第24話 学校に行くと魔王軍襲来の話でもちきりで
僕らは、リッチモン襲撃の感想を言いながら、あの時はこうすべきだったとか、【金魚】なんとかしろとか、言い合いながらF組に戻った。
「なんか暗黒竜がやってきて、ドカドカ音がしたんだけど、あんたら関係ねえよな」
ケイトさんが三白眼で睨みながらそんな事を言った。
「ばーろー、さっき暗黒貴公子リッチモンって奴が暗黒竜にのってせめてきたんで、俺達が撃退して追い返したぜ」
ジナンさんが胸をはって言った。
「まあ、ジナンよりメイドのロッカの方が役にたったけどよ、気迫で言えばなかなかだったぜ」
「それを言わないでくださいよ、カービンの兄貴」
僕は席に付いた、サテンさんはそっぽを向いた。
まだ嫌われているなあ。
ペルさんとメロディとは仲良しになったみたいだから良いか。
お風呂に入って身ぎれいにして、着る物もペルさんが見てあげたので、サテンさんはずいぶん美少女な感じになったね。
早くスラムの事は忘れて、こっちの世界に馴染むといいね。
スザンヌ先生が目付きの鋭いメガネの男の先生と一緒にF組に入って来た。
「カービン王子、ジナン、リュート、本日の襲撃の話を聞きたい、職員室まで来なさい」
「おう」
「へい」
「はい」
僕らのたるんだ返事を聞いてメガネ先生は眉をひそめた。
そのまま黙って僕らは職員室まで連行された。
職員室の隣の会議室に僕らは通された。
ナンヌさんが先に来ていて、僕らを見てしかめっ面をした。
「マイタケ先輩と、エリン先輩と、ポチア先輩は?」
「彼らはS組だ、放課後に話を聞かせて貰う」
なんだか扱いの差が凄いなあ。
ナンヌさんはA組なのになあ。
メガネ先生はリッチモンの襲撃の話を根掘り葉掘り聞いた。
ノートに綺麗な字で調書を書いているな。
「それでは、暗黒竜がメスの雛だったから【幼女テイム】が通ったのだね」
「はい、エリン先輩をブーストするつもりでテイムしようとしたのですが、繋がりがぐいっと曲がってしまって」
「君は……、希少な【鑑定眼】の持ち主をテイムしようとしたと言うのか」
嫌悪の表情でメガネ先生は僕にそう言った。
「まあ、緊急事態だったからしょーがねえですよ。リュートがテイムしようとしなければ、ナンヌもエリン先輩も黒竜に燃やされていたんだしよう」
「そうそう、しょうがねえと思いますよ」
「ちっ」
メガネ先生は舌打ちしおったぞ。
エリン先輩は役立たずだけど、【鑑定眼】はそれほど凄いスキルなのかねえ。
というか、相手の情報を余すところ無く探れるのは戦闘として大きいのだろうなあ。
でも前線向きじゃないよね。
【鑑定眼】を持つスペシャルジョブは、『賢者』とかかな。
スザンヌ先生なんかは【全属性魔法】から賢者候補になったみたいだけど。
スペシャルジョブというのは、『勇者の刻印』を得て職業の呼び方が変わる事をいう。
魔剣士とか、剣士から、『勇者の刻印』を持てば、『勇者』とよばれ、魔法使いや軍師系の人が『勇者の刻印』を得ると、『賢者』、治癒魔法持ちで僧侶系が刻印を得ると、『聖女』『聖人』であるのよ。
変わり種で、羊飼いの人が刻印を得た事があるのだけど、その時は『救世主』に変わったそうだ。
「さて、君は運良く黒竜をテイムできたそうだが、それをマイタケ・タカダさんに譲ってくれないか」
「「「は?」」」
「いま勇者に一番近い人間がマイタケさんだ、騎竜のような晴れがましい物は彼にこそふさわしい、そう思わないか?」
何言ってんだ、このメガネ。
「ええと、先生、テイムというのはそういう物では無いので、ペットみたいに譲ったりはできないんですよ」
「市井の『魔物使い』は魔物を調教して人に売る商売じゃないか、【幼女テイム】でも同じ事ができるはずだ、是非、マイタケさんに竜を譲ってくれ」
カンパをマイタケ先輩に譲る?
いや、そんな事はできないよ。
奴隷という名称だけど、家族みたいな物だし、絶対に嫌だな。
「絶対に嫌です」
「君は、魔王軍への遠征の時に、君だけ竜に乗って、マイタケさんに地上を歩けというのか!」
「ナンヌさんのケイロス号に乗せてあげてくださいよ」
「私の馬の名前、覚えてくれたんだ。うん、私の馬に勇者を乗せるよ」
「馬なぞ! F組のお前が竜にのって、S組のマイタケさんが馬なぞに乗るなど、言語道断だろう!!」
ナンヌさんの目が尖った。
ケイロス号は頭が良くて凄い運動性能で、乗ってる人を守るために芝生に向けて倒れるとか、優しい所もある立派な馬なんだぞ。
「おう、ロジン先生、まだ誰にも『勇者の刻印』は発現してねえんだ、いくら発現の可能性が高えからといってS組のマイタケに忖度しすぎじゃねえか?」
「だまれ、チンピラ王子め、先代の勇者パーティが魔王ピエラに惨殺されて、早々に新しい勇者パーティが必要なのだ。お前達F組はS組の立派な生徒たちの為に全ての物を差し出さなければならないのだ!」
しん、と会議室は沈黙の帳に包まれた。
「勇者偏重の教育方針は問題だなあ。王府にチクってもいいかよ?」
「ちっ、まあいい、将来『勇者の刻印』が出たら、そのパーティに、お前の黒竜は提供してもらうぞ、いいな」
いいわけあるか、クソメガネめ。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




