笑った。
学園の敷地を出て、王都に入る。
まずはメインストリートの子供服屋でカンパの服を沢山買おう。
「やっぱり古着ですか?」
「さすがにオーダー服は時間もかかるしね」
「そうですね、貴族のお下がりの綺麗な物があれば良いのですが」
「普段着が三つ、寝間着が三つ、下着が五セット、あと、靴も買おう」
今のカンパの靴はペルさんの物を履いているのでわりとぶかぶかだ。
というか、だいたいペルさんの服を借りているのでどこもかしこもぶかぶかだね。
「かわいい服がほしー」
「おねえちゃんが探してあげますからね」
『手伝うにゃ』
とはいえ、王都は初めてなので、行きつけの古着屋とか解らないなあ。
キョロキョロしてしまって田舎者丸出しだね。
「ペルさんは王都は詳しいの?」
「いえ、私の縄張りは教会系ですから、繁華街とかはあまりいきません」
あ、いかん、誰一人王都の歩き方を知らないぞ。
ふと視線を感じて振り返ると、マノリトさんが馬車から見下ろしていた。
「マノリトさん、王都の古着屋はどこにありますか?」
「着物繊維通りだ。あっちの方、迷ったら人に聞け」
「ありがとうございます、たすかりました」
「うむ」
そういうとマノリトさんは窓を閉めた。
彼を乗せた馬車ががらがらと車道を走って行った。
「さすがは大商会の息子さんだなあ」
「王都でも有数の大商会ですって」
「偉い人が沢山勇者学園にいるんだなあ」
僕らは王都の東の方を目指して歩き始めた。
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